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「なんてことだ…」
若い男は憐れんだ声で言いました。
「悪い魔女に、こんなところに君みたいな少女が閉じ込められていいはずがない!」
若い男は強い声でいいました。
「私はこの塔にくる前は、この国の街の花売りの娘だったの。」
王女様は話始めました。
「両親は私が小さいときに死んでしまって…。ある日、花を売ろうと思って一人の女性に近づいたの…その時に、私は誤ってその女性のドレスの裾を踏んでしまったの。それが悪い魔女で、怒った魔女はそのまま私をこの塔に閉じ込めてしまったの…」
王女様は本の少女の話を、そのまま若い男に聞かせました。
「今、魔女はここにいるのかい?いないのならば、今がこの塔から逃げるチャンスだよ。僕がこの塔から連れ出してあげるから一緒に街へ戻ろう!」
若い男は力強い声で言いました。
ああ、なんて素敵なんだろう。
王女様は思いました。
きっと、昨日までの自分なら彼の手を取ってこの塔から逃げ出していたはずだ。
でも…。
王女様は俯きます。
私には帰る場所なんてどこにもないわ…。
王女様は死んだことになっています。
お城に帰るわけにもいきません。
なにより、国民が、王様が、お妃様が、王女様の帰りを待ち望んでいないのです。
嘘つきで意地悪でみんなから嫌われ者の王女様は、この誰も来ない森の中の薄暗い塔の中にしか居場所がないのです。
王女様は、この塔から出るわけにはいきませんでした。
「それは…出来ないわ…」
王女様は口を開きます。
「私は…私は、この塔から一歩でもでたら、死んでしまうように悪い魔女に呪いをかけられてしまったの…」
王女様は嘘をつきました。
その言葉を聞いて、若い男は、なんてことだ…と、静かに呟きました。
「僕が出来ることは何かあるかい?僕で出来ることなら、可哀想な君のために何でもしよう」
「ありがとう、あなたはとても優しいのね…。私はこの塔から出ることは出来ないの。だからお願いがあるの。あなたさえよければ、時々ここに来て私の話し相手になってはくれないかしら?」
「私は、この塔に閉じ込められてから、月に一度、魔女の使いが様子を見に来る以外人に会うことがないの。その魔女の使いも私と喋ってはくれないわ、だからとても寂しくて寂しくて…」
王女様の言葉に若い男は深く頷きました。
「約束しよう、僕はこの森の小屋に住んでいるんだ。毎日ここにきて君の話相手になろう。それで、君の寂しさが少しでも和らいでくれるのならば」
若い男の言葉に、王女様は自然と笑みがこぼれます。
人にこんな優しい言葉をかけてもらうのは久しぶりでした。
王女様と若い男は、また明日、夕方にこの塔で会おうと約束をしました。
王女様はその夜、幸せだった頃を思い出しながら眠りにつきました。