彼女と彼と初対面(彼女視点)
2話目です。読んで下されば嬉しいです。
…今私の目の前には、限りなく面倒な試練が立ち塞がっている。
「本当にマジでお願いします。後生ですので見なかったことにして下さい。」
浅黒い肌の、筋骨隆々としていて威圧感のあるとても大きい身体。
スポーツ刈りの頭。顔のパーツはどれも荒削りで、幼さなんて全く感じない。
そして極めつけは、どこぞのマフィアも真っ青の鋭い三白眼。
そんな、絶対に高校なんかよりもどっかの裏社会でラスボスやってる方が似合うような男が、放課後の静かな図書室で居る。
それだけでもう違和感が半端ないのに、そんなラスボスが私に対して全力で土下座をしているのから、もはや目の前の光景がちょっとした異次元。
「えっと、とりあえず頭をあげてくれません?落ち着かないんで。」「す、すんません。」
そろそろと頭を上げながらこちらを伺うラスボス(仮)。
上目づかいでこちらを見つめる顔は、いまにも「てめえの口から手ぇ突っ込んで内臓引きずり出すぞ、ゴラぁ……」とか言いそうだ。
でも、よく見ると冷や汗らしき物を流しまくっている。
(普通の人にはガンつけられている様に見えるが)ちょっとビクビクした様子で敬語を使うあたりが、かなり似合わない。
「いや、謝んなくてもいいですよ。」
謝る事でもないですし。
そう言って私がにっこり笑うと、相手は一瞬硬直して、慌てたように目をそむけた。
顔が赤くなったように見えたけど、もともと色が黒いので分かり辛い。
そうっスかね、と擦れた声で返事をした彼はたぶん見た目よりずっと良い人だ。
そんな彼が持っているのは、一冊の本。
タイトルは……「上手な友達の作り方。」
タイトルが目に入った瞬間、なんだかとてつもない居心地の悪さが私を襲った。
ああ、お父さん・お母さん。私は今、すごい試練に立ち向かっています。
人の秘密を知るのって、あんまり良い物じゃないかもしれません。
その試練の名は(罪悪感)。