第14話「空に咲く一輪の」
口火を切ったのはサトウだ。化け鳥の触手が動き始める前にその一本めがけ剣撃を加えに行く。武器は振りの早いレーザーダガーだ。小さな刀剣から魔力の刃が伸び、触手を切り刻む。
早い。一瞬で五回ほどの斬撃。敵をあざ笑うかのような上下にはねた移動。簡単に捕捉されないように常に動き回り安全にかつコンスタントにダメージを与えていく。
しかし、相手が悪い。空を飛ぶ敵に有効なダメージを与えるには自分も空を飛び直接攻撃を加えるか、地上で魔法攻撃を飛ばすかの二択になる。つまり、どのみち継続して魔力を使うので長い戦闘はじり貧になるのだ。こういった敵でも人数が多ければ地上からの波状攻撃でなんとかなるが、これだけ少ないと地上からの攻撃は避けられ、相手からは捕捉されやすく遠距離攻撃を食らうという最悪の状態だ。
特に今のような空中での激しい旋回を伴った移動。触手をよけるためとはいえ、これほど動いていると長くは魔力が持たないかもしれない。
「アリアさん! ボケっとしてないで加勢しますよ! リチア!」
サファイアがロッドを取り出し、魔法を発動する。これは対象の魔力消費を抑える魔法だ。戦況を把握し、サトウを補助する形をとっているのだ。彼女は賢い。できるだけサトウに時間を稼がせ、遠巻きに観察することで攻略の糸口を探すということだろう。
まずは僕にできることをする。アリアが強化補助を行うのであれば、こっちは戦力補助だ。
「ゼータ」
呪文を唱え、火の玉を化け鳥に向かって飛ばす。やつの見た目は植物のような感じだ。それが直接的な特性になるのならば、炎属性の攻撃が有効かもしれない。こうやって相手の弱点を探ることで戦況を有利にするのが僕の仕事だ。
化け鳥はサトウに気を取られていた所為か、火球に直撃する。炎は羽へと移り痛ましい悲鳴を上げる。予想はあたっていたようで、どうやら効果は抜群みたいだ。
「よし、弱点が火ならこのまま上位魔法で……」
「アリアさん危ない!」
さらに魔法を発動しようと構えていると、サファイアが横から飛び込んできた。そして先ほどまで立っていた位置には鋭い棘を伸ばした触手が通過していく。
本体との距離は20m以上離れていた。だが、こんなところまで触手が伸びてきたのだ。しかもあれほどの速さでだ。詠唱に気が取られ、サファイアが助けてくれていなければ直撃していた。
化け鳥の視線はサトウに意識しつつも確実にこちらも捉えていた。炎属性はどうやらヘイトが大きいらしく、やつのトサカに来たようだ。
「ぼけっとしててはだめですよアリアさん! きちんと敵の動きを見て逃げてください!」
「あ、ありがとう」
サファイアは離れ、サトウの支援を続ける。僕は敵に狙いをつけられたため木々を乗り移り、ゼータを細かく打ち込むことにした。上位魔法を詠唱している時間はどうやら取ることができない。
化け鳥はサトウをあしらいながらもこちらに攻撃を加えることをやめない。器用なやつだ。触手が多いせいで、三人程度ではまったく相手の戦力の分散ができていない。
だが、ゼータは結構効いているらしく。こちらへの攻撃が徐々に激しくなってくる。そしてついにしびれを切らしたのか身体を大きく回転させて触手を振り回し、サトウを退けさせてから今度はこっちの方へと飛んできた。
「アリアさん、逃げてください」
サファイアの声が聞こえる。敵の動きも見切っていた。わかってはいたのだが、反応ができなかった。気が付けば敵はすぐ目の前にいた。
「ぐ、ゼー……」
魔法が発動するよりも早く、大きな腹での突進を食らう。アリアの小さな身体は以前の身体よりも大きく跳ね飛ばされ、強い衝撃を受けてしまう。さらに堪えてる暇もなくすぐに触手で捕まれ、勢いよく地面へと放り投げられた。咄嗟のことで魔法による受け身も取れず、固い地面に直撃してしまった。
「がはっ!!」
この化け鳥、思ったよりも強い。巨体の癖に俊敏さがあり、知恵もある。狙いも正確だ。集中してヘイトを貯めるような攻撃は迂闊だった。
やつはまだまだ攻撃の手を緩めるようなことはしない。今度は羽を大きく羽ばたかせる。そこからは鋭い魔力の刃が無数に飛び出していた。ダメージのせいで動けず、こちらめがけてまっすく飛んでくる――。
「アリアさん!」
寸前、目の前に魔法障壁が広がる。刃はすべてそこに突き刺さり防がれ、霧散していた。またサファイアが助けてくれたのだ。
「エルガ!!」
サファイアの詠唱が聞こえ、目の前が真っ白に光りだす。閃光魔法だ。相手に強い目くらましを与えることができる。この隙に身体が持ち上げられ担がれていくのを感じた。
「サトウさん、しばらく頼みます」
サファイアはどうやらサトウに引きつけ役を買ってもらい、距離を取るようだ。僕を担いで。
木々が生い茂る森の中だ。地面を歩いていれば、簡単に見つかることもない。木々を縫うように森の中を走りぬける。サファイアはある程度離れてから僕をゆっくりと地に下ろした。
「チリア――」
回復魔法、サファイアが僕にかけてくれた。すぐに傷の痛みは感じなくなっていった。
「……アリアさんちょっと失礼します、リドア――」
続けて魔法を唱えるサファイア。これは――検診魔法だ。アバターやモンスターの体調状態を測ることができる。あまりにもピーキーな魔法なので覚えている人は少ない――が、サファイアは支援特価なので常備しているのだろう。ヘイトなどを診断するのに使えると聞いたこともある。検診を終えるとなにやら疑念を抱えたような表情をする。
「――おかしいですね。回復したのにバイタルが上がりません。もしかしてアリアさん、現実世界で風邪でも引いてらっしゃるのではないですか」
ご名答だ。小さく首を縦に振る。寝ていれば楽になると思っていたが、やはり負担はかかっていたようだ。ログインしてすぐよりも身体がだるくなったような気がする。
「ダメじゃないですか! アサルトエリアは精神状態や体調を能力に大きく反映するのですよ! こんな状態でログインするなんて――」
そこまで言ってサファイアは言いよどむ。そして、少し考えた素振りを見せてから立ち上がった。
「――いえ、すみません。よくよく考えてみてみればもともと今日は戦うつもりなんてなかったんですよね。人探しだけして、ログアウトする。そのつもりだったはずです。なのに戦おうだなんて言ったのは私です」
「いや、でもサファイアが言ったのは紅竜だから――」
「いいえ。あの化け鳥にしても時間切れまで逃げていればおそらく大丈夫でした。それなのにサトウさんが突っ込んでいったからと言って加勢するように仕向けたのは私です。私に責任があります」
「サファイア。だけど――」
もういい、しゃべるなと言うようにこちらに手のひらを向けるサファイア。その目は責任感を感じているみたいだった。少しだけ、悲しい目をしていた。
「アリアさんはここで休んでいてください。あ、でもログアウトはしないでくださいね。サトウさんと無事に必ずここへ戻ってくるので」
サファイアはそういって背中を見せる。それ以上は何も言わず大きく跳躍し、木々の中に消えていった。
あの化け鳥は間違いなく強い。基本的に高ランク向けの新モンスターが弱く設計されることはありえない。それほど大きくないとは言え、本当なら三人でも勝てるかは怪しい。二人なんて――攻略もなにもわからない状態では勝つことはほぼ不可能だろう。そのうえ奴は戦いの中で学習する。長引けば対策をされて損だ。二人で短期決戦などそれこそ不可能に近い。
そんな中星屑一つの可能性の中で彼女たちを待っているのか。このまま無駄に体力を消費するよりログアウトしておとなしく寝ていればいいんじゃないか。別に彼女たちが負けることにペナルティはない。サファイアにも責任などない。サトウのことはまた今度でいいとメッセージを残しておけば、彼女にも罪悪感は残らないだろう。
アサルトエリアに睡眠はない。だから実の身体に対する休憩などはないのだ。このままいても疲れるだけ――。
ドゴオオオオオオ。
遠くから、爆発音が響いてくる。僕の惨状を見た彼女たちがヘイトを貯めるような炎系の爆発魔法を使用するとは思えない。これは敵の攻撃音だ。当然と言えば当然、やつはまだまだ能力を隠し持っているのだ。
何度も何度も響いてくる。音が大きくなる、間隔が早くなる、攻撃が激しくなる。一向にやむ気配はない。相手の体力が削られているとは到底思えない。
奴を倒すためにはたぶん、炎属性攻撃が必須だ。斬撃によるちまちました攻撃などでは時間がかかりすぎる。本当に相性が悪いのだ。安全策ではだめだ。この人数では最適化された攻略策が必要不可欠だ。
彼女たち二人では絶対に勝てない。かと言って僕が言っても的にされて終わりだ。どうにも――。
いや。待て。やつの攻撃は最初切りかかっていったサトウを狙っていた。そしてその次には炎属性の魔法を打ち込んでいた僕にターゲットが移った。だけど、一度もサファイアを狙うことはなかった。
――いけるかもしれない。
重い膝をなんとか上げ、装備を今一度確認する。この水着みたいな軽鎧以外にもっとましな着られる装備は――よし、魔力は減るがこれがいい。ホワイトアーマーS。あとはこっちのロッド――。いや、もしかすると――これも保険に装備しておこう。
「――行こう」
「サトウさん! 大丈夫ですか!」
「うん。ちょっとかすっただけ」
「何回かすってるんですか! もう十分重症ですよ! もし支援魔法が使えるなら攻撃役替わりましょう!」
「いや、たぶんこのままが良い」
「そうは言ってもボロボロじゃないですか!」
「そっちが攻撃すると、たぶん、まずい」
「サトウさんにだけ傷ができるよりはマシです。行きますよ!」
「ま、「待て!」
サファイアが今まさに化け鳥に攻撃を加えようとしているところに、間一髪で間に合う。張り上げた声が届き、彼女の攻撃を止めることができた。
サファイアはこっちに気が付き近寄ってくる。半分怒った表情で。
「アリアさん! なんで来てしまったんですか! 体調も悪いのに寝ていないと――それにこっちに来たらまた狙われて――」
「それが目的なんだよ」
僕はロッドを取り出しゼータを発動する。一回、二回。化け鳥がこちらに気が付くまで火球をぶつけてやる。
自慢の羽毛に火がつけられ、当然奴は激昂する、さきほどと同じように全力でこちらにとびかかってきた。
「アリアさん!」
「来るな、サファイア!」
制止。僕の剣幕に足を止めてくれた。それでいい。
化け鳥の腹が直撃する。さきほどよりは守りを固めてきたためまだ耐えられる。だが、痛いのには変わりない。ぐっとこらえて意識を保つ。
狙い通り吹っ飛んだ僕にめがけて触手を伸ばしてきた。それに対して火球を飛ばす。命中しそれを阻止。だが、さらなるヘイトが集められ、その結果すべての触手が僕の周りを包むように伸びてきた。
撃ち落とすことはかなわず、全身を触手で包まれる。まったく気持ちよくない。――いや、棘だらけなのだから当たりまえだ。
だが、これでいい。
「くらえ! キレクタ! ドメタ!」
触手に巻き付かれながらも魔法を発動する。氷結魔法と重力魔法だ。――だが、対象はこの僕自身。たちまち自身の身体を氷が覆った。相手の触手ともどもに。
身体を触手ごと凍り付かせ触手が離れないようにしたのだ。そしてそのまま、質量を重くして触手を地面に引きづりこむ。狙い通り化け鳥はすべての触手が防がれ手出しができなくなった。
「今だ! サファイア、サトウ!」
僕の意をくみ取ってくれた二人が攻撃を始める。相手は身動きが取れず二人の攻撃をもろに食らっていく。僕の身体も氷結によりダメージをじわじわ食らっていくが――これならなんとか倒せる。
化け鳥はなんとか逃げようとするが重力魔法は最大レベルでかけている。こういう状態異常魔法は元気な相手にかけるときはこうはいかないが、弱った自分の身体ならばかかりやすく、いくらでも重くすることができる。自慢の触手でも力づくで持ち上げることができないようだ。
だが、やつも馬鹿ではない。逃げることができないとわかるや否や。奇妙な動きを始める。くちばしを上に向け、まるで熱いおでんを口の中で転がすような動き。次第に口から火が漏れ出してくる。
そして次の瞬間、こちらに顔を向け大きく口を開き、特大の火球を吐き出してきた。先ほどの爆発音はこれだったのだ。
「アリアさん!」
サファイアが叫ぶ。このままでは直撃して、ダメージを受ける上、氷結も解除されるだろう。そうしたらまた触手が暴れだして――。
ドゴオオオオ!
「アリアさああああああああん!」
「直撃、これは厳しい……」
「そんな……」
「それより触手、解除されるかもしれないから注意を――いや、うごかない?」
触手は動き出さない。爆炎の中に伸びたままだ。
「あれ、氷結が解除されてない。アリアは――」
次第に爆炎が晴れる。アリアは――僕は無事だ。先ほどと同じように氷に包まれている――だが、今度はその氷が燃え盛っている。
炎は触手にも移っていき、化け鳥は悲鳴を上げ始める。
「あれは、エンチャント! 溶けない氷!」
魔法はある程度習熟すると、上位効果を付与することができる。例えば、氷結魔法のキレクタならば氷結状態を炎属性で解除できないという上位効果が付与できるようになる。ただ、これは相手が気絶していたり、弱っていたりするときにしか成功しない。つまり、だからこそ今の僕にうってつけということだ。
加えて、氷結状態は炎属性攻撃のダメージを大きく減少する。やつの火球によるダメージはほとんど受けない。さらに僕には簡単に炎上状態が付与されるのでそのダメージもやつの触手に痛み分けということだ。
触手に絡まれ、氷に包まれ、炎上してるという情けない恰好だが――これが今の最適解だ!
相手は燃え盛る触手に気を取られている。
「サトウさん!」
「了解」
「アリアさんの敵、取らせていただきます!」
サファイアは武器を巨大なハンマーに持ち変える。ブラッドフット。強力な炎属性のハンマーだ。重く、振りを遅いため使いどころが難しいが、今はこれを使うチャンスだ。
「全力。コロナ」
サトウはダガーの魔法の刃にさらに炎の魔法を付与する。魔力の消費が激しくなるが、ここで倒し切ればいい。
「うぉぉぉぉおお」
「おー」
炎をまとった打撃と剣撃が化け鳥を両側から挟み込む。怒涛の攻撃は悲鳴を上げる暇さえも与えない。ごりごりとやつの体力は削られていく。
しかしこれだけでは終わらなかった。最後の悪あがきをだ。化け鳥は激しく羽ばたき始めたのだ。これは高度を上げるためではない。羽から魔力の刃を飛ばすためだ。無茶苦茶に身体をねじ動かし、刃をあたり一面にぶちまける。一本一本のダメージは低いが、連続して食らうとすぐに体力がなくなってしまう。
さすがにこれには二人も手が出しづらくなり苦戦し始めてしまった。
だけどここで攻撃の手を止めてはこっちの魔力と体力の両方がゼロになってしまって勝ち目はない。僕は叫んだ。
「攻撃を止めるな! 続けろ!」
「でもこのままじゃダメージを……」
「――!? いや、行ける」
「ん!? 体力が回復してる!」
保険で装備していたもの、それは体力共有リング。自分の体力を周りのプレイヤーに分け与えることができるアイテムだ。ホワイトアーマーSは体力回復効果がついている。白騎士の持っていた剣の「光の加護」には劣るが、氷結と炎上でじわじわ減って行ってもぎりぎりプラスマイナスゼロが維持できている。あとは二人が僕の体力が分け続けられない限界までに倒し切ってくれればなんとかなる。
幸い、魔力の刃は現在攻撃を加えている二人に向かってくれている。それにあの刃にスタン属性は存在しない。当たればダメージを受けるが、その場で霧散するだけだ。耐え抜き攻撃を続けることはできる。痛みに耐えきることのできる、二人の忍耐力を信じる。
二人はまた攻撃を始めた。痛みも省みず、ただ相手を倒すことだけを目標に刃を振るう――。
「これで終わりです!!!!!!!」
とどめにサファイアが大きく振りかぶり勢いよくハンマーをスイングする。化け鳥の頭部に激しい衝撃を与え、炎の華を咲かせる。見事なクリティカルヒットだ。遂に化け鳥は頭をくるくると回し地に落ちた。触手がだらしなく垂れる。敵は抵抗をやめていた。
<コッカローズ>と、モンスターの名前が討伐証明に刻まれる。ドロップアイテムも自分のインベントリへと自動で付与された。
「やった」
「アリアさああああああああん!!!!!」
サファイアが泣きながら走ってくる。自分もボロボロなのに真っ先に心配してくれるいい奴だ。
「えっと、溶けない氷ってどうやって解除するんでしたっけ――えっと……あ、調合アイテムですか。げっ、エンチャントレベルのを解除するのって三つも聖草使うんですか。いえ、アリアさんのためなら惜しみません! えいっ!」
状態異常は上位のものでも10分くらいたてば治る。だけど、そんなに放置するわけも普通はいかない。直すためには比較的貴重な聖草が必要なのだが――サファイアは躊躇なく僕に使ってくれた。たちまち身体の自由が戻り、楽になった。だが、ほぼ瀕死状態のため指先一つも動かせない。体力分割も結構ぎりぎりまでいっていたようだ。
「ああ。アリアさん! すみません! 私がちゃんと対策を立てることができれば!!! アリアさんのお手を煩わせるようなことにならずに済んだのに!!! 私、助けられてばかりでえええ!」
「い、い、よ。べつ、に」
「あ、魔力は限界なので! アイテムを! はい、ポーションです! メインダメージのが大きいので完全回復はできませんが我慢してください! 本当にすみませんでした!!!!!!」
サファイアからポーションを飲ませてもらう。体力や魔力は血液のようなもので、消費してもその場で簡単に回復することはできない。ポーションなどの回復アイテムで回復できる量には限界があるのだ。しかし、ないよりはまし。身体を起こすぐらいには回復できた。
「ふう……ありがとうサファイア」
「こちらのセリフです! アリアさんが助けに来てくれなければじり貧で負けてました! ごめんなさい! 必ず戻りますなんて無責任なこと言って!!!! あのままだと結局二人で死んで、アリアさんのところにあの化け鳥を向かわせてしまうところでした!!! もう、ほんっとに――」
「いや、もういいって」
泣きべそかきながら抱き着いてくるサファイア。なんかこの感じ凄まじいデジャブなんだが。
サトウの方を見る。こちらに口をださず、見守っている。立ち去らないということは、待ってくれているのだ。
「あの、サトウ――」
「ごめんなさい。アリア。私の責任だ」
サトウも謝りだす。
「私が突っ走らなければ、二人も無謀な戦い方をする必要はなかったはずだ」
「まあ、そうだけど――でも敵の確認もせず、なんで突っ込んだんだ」
僕が質問すると、ちょっと恥ずかしそうに答える。
「そんなの、白騎士に憧れているからに決まっているだろう」
白騎士はたった一人でも、大きなモンスターに立ち向かい。力でねじ伏せる。アサルトエリアの――。
そうだ、忘れていた。彼女は白騎士の追っかけだった。いや。僕の思ってたようなただのファンではない。目標にしていただけなんだ。サトウは彼を観察することで、より強くなろうとした。強くなりたい、僕たちと同じ志を持った仲間。ただそれだけだったのだ。
これは失礼な勘違いだったかもしれない。