現実の裏側
可能性を笑う者には希望が無い、絶望を知らない者には夢が無い、現実に妥協しか出来ない者には進歩が無い。ならば、目指そう、遥かな高みを。だから歩き続けよう、だからこそ戦い続けよう。現実の中で、人生の中で、自分だけが到達できる、自分だけの高みを。
そこは現実であり現実ではない。世界の外れであり、世界の中心でもある。そう、そこには不思議な光景が広がっていた。子供の時に使っていた玩具箱をぶちまけたように、絵本に描かれていた何枚もの絵をばら撒いたように。無作為に、いろいろな物が存在していた。
そんな不思議な光景。けど、自然と僕には分かった。そこが現実であり、世界である事を。そう、そこは現実の裏側、誰もが作れる世界、僕自身が作り出した世界。誰の世界でも現実でもない、僕が持っている僕だけの現実、僕だけの世界。
だが、そこは現実でもあり、世界の外れでもある。つまり、ここは夢のような楽園でも、花が咲き誇る花園でもない。そう、そこは現実。現実だからこそ、辛い事や悲しい事もある。だから戦い続けようと決めた。その現実と。
乾いた風が駆け抜けると、僕は描かれた木の枝に立っていた。そして右手には冷たい光を放つ剣を、左手には貫く拳銃を持っていた。そんな僕の短い髪を乾いた風が揺らして行く。過ぎ去った風の行方は知らない。けど、これから何をすれば良いのかは自然と分っていた。ここは現実でもあり、現実ではないのだから。
そして突如として積み木で作られた城が崩れ去ると、中からはブリキで作られたように、鈍い光を放つ、ドラゴンのような物が姿を現した。そのドラゴンが咆哮を上げると、僕は描かれた木の枝を思いっきり蹴る。そして僕は高く高く舞い上がった。
そんな僕に気付いたのだろう。ブリキのドラゴンは僕の方に頭を向けると大きな口を開き、口の中からは大きな玩具のフォークやスプーンが数え切れないぐらい飛び出してきた。全ては僕に向かって放たれたのだ。だからこそ、僕は落下しながらも自分に向かって来るフォークやスプーンを剣で薙ぎ払い、叩き落していく。
本当ならブリキのドラゴンが居る所まで跳んだはずだった。けど、ドラゴンからの攻撃が僕の行く手を邪魔した。だから僕はドラゴンの所までは跳べなかった。だからと言って終わりではない。まだ戦いは続いてる。
そんな戦いの中で僕が着地したのは、大きな玩具の車。普通ならミニカーと呼べるだろう。けど、その車は僕が上に乗っかても充分な大きさを持っていた。そんなミニカーが原動力も無いのに走り出す。そう、僕が望んだように、僕の意思で。
僕を乗せたミニカーはそのまま走り続ける。ドラゴンは、そんな僕に再び大きな口を開くと、今度は玩具の槍を吐き出してきた。その槍は何かのテレビアニメで見た物と同じだ。そんな槍が僕に向かって次々と向かって来る。けど、今度はミニカーを操り、降り注ぐ槍を避けながらドラゴンに向かって突き進む。そんな僕の後ろには地面に突き刺さった、槍が無数に存在していた。
ドラゴンが吐き出した槍を全て避けて、そのままミニカーを走り続けた先には、まるで用意されていたかのようにジャンプ台が設置されていた。けど、おかしい事じゃない、ここは世界の中心であり、世界の外れ。僕の世界であり、僕が作り出した世界。そして現実。
僕はそのままミニカーのスピードを上げると、ジャンプ台に乗り上げ、そのままドラゴンに向かって一気に飛び出す。けど、ここは現実。つまり無制限ではない。だから、そのままミニカーでドラゴンに向かって行く事は出来ない。
そう判断した僕は、ミニカーの屋根を蹴って、再びドラゴンに向かって跳び出すと、今度は拳銃をドラゴンに向けて、四回だけトリガーを引く。拳銃から飛び出した弾丸がドラゴンを貫くと、ブリキのドラゴンには弾丸よりも大きな穴が空いた。
けど、ドラゴンもやられっぱなしではない。いつの間にか長く伸びた尻尾が、僕に向かって容赦無く叩き付けられる。けど、僕は表情を一つも変える事無く、無表情のままにドラゴンが仕掛けてきた攻撃を受けながら、最後には地面に向かって叩き付けられた。けど、痛みは無い。だって、ここは現実でもあり、現実ではないのだから。
叩き付けられた衝撃でブロックの地面を三回ほど僕の身体が跳ねると、僕は体勢を立て直して、剣をブロックの地面に突き刺し、何とか止まる事が出来た。僕は止まるのと同時にドラゴンに向かって拳銃を向けると、トリガーを引く。
発射された弾丸は、いつの間にか僕に向かって身体を屈め、僕を押し潰そうと伸ばしてきたドラゴンの手を貫いた。だからと言って、ドラゴンも攻撃を止めなかった。ブロックの地面にドラゴンの手が容赦無く、叩き付けられる。
ブロックの地面が煙を上げながら崩れる。けど、僕は無事だった。先程、ドラゴンの手に空けた穴を通り、今ではドラゴンの腕を一気に駆け上がっていた。さすがに自分の腕を駆け上がる僕には攻撃が出来ないだろうと思っていた。けど、ドラゴンは口を開けると自分の腕に噛み付き、そのまま噛み砕いてしまった。
そんなドラゴンの鼻に衝撃と同時に穴が開くと、その穴からは僕が出てきた。僕だって、このままブリキのドラゴンに食われる気は無い。けど、ドラゴンは僕の行動が分かったのだろう。そのまま頭を振り、今度は僕に向かって頭を叩き付けてきた。
けど、先程の尻尾みたいに長くはない。だから衝撃が一瞬だけ走ると、僕はドラゴンによって弾き飛ばされていた。けど、衝撃が一瞬だっただけに反撃をする事が出来た。僕は弾き飛ばされながらもトリガーを引き、出来る限りの弾丸をドラゴンの頭に向けて放ち、ドラゴンの頭は穴だらけになった。
さすがに反撃をしたためか、僕は再びブロックの地面に叩き付けられた。その衝撃でブロックが崩れ去り、僕と一緒に下に落ちて行く。もちろん、ドラゴンも僕をこのままにしておくはずが無い。だから自らの足でブロックを踏み抜くと、ドラゴンは翼を広げて、僕に向かって、今度は大きなトランプを数え切れないほど吐き出してきた。
さすがに、薄いトランプを的確に弾丸を当てる事は出来ない。だから、僕は空中でも体勢を立て直すと、僕に直撃するはずのトランプを次々と切り裂いて行った。そんな空中戦も次の地面が見えてきたところで終わる。
そして僕が着地したのは、走り続ける鉄道模型の上だった。レールの上を走り続ける鉄道模型の上に立ちながら、僕は無表情な顔を無機質な瞳をドラゴンに向ける。そのドラゴンは背中の翼を羽ばたかせながら、僕に向かって大きな口で咆哮をする。けど、そんなドラゴンも僕が放った弾丸で大きな穴が幾つも空いてる。つまり……終わりは近い。
そう確信した僕は走り続ける鉄道模型の最後尾に立つと、今度は剣を構える。そんな僕に対して、ドラゴンは大きな口を開けた。どうやら、ドラゴンは鉄道模型ごと僕を食べようとしているのだろう。けど、勝機は、そこにあった。
僕が立っている最後尾の車両にドラゴンが噛み付こうした時だった。僕は剣を上に構えると、そのまま最後尾の車両から一気に飛び出す。剣がドラゴンの下顎に食い込むと、僕は勢いを利用して、そのままドラゴンの喉、腹と一気に切り裂いていく。
そして尻尾まで斬り裂いた僕は、一気にドラゴンの下を駆け抜けると振り返り、今度は拳銃を構える。だが、拳銃はすぐに姿を変えて、重厚なマシンガンとなる。けど、僕は構わずにトリガーを引くと、数える事が出来ないほどの速さで弾丸はドラゴンを貫き、弾丸を発射した証拠に空になった薬莢がマシンガンから次々に放り出され、地面に転がっていく。
貫いた衝撃でブリキのドラゴンは舞い踊るように身体を跳ねさせる。そして、既に原型が分からないほどに粉砕した時だった。僕は銃撃を止めると、ブリキのドラゴンは地面に落ちて、そしてバラバラに、ただのゴミになった。そして僕はマシンガンから拳銃へと戻す。
そして僕が次に目にしたのは……玩具のお城だった。けど、大きさから言って、普通の城と同じぐらいはあるだろう。そんな西洋風で出来てる玩具のお城が門を開くと、門から出てきたのはぬいぐるみの一団だった。
確かに見かけは可愛らしい。猫、犬、熊、パンダ、ウサギ、と次々に二足歩行をしながら僕の方に向かって来る。そんなぬいぐるみ達は手に冷たい光を放つ刃、そんな武器を持って、次々に向かって来る。
そう、まだ戦いは終わってはいない。けど……今日はそろそろ終わりだ。それが分かるからこそ、僕は静かに瞳を閉じた。そして、現実は反転して表側へと戻る。
微かにチャイムのような音が聞こえたような気がする。けど、僕はそのままの体勢で、再び裏側に行こうとする。つまり……そういう事である。そんな時だった、突如として頭に衝撃が走るのと同時に小気味良い音がすると、僕はやっと頭を上げる。すると、僕の横には彼女が立っていた。そんな彼女が溜息を付いてから言うのだった。
「はぁ、もうホームルームが終わってるんですけど。まったく、いつまで寝てるのよ」
そんな彼女の手には厚手の教科書があった。どうやら、それで叩かれたのだろう。けど、僕は、そんな事を気にしないで、呑気に大きなあくびをする。もう一回叩かれた。……別にあくびぐらいは構わないと思うけど、だって、もう放課後だし。
そして僕は彼女の方に顔を向けて言葉を口にする。
「とりあえず、おはよう。そして、起こしてくれて、ありがとう」
僕がそんな言葉を口にすると彼女は微笑みながら言うのだった。
「おはよう、それと、どういたしまして」
「じゃ、帰るわ」
「部活に来いやっ!」
またしても教科書で叩かれてしまった。それに、今度は本気で殴ったらしく、僕は頭に痛みを感じでいた。せっかく、颯爽と帰ろうとしたのに失敗したらしい。まあ、それも仕方ないだろう。なにしろ彼女は演劇部の部長であり、僕は部員でもある。
それに、とある事情から僕は彼女の家で一緒に暮らしている。もちろん、先生は知っているけど、クラスの誰にも、その事は知られてはいない。まあ、そのおかげで僕達は普通の学生生活を送っているワケだが、まあ、それは置いておこう。
ここで肝心なのは、僕の逃走が失敗した事により、僕は強制的に部活に行かなければいけないのだ。まあ、彼女に言わせれば、部長の特権らしい。そのため、僕はいつの間にか演劇部の部員にされていたのだが、それは別の話である。
ここでは語る事に意味は無い話である。よって、表の現実では、僕は彼女と一緒に演劇部が活動に使っている部室へと、渋々ならが行くのだった。
現実の裏側、境界線を隔てて作られた現実。よって、そこは現実でもあり、現実ではない。世界の外れであり、世界の中心である。なにしろ、現実の裏側は僕の世界であり、僕だけの世界である。だから、その世界は僕を中心で周っており、現実ではない。けど反転させれば現実である。
想像、妄想、夢、いろいろな言い方があるかもしれない。だが、それらの元になっているのは現実であり、そこから作られたのは現実ではない。つまり現実の裏側。現実であり、現実ではない世界。現実を元に作られた僕だけの世界。でも、現実と繋がってる。それは現実を元にしているから。
人は誰しも、そんな世界を持っていると僕は思う。だからこそ、僕は決めた。その世界で戦い続ける事を。悲しみとか辛いとか、不幸だと考えてしまった物に対して。
つまり現実では受け入れられない、または認められない。そんな現実と向き合うために、現実の裏側は存在している。僕にも、沢山の悲しい事、辛い事、自分がこの世で一番不幸だと思った事もある。もう二度と立てないと思った。
けど、そんな僕を彼女は立たせてくれた。現実の裏側で戦う強さをくれた。だから戦い続けようと決めた。どんな事も現実の裏側では実体化する。それは現実を元にして実体化しているから、なら、後はそれと向き合い、倒せば良い。そうする事で、僕はいろいろな事を受け入れ、認められるのだと思う。それがどんなに辛く、不幸だと思うことでも。
だからこそ、僕は現実の裏側で高みを目指す。それだけの高みに、それだけの強さがあれば、認められると思ったから、受け入れられると思ったから。現実で……一番不幸だと思った事を……。
という事で、久しぶりに短編を書いてみました。というか、即興書きなので、誤字脱字が多かった、ごめんなさい。
まあ、現時点では、ちとスランプ中という事で、気分転換に、即興で直書きでやってみました。なので……いろいろとチェックはしていませんっ!!!! いやね、だって……即興で書いた物だし、自分でも上手く書けたのかも分かりませんっ!!!! そんな訳で、その辺の判断はお任せしますんで、苦情以外は受け入れます(笑)
さてさて、今回は私にしてはちょっとメルヘン? まあ、少し不思議な世界、という事を意識して書いてみました~。ん~、何と言うか、私にしては珍しい作品と言えるでしょうね。
まあ、今までの作品は現実的な物が多いですからね~。という訳で、今回も最後は現実的になりました(笑) まあ、その辺は私の作品という事が過度な期待はしないでくださいな(笑)
なにしろ、現時点では、ちとスランプ中、連載物を書く気力と集中力が無くなってましたからね~、それで、ちと短編でもやるか、とか思って、短編を書いてみました~。まあ、即興で、というか……これでも三時間ぐらいで書いた作品なので、やっぱり過度な期待はしないでください。
まあ、スランプを脱するための気分転換をするために、ちと、作風を変えて書いただけですからね。まあ、何か気になる点があるのなら、感想をくださいな。という事で、毎度の事ながら長くなってきたので、そろそろ締めますね~。
ではでは、ここまで読んでくださり、ありがとうございました。そして、他の作品もよろしくお願いします。更に、評価感想もお待ちしております。
以上、とりあえず書いてみた!!!! と意味の無い主張を大声でやった葵夢幻でした。