プロローグ 地下牢
ホウホウと、どこかでフクロウが鳴く声がする。
かすかに眼を開くと、あたりは真っ暗だ。視線を少し動かして、空を見上げてみる。木々の葉と葉のわずかな隙間から、淡い光がこぼれ落ちている。
時は夜。それは確かだ。
だが。
今、中村北斗にわかることは、わずかにそれだけだった。
ここは、どこだ。
様々な種類の広葉樹が枝を広げる、森の中。それはわかるのだが、いったい、どこの森なのか。
まるで、頭の中に靄がかかったように意識がはっきりとしない。
ぼーっとしていると、立ち上る土と草のにおいが鼻腔をくすぐった。それでようやく、
北斗は自分が地面に横たわっていることに気がついた。
なぜ、オレは森の中にいるのか。そしてなぜ、地面に横たわっているのか。
わからないことだらけだった。
中でもわからないのは、見上げる木々が、見慣れないものばかりだったことだ。
広葉樹といえば、カシ、ナラ、クヌギ。福島県北部の地方都市で生まれた北斗は、海に山に、豊かな自然を遊び場として育ってきた。
少年時代にはボーイスカウトをやっていたので、森でのキャンプも経験豊富だ。生物教師が本職の、植物に詳しい隊長に見分け方を教わっていたので、日本に生育する代表的な樹木であれば、だいたい見分けをつけられる自信があった。
しかし、今、この森にある木々は、彼の知るものとはちょっと違うようなのだ。
横たわったまま、そんなことに考えを巡らせた北斗だったが、やがて地面から伝わってきた冷気にブルっとその身を震わせた。
体は気怠いが、このままでは風邪をひいてしまう。彼はゆっくりとその身を起こした。
そのまま立ち上がろうとしたものの、軽いめまいを感じて傍らの木に寄りかかる。カシに似たその木の、ゴツゴツとした木肌の感触が手のひらを通じて伝わってきた。
その手触りが、徐々に、北斗の意識を明瞭なものとさせていく。そして、今、彼が置かれているこの状況をもはっきりと認識させた。
これは夢の中などではなく、現実のものだということを。
なにはともあれ、最初にやるべきことは現状の把握だろう。木肌に手をついたまま、北斗はその記憶を手繰ろうとした。
その時。
ヒュッ!
空気を引き裂くような音がしたかと思うと、次の瞬間。
ドシュッと、何かが木の幹に突き立った。北斗が手をついている、指先ほんの数センチ先のところに。
そのお尻には、白い鳥の羽がついている。月明りで見えたそれは、北斗にとって見慣れた物だった。つい二年ほど前まで、毎日のように手にしていたのだ。
それは、弓の矢だった。
ところで、カシの木――この木がカシであれば、だが――というのは、あまたある木材の中でもトップクラスの硬度を誇る。
「すげぇな……」
北斗は低くうめいた。硬い木肌に深く食い込んだ鏃。それこそは、恐るべき弓勢の賜物であろう。
真似しろと言われても、オレの引く弓じゃ、ここまで深くは無理だろうな。
と、そこまでのんびりと考えたところで、北斗はようやく、事態の容易ならざることを悟った。やはり、まだ意識が完全にはクリアになっていなかったのだろう。
あわてて、矢の飛んできたであろう方向に向かって視線を飛ばした。
すると、森に広がる闇の向こうから、ガシャガシャ、ドタドタという二種類の音が聞こえてきた。それも、複数。
後者は足音だろう。だが、前者の、金属のような音はいったいなんなのか。
夜の闇は深く、音の源まではまだ距離があるようだ。目を凝らしても、北斗には何も見えなかった。
だが――。
相手には、北斗のことが見えているらしい。
「木に手をついたまま、動くな!」
野太いが、まだ若そうな男性の声が森の中にこだました。
その声は強く、鋭い。思わずビクッと体を震わせてしまったが、言われたとおり木に手をついた姿勢で、北斗は声の主が姿を現すのを待った。その言葉からすると、この矢は威嚇のためだったのだろう。
やがて、ドタドタという足音が近づいてきた。闇の向こうで黒い影が動き、複数の人が迫ってくるのが見える。
彼らは、北斗から十歩ほどの距離を置いて止まった。間髪入れずに散開し、北斗と、その手をつく木とをぐるりと取り囲む。
木々の間からこぼれるかすかな月明りが、その様子を照らし出した。
その光によって、北斗には、ガシャガシャというその音の正体がわかった。
なんと、甲冑の擦れる音だったのである。
しかも、それは日本の甲冑――大鎧や当世具足などではなかった。北斗の前に現れた男たちは皆、西洋の甲冑、すなわち板金鎧や鎖鎧などと呼ばれる物をその身にまとっていた。
◇◇◇
男たちの一人が、手にした松明を北斗に向けた。赤々とした炎の熱とまぶしさに、北斗は眼を細めた。
照らし出されたその顔を覗き込んで、なぜだかギョッとした表情を浮かべた者がいる。北斗を囲む半円の中心に立った男だ。
「……きさま、何者だ!」
そう声を発した彼は、ポジションから推察すると、男たちの隊長格なのだろう。体には鎖鎧をまとい、真っ赤なバンダナでその頭髪を包んでいる。
手には弓を提げているが、男たちの中で弓を持つのは彼だけだった。北斗の指先に突き立った矢が彼の物だとすれば、相当な手練れの射手であるに違いない。一寸先も見えないような暗闇の中、狙ってそこを射貫いたのだから。
ところでその弓だが、持ち主の体格に比べると、明らかに長かった。もっとも、弓自体の長さは、北斗がかつて使っていたものとほとんど異ならない。
その理由は、所有者の方にあった。あくまで北斗の目測だが、彼の背丈は百三十センチほどしかないのである。
まだ少年なのか……?
とも思ったが、月と松明の明りに照らされた顔は、髭こそきれいに剃られているものの、たしかに成人男性のそれだった。
そしてその顔立ちは、一般的な日本人――というより、東洋人とも西洋人ともかけ離れている。人種の違いというよりは、種族の違いとでもいうような。
鎧をまとい弓を手にした、日本人離れした顔と、それに不釣り合いな背丈の成人男性。
そう言語化してみたものの、ますます意味がわからない。
とにかく彼は、令和の日本――北斗の日常では決して眼にすることがないであろう姿をしている。混乱した北斗は、そんな隊長の問いに、すぐに答えることができなかった。
すると、北斗を取り囲む男たちはいらだったようで、口々に声を上げた。
「なぜ黙っている!校尉殿の問いに答えろ!」
「おかしな恰好をしおって、怪しいヤツめ!」
「カルガディアの密偵だな!?」
その彼らもまた、日本人らしからぬ顔立ちの者が多い。黒眼、黒髪の一般的な日本人である北斗とは異なる、茶色、赤毛と色とりどりの頭髪をしていて、金や銀に輝く髪の者までいた。
それぞれが、月明りに鈍く光る抜き身の槍を手にしているところも、令和日本ではあり得ない。彼らは、まさに兵士としか表現しようのない恰好をしていた。
「あ――」
槍先を突き付けられた北斗は、あわててその名を名乗ろうとした。だが、喉がかすれて声が出ない。どれくらいの時間、地面に横たわっていたのかわからないが、今、彼の喉はカラカラだった。
「ゆっくりでいい。答えろ」
その様子を見た隊長が、わずかに声のトーンを軟らかくして、再び尋ねてきた。
うなずいた北斗は、あ、あ……と喉の調子を整えてからようやく声を出した。木から手を離さないように、気をつけつつ。
「オレ……私は、中村北斗といいます。福島……あ、いや、栃木県の大学生です」
その答えに、隊長も兵士たちも首をひねった。
「ナカ……ナカム、ラ……ホ、ホク……ト?ト……トチ、ギギ……ケン……?」
日本人離れした顔立ちであるにもかかわらず、男たちがしゃべっているのは、抑揚からなにから完璧な、まぎれもない日本語である。少なくとも、北斗にはそう聞こえる。
だが、固有名詞の発音となると、いかにも言い慣れていない様子だった。
彼もまた、舌をなじませようとしているのか、北斗の名を口の中で繰り返していた隊長が、再び尋ねてきた。
「名前を『ナカ……ム、ラホク……ト』というのか?」
「中村が名字、北斗が名前です。呼びにくければ、北斗と呼んでください」
「ホク、ト……ホクトか。聴きなれない名前だが、いずれにしても、こんな時間にこんなところをうろついているなど良民とは思えん。カルガディアの手の者だな?その顔は少々気になるが……」
隊長はそう言って、手にした弓を北斗に向けた。いつでも矢をつがえられるように、腰につけた箙に手を回している。
が、そう言われても、北斗にはなんのことかわからない。
「カルガディア、とはいったいなんでしょう?」
尋ね返すしかなかったが、周りを囲む兵士たちはまたいきり立った。
「しらを切る気か!」
「我が国を侵略しておいて、あつかましいヤツめ!」
「おとなしく答えなければ、きさまらのせいで命を落とした戦友や国民の仇、とらせてもらうぞ!」
激しい怒りをぶつけられて、北斗はたじたじとなった。まったく身に覚えがないことだが、一つわかったことはある。それは、この兵士たちの国と、カルガディアとやらいう国とは、どうやら戦争状態にあるらしいということだ。
「そう言われても、本当にわからないのです。カルガディアとは国のことでしょうか。であれば、私はまったく存じません」
北斗がそう答えると、隊長が別のことを尋ねてきた。
「では……まさかとは思うが、きさまはシュロンの出身か?」
「それも違います。シュロンというのも知りません。私は、気づいたらこの森の中にいました。そして、なぜここにいるのか、その理由が自分でもわからないのです」
北斗は事実を正直に答えた。答えたのだが、隊長は、首を横に振って深く息をついただけだった。やはりというか、信じてはもらえなかったのだ。
「なぜここにいるのかわからない、だと?幼児でもなし、そんなバカなことがあるか」
「……」
それ以上の説明のしようもなく、北斗は黙ったままでいた。焦ってうかつなことを言えば、ますます怪しまれるだろう。
そんな彼の顔をにらみつけたまま、隊長は腕を組んで少し考え込んでいたが、やがてその考えをまとめたらしい。周りの兵士たちを見回すと、こう指示した。
「とにかく、このままここにいても仕方がない。詳しいことは明日にでも問い質すとして、こやつを連れて城に戻るぞ。今夜は敵陣に動きは見られないし、夜襲もないだろう。支度しろ」
「ハッ!!」
兵士たちは脛あて(グリーブ)のかかとを打ち鳴らして直立すると、そろって敬礼した。さきほど北斗を取り囲んだ時もそうだったが、よく訓練されているようだ。彼らの動きはきびきびとして、一糸の乱れもない。
兵士たちに敬礼を返すと、隊長はあらためて北斗に向き直った。
「きさまには悪いが、素性がはっきりするまで牢に繋がせてもらうぞ」
威圧するかのように、隊長は声に力を込めてそう告げた。
北斗は「ええっ!?」と驚きの声を上げたが、どこかもわからない森の中に、知らぬうちに横たわっていた自分を顧みれば、我ながら怪しいとも思う。
なんにせよ、弓や槍を手にした男たちに囲まれては、寸鉄も身に帯びていない北斗が抵抗しても無益だ。
「ゆっくりと木から手を放し、そのまま上に上げろ」と命令されたので、おとなしく従った。武器を持っていないか、兵士の一人に全身をまさぐられたのは不快だったが、彼らにしてみれば当然の処置で、やむを得ない。
北斗が抵抗の気配を見せないので、隊長は、それまで北斗のことを厳しくにらみつけていた視線をふっと緩めた。諭すように語りかける。
「心配するな。我がローウェルは文化の誇り高き国だ。ホクトとやら、きさまがおとなしくして、包み隠さずしゃべりさえすれば、不必要な拷問など加えることはない」
北斗は黙ってうなずいた。隊長の表情と声音とに信頼できそうなものを感じたからだ。
手を前に出すように言われたので、その通りにすると、縄をかけられた。だが、その結び方はことさらにきつくはなかったので、痛くはない。
隊長の言葉に嘘はなかったようだ。
「よし。行くぞ!」
隊長が号令をかけると、男たちは北斗を真ん中に囲んだ。兵士の一人が縄を引き、木々の間を縫って歩き出す。
しばらく歩いたところで、急に視界が開けた。森を抜けたのだ。
とたんに、北斗は強いまぶしさを感じて眼を細めた。森の中は枝葉が隙間なく茂っていたので気づかなかったが、今夜は満月だったのだろうか。
なんの気なしに空を見上げた北斗は、愕然とした。
先ほどからちょくちょく感じていた違和感。その理由が今、はっきりしたのである。
「あ、ああ……!そんな……っ!!」
突然足を止めるなり、震える指で空を差した北斗。その視線を追った隊長は、いぶかしげに問いを発した。
「なんだ、月がどうした?」
「っ、三つ!三つ……っ!!」
北斗の指も声も、震えが止まらなかった。呆然として、夜空を指差した恰好のままで固まっている。
その様子を見た隊長は、呆れたように言葉を続けた。
「何を驚いている。ローリスリアの月は、三連月。当たり前だろう」
三つの月は、それぞれ半分ほど欠けていた。
だが、三つを合わせたその輝きは、地球から見上げる満月よりも明るかった。
◇◇◇
兵士たちに縄を引かれるまま、北斗は無言で歩いた。
一方、隊長と兵士たちも、誰も言葉を発しない。油断なく周囲に目を配りつつ、音を立てないよう慎重に歩みを進めている。
一行の歩いている原野は下草が生い茂り、ところどころに灌木もある。月明りがあるとはいえ足元がおぼつかないので、つまずかないよう注意する必要があった。
夜空に浮かぶ三つの月に、北斗が受けた衝撃はあまりにも巨大だったが、足元に集中して歩くうちに、徐々に心が落ち着いてきた。
そうすると、今度はあたりを観察する余裕が出てくる。とにかく、やるべきことは現状の把握だ。この不可思議な世界でこれから見聞きするものすべてが、北斗にとって重要な情報となる。なに一つ、見逃したり聞き逃したりしないように気をつけねばならない。
そう考えて観察を始めた北斗は、森の方を振り返った。兵士たちが、たびたびそうしていることに気づいたからだ。
中にいる時は、ブラックホールのごとく真っ暗で、果てのないように思われた森。だが、そう感じたよりは広くなかったようで、振り返ってみると、その端まで見通すことができた。
森の向こうには、オレンジ色の光が連なっている。その間からは、幾筋もの白い筋が立ち上っていた。
「いつもと比べて、炊事の煙はどうだ?」
「特段の変化はないようです」
隊長と兵士がそんな言葉を交わしている。
炊事の煙……やはり、そうか。であれば、オレンジの光はかがり火だろう。
男たちの会話や、目にした光景について考えつつ歩く北斗の前に、やがて、石造りの城壁が姿を現した。そこへと向かう一筋の、きちんと整備された道路に出る。
城壁は、まんまんと水のたたえられた堀に囲まれていた。それに架かる石橋を渡ると、大きくはないが、堅牢に石の組まれた城門に行き当たる。
その前で立ち止まった隊長が、上を見上げて開門を促す声を上げた。城壁の上に衛兵が姿を現し、下を覗き込んで隊長の顔を確認すると、すぐに引っ込む。
ややあってから、ギギギッと音を立てて、入口が小さく開かれた。
「校尉殿、ご無事のお戻り、ようございました」
中に入った隊長に、衛兵が敬礼しながら声をかけた。
「カルガディア軍に動きはございましたか?」
「いや、今夜は静かだった。夜襲はないと思うが、油断するなよ」
「心得ております。それにしても、ヤツらがこの城を包囲して、もう一か月になります。あちらさんは、兵糧が尽きることなどないのでしょうか」
そんな会話にさりげなく耳を傾けていた北斗だったが、兵士たちに急き立てられて、同じく城門をくぐった。そのころには、北斗の心は完全に落ち着きを取り戻していた。
実は、彼の趣味の一つは、洋の東西を問わず城郭や城塞を見ることなのである。
この城の造りは、明らかに日本のそれではなかった。ヨーロッパの、それも城館ではなく、規模は小さいものの一つの街を城壁や尖塔が取り囲むタイプのようだ。
興味は津々だったが、キョロキョロとあたりを見回せば完全に密偵だと思われるだろう。それは好ましくないので、あえて視線を地面に落とすと、兵士の背中だけを追った。
城塞の中には民家だろう建物が建ち並んでいる。夜も遅い時間なのか、人々の暮らしの音は聞こえない。家々、辻々の明かりも消され、月明りだけが北斗たちの行く手を照らしている。
城塞の中にも、小さな川が流れているらしい。粗末な木の橋を渡った一行は、街外れの一角で足を止めた。
◇◇◇
そこには、小さいがレンガ造りの頑丈そうな建物が建っていた。そのドアを開けると、兵士は北斗の背中を押して、中に入るよう促した。
ここが牢なのだろう。中では、二名の兵士が直立して番をしていた。
部屋の片隅には、地下へと続く階段がある。怖くないといえば嘘だったが、兵士たちに命じられるまま、北斗は勇を鼓して階段を下った。
地下に至ると、そこには予想通り、鉄格子の組まれた牢があった。北斗が秘かに恐れていたのは先客がいることだったが、幸い、鉄格子の向こうに人影はなかった。
「入れ」
促されて、中に入ったとたん。ガチャンと音を立てて、扉は無情にも閉ざされた。
「明日、あらためて取り調べを行う。それまではおとなしくしていろ」
隊長が重々しく告げた。
北斗がうなずくと、彼はくるりと踵を返したが、階段を登りかけたところで肩越しに振り向いた。
「ああ、言っておくが、脱走はできんぞ。おまえが魔術師や精霊使い(エレメンタラー)なのかはわからんが、この牢には、『魔力感知』の魔術がかけてある。純語魔術や精贈魔法を使って脱走しようとしても、すぐにわかるからな」
そう言い残して再び階段を登ろうとした隊長だったが、北斗はその背中に向かって声をかけた。
「一つだけ、よろしいですか」
隊長は足を停めた。振り返るといぶかしそうな眼を向けてきたが、何も言わず黙ったままである。北斗は許可を得たものとして、言葉を続けた。
「私は、名を名乗りました。よろしければ、あなたのお名前もお聞かせください」
それは隊長にとって予想外の言葉だったようで、驚いたように眼を見開いた。だが、次の瞬間には、おもしろそうなヤツだとでもいうような表情を、その灰色の瞳にひらめかせていた。
「ほう……地下牢に押し込められた身だというのに、なかなか度胸があるな。まだ若そうだが……」
興味を覚えたのか、隊長はわざわざ階段を下りてきた。手にした弓を地面に突いて仁王立ちになると、誇り高くその名を名乗る。
「オレは、名をベルス・トウヒードという。見ての通りドワーフ族だが、ローウェル王に仕えて、爵は少上造。射声校尉の官にある」
「……ドワーフ族……射声校尉……」
隊長――ベルスの発した単語の意味を理解しようと、聞いたものを口の中で繰り返した北斗に向かって、彼は言葉を続けた。
「まあ、今夜はオレも眠い。すぐに取り調べをしたりはせんから、ゆっくり……できるかどうかはわからんが、とにかく休め」
意外にも優し気な口調でそう言うと、ベルスは北斗に背を向けた。彼が階段を登り終えたその時、バタンという音が響く。おそらくは、降り口の蓋が閉じられたのだろう。
はあああ~~~っ。
一人、地下牢に取り残された北斗は深く長く息を吐き出した。ようやく、緊張から解放されて気が抜けたのだ。
牢の中は、一筋の灯火が照らし出している。なんのものかわからないが、灯心が浸っているのは獣の脂だろう。立ち込めるにおいに気分が悪くなりそうだった。
ジメジメとしていて薄汚れてはいるが、幸い、牢の中には人骨が散乱していたり、ネズミが走り回っていたりするようなことはない。
立っていても仕方がないので、比較的乾いていそうな一角を選んで、北斗は石の床に腰を下ろした。傍らには、飲み水なのか、用便を流すためのものなのか、水の張られた甕が一つ置かれている。
北斗が今、着ているのは、かつて沖縄に修学旅行で行った時、土産で買ってきた「かりゆしウェア」だ。履いているズボンこそ長ズボンだったが、造りは薄い。
この地も、季節は夏なのだろう。
夜とはいえ、外では寒さを感じることはなかったが、さすがに地下牢の中はひんやりとしている。お尻の下の石畳からも、薄いズボンを通して冷気が体に伝わってきた。
ブルっと体を震わせた北斗は、いわゆる体育座りのような格好になると、シャツの中で体を抱えた。ぎゅっと肩を掴んでいると、少しは寒さが和らいだ気がする。
鉄格子の中ではあったが、ようやく一人の静かな時間を持つことができた。北斗は努めて心を落ち着かせると、考えを巡らせ始めた。
なぜ、自分は森の中にいたのか。そして今夜、自分の身に起こった不思議なできごとの数々。
北斗が今いるこの地は、明らかに日本、いや、地球ですらない。三つの月、見知らぬ植物。ベルスは魔術や魔法があると言った。そして彼は、人間ではなくドワーフ族だとも。
頭が混乱して、おかしくなりそうだ。
もっとも、北斗が一番混乱していたのは、ベルスの顔に髭もなければ弓を手にしていることだったが。ドワーフといえば、髭もじゃに武器は斧や鎚鉾が定番ではないのか。
まあ、珍妙なドワーフのことはともかく、これはおのれの身に降りかかった、まぎれもない現実である。
その理由や原因を探ろうと、北斗はあらためて記憶を手繰った。
◇◇◇
「――!」
「――北斗くん!」
「――北斗くん、起きて!」
どこかなつかしい響きのする声に、何度も名前を呼ばれて、北斗は眠りから覚めた。
「……ん……母さん……?」
まだ寝ぼけつつも、薄目を開けて、そう声を上げたその瞬間。
バシッ!
「痛っ!!」
何かに体を叩かれて、北斗は悲鳴を上げた。
それまで寝ていたキャンプチェアから跳ね起きると、傍らに立っていたのは、金に染めた髪をショートカットにした若い女性だった。エプロンをまとい、手には料理に使うお玉を持っている。
「誰が、あなたのお母さんよっ!」
怒ったように叫ぶと、彼女は手にしたお玉で北斗のことをまたバシバシと叩いた。
「痛い、痛いって!ゴメン、斎藤さん。寝ぼけてた……」
情けない声を上げつつ、北斗はあわてて両手を合わせ、彼女に謝った。
「まったく……」
ようやくお玉を下ろすと、その手を腰にあててむくれた女性は斎藤英里沙という。北斗の、大学の同級生だった。
彼女は、呆れたようにため息をついた。
「まったく、北斗くんって本当に『残念なイケメン』よね。マザコンで歴史オタクじゃなけりゃ、もっとモテてもおかしくないのに」
もったいない、という感じで、英里沙はお玉で口元を隠しつつ笑った。もう怒ってはいないようだが、今度は北斗の方がむくれる番だった。
「自分じゃ、マザコンのつもりはないのになあ……」
その答えに、英里沙は目を丸くした。再び大きなため息をつく。
「呆れたぁ。自覚もないんじゃ、つける薬がないわね……」
同級生の間では、北斗はマザコンとして有名だった。
それが明らかになったのは、一年とちょっと前。北斗が大学に入学してすぐに開かれた新入生歓迎コンパでのことである。
北斗は、誰の目から見ても美男子だった。
身長は百八十センチあり、肌は白く、モデルのように手足が長い。少し長めに整えられた髪は漆を塗ったように艶やかだ。眼だけは鷹のように鋭く、どこか生意気そうに輝いていたが、同じ一年生ながら、そのたたずまいは同級生の誰よりも大人びていた。
なので、コンパが始まるやいなや、北斗は女の子たちに囲まれてしまったのである。
グイグイと来る彼女たちにあれやこれや尋ねられて、彼が歴史オタクであることはすぐにバレてしまったのだが、致命的だったのは「どんな女の子がタイプなの?」という質問だった。
尋ねられて、北斗が見せたのはスマホの待ち受け画面である。
「うわー、すっごい美人!」
「えっ、ひょっとして、彼女?」
「でも、なんで、鎧を着て馬に乗っているの?」
画面をのぞき込むなり感想や質問を口にした彼女たちに向かって、北斗が答えたのは、こうだった。
「これ、『相馬野馬追』に出た時の、うちの母さん。オレ、甲冑の似合う女武者が好きなんだ」
この瞬間、北斗には、燦然と輝く「歴史オタクをこじらせたマザコン」のレッテルが貼られたのである。
その北斗に向かって、英里沙は言葉を続けた。
上記の一件があって以来、他の同級生女子は北斗から一歩距離を置いて接しているフシがあるが、彼女は、北斗のマザコンを知っても引くことはなかった。むしろ、ちょいちょいとからかいに来るほどである。それはそれで困ったものだが。
「まあ、歴史オタクなのは別にいいと思うのよ。うちの学科じゃ、みんな、歴史や地理が好きだしね。そういえば、真田さんなんて『幕末の外国人オタク』とかって自分で言っていたわ」
それはなかなかにマニアックなオタ趣味だが、「私だって仏像オタクだし」と英里沙は明るく笑った。二人が所属しているのは、教育学部の社会科教育専攻である。
「でも、マザコンの方はなんとかしないと。『甲冑の似合う女武者』なんて、令和日本にいるわけがないでしょ。こじらせていると、一生、彼女できないよ」
お玉を突き付けつつ断言した英里沙に、北斗は閉口した。
頭を金髪にしていることからも想像がつくように、英里沙はちょっとヤンキーが入っている。だからか、ズケズケとものを言う癖はあるが、気性はさっぱりとしていた。
男女ともに分け隔てなく接し、面倒見がよい。見た目のイメージと異なり家事全般が得意なので、同級生の一人暮らし男子は、英里沙のアパートに集まって手料理をご馳走になることも多かった。
彼女に言わせると、「あたし、野良ネコ見るとほっとけないのよね」。どうせロクなものを食べていないだろうというわけである。
そして北斗もまた、そんな野良ネコの一人であった。
一生、結婚できないよ、か…。
北斗は、かつてその母親に言われた、似たような言葉を思い出していた。彼の母は、実家にいると甘えてばかりで、家の手伝いをまったくしない息子のことを心配したのである。男だって、料理、洗濯、掃除。昭和じゃないんだから、多少はできないと、お嫁さんに来てもらえなくなるよ……。
そう口を酸っぱくして言っていた、母親の姿をありありと目蓋の裏に浮かべた北斗だったが、目の前の英里沙も、いつのまにか同じような話をしていることに気がついた。
彼女は、女子に夕飯の支度を任せっぱなしで、寝たり遊びに行ったりしてしまった男子にだんだん腹が立ってきたらしい。
手にしたお玉を振り回してしゃべっている英里沙の顔が、北斗には、本当の母親のように見えてきてしまった。
実際、北斗の母と英里沙とは顔立ちがよく似ている。髪を金に染めてショートカットにしているところまで一緒――北斗の母も、ちょいヤンなのだ――である。大学に入学して新入生オリエンテーションを受けた北斗は、隣に座った英里沙の顔に、一瞬とはいえ「なんでここに母さんが!?」と混乱してしまったほどだった。もちろん、年齢が違うので完全に一緒ではないが、「親子のように似ている」と言ってよいだろう。
そして北斗はそれ以来、どうにも英里沙のことが気になってしょうがないのである。
確かに彼女は美人だ。そして気立てもよいことは、同級生なら誰でも知っている。女武者でこそないが、北斗は言うほどそれを求めてはいなかった。必要条件ではなく十分条件というところで、ちなみに英里沙は、馬ではなくバイクになら乗っている。
だが、北斗が彼女に惹かれている本当の理由は、果たしてそれなのだろうか。
オレはマザコンじゃない!と心の中で否定しつつ、北斗はあわてて話題を変えた。
「ところで斎藤さん!なんか用!?」
突然、強い勢いで尋ねてきた北斗に彼女はちょっとびっくりしていたが、「ああ、そうだった!」と、ようやくお玉を持つ手を止めた。
「もうすぐ夕飯のカレーができるんだけど、飯原くんや藤塚くんたちが遊びに行ったまま戻ってこないんだ。北斗くん、ゴメン、探しに行ってくれない?」
英里沙の話によると、北斗がキャンプチェアで昼寝をしている間のこと。近くにある洞窟を探検してくると言って出かけた同級生数人が、もう三時間近くも経つのに戻ってきていないのだという。
英里沙は、「そんなに深い穴じゃないんだけど」と言いつつ、心配そうな表情だった。洞窟のことは彼女が教えたのだそうで、責任を感じているのだろう。
「わかった。とにかく、ちょっと見てくるよ」
もちろん同級生のことは心配だが、それ以上に、彼はこの顔に弱いのだ。日ごろから飯を食わせてもらっていた恩もあるので、彼女が困っているとなれば力になってやりたい。
北斗はうなずくと、スマホを取り出した。マップアプリを起動させ、目指す洞窟の場所を英里沙に確認する。
最後にスマホの電池残量をチェックすると、北斗は、やや西に傾いたがまだまだ高い真夏の日差しの下を歩き出した。
そのとき北斗は、まだ。
「もう夕飯だってよ。帰ろうぜ」と、同級生たちに、ただそれだけを言えば終わることだと考えていたのである。
◇◇◇
なだらかに伸びる道をゆっくりと歩いていく。
息が切れるほどの勾配はないが、真夏なだけに汗は止まらない。首にかけたタオルで額をぬぐうと、後ろから吹いてきた一陣の風が、北斗をなでて駆け抜けていった。
周囲に広がるのは特徴的な畑である。中心に打たれた杭につながれる牛が、円を描くようにして耕したり、雑草を食べたりして作られた「円畑」と呼ばれるものだ。それが無数に点在している。
畑をぐるりと囲む畔には石垣が築かれているが、それらは皆、溶岩でできていた。
北斗が今、歩いているこの大地。
坂とも呼べないほどの傾斜だが、なんと火山の一部だった。世界的に見ても特異な、ごくごく平坦な火山で「富江火山」と呼ばれている。
標高わずか八十四メートルの、丘と言った方が正確な只狩山がその中心で、北斗はそこに向かって歩いているのだった。
風の吹いてきた方を振り返ると、灌木の間を縫って、鮮やかなブルーに輝く海がちらりと見えた。
ここは、長崎県。五島列島の福江島である。
栃木県の大学に通う北斗が、なぜここにいるのかというのは単純な話で、夏休みだからである。この島出身の英里沙に、里帰りするから同級生皆で遊びに来ないかと誘われたのだった。
ちなみに北斗の大学には、こうした遠方の出身者が意外に多い。彼らに言わせると、「東京テレビジョンが見られる一番イナカの国立大学だから」。直接、東京や横浜のような大都会に出るのは怖いが、栃木ならなごむというワケである。
お城を見るのが好きな北斗はもともと、この島にある「福江城跡」にいつか行きたいと思っていたので、英里沙に誘われると二つ返事で承諾した。福江城は、黒船の来航に備えて幕末に築かれ、明治維新とともにわずか九年の命で解体された、日本最後の城郭として著名なのである。
北斗たち一行が島に着いたのは、その日の朝のことだった。
前夜、博多から夜行のフェリーに乗ったのだが、あいにくと風が強く、海は荒れていた。すっかり船酔いしてしまった北斗は、城を見に行く元気もなく、予約していたコテージ村に到着するなり、そのままキャンプチェアに倒れこんでしまったのである。
しかし同級生の一部は先に回復したようで、英里沙に教えられて、地元の人間しか知らない秘密の洞窟を見に行ったのだそうだ。
コテージ村からその洞窟までは、徒歩でおよそ三十分。
スマホのマップアプリと、目印である巨大なアコウの木のおかげで迷わずにたどり着くことができた北斗は、木の根元の茂みをかき分けて近づいた。足元の雑草はなぎ倒されていて、確かについ最近、誰かが踏み入った形跡がある。
遠目ではわからなかったが、近くに寄ってみると、木の根元は大きく裂けて洞のようになっていた。アコウの木からは、気根と呼ばれる触手状の根っこが無数に垂れ下がっている。大きなアリが列をなして、それを上り下りしていた。
洞の中を覗き込むと、その下は溶岩の大地だ。気根の隙間から、英里沙が言った通り、洞窟がぱっくりと口を開けているのが見えた。
富江火山周辺には、こうした「溶岩トンネル」と呼ばれる洞窟が点在している。火山活動によって流れ出した溶岩の表面が固まり、内部の高温部分だけが流れ去って、後に空洞が残されたものだ。
有名なのは、長崎県の天然記念物に指定されている「井坑」である。
北斗は茂みをかき分けて、慎重に洞窟の入口に近づいた。溶岩でできているだけあって、足元の岩はギザギザだ。転べば一瞬で傷だらけになるだろう。
暗がりの奥に向かって、北斗は大声で呼ばわった。
「おーい!飯原ーっ、藤塚ーっ!いるかーっ!?」
反響が消え去ってからも、しばらく耳を澄ませてみたが、返事は聞こえない。
もっと中まで覗き込もうと、ポケットからスマホを取り出して、ライトの明かりを洞窟の奥に向けたその時。
「うわっ!」
身を乗り出した足元が、突然。
ガラガラガラと、大きな音を立てて崩れた。
「うわああーーっっ!!」
手にしたスマホも放り出してしまった北斗は、底も見えない暗闇に向かって落ちていった。
◇◇◇
それが、北斗が覚えている、この地に来る前の最後の記憶である。
「う~ん……」
北斗は体育座りのまま、地下牢の天井を見上げて唸った。
彼もまた、令和日本の一般的な大学生である。好きなジャンルはもちろん歴史モノだが、アニメやマンガを見たり読んだりするのも大好きだった。当然、令和日本で一大ブームとなっている、異世界転生・転移やタイムリープをテーマにした作品にも複数、親しんでいる。
「やっぱり、異世界転移……だよなあ」
夜空に浮かぶ三つの月。日本には生息していない植物。ドワーフ族に魔術・魔法。板金鎧や鎖鎧をまとった兵士たち。
どう考えても、現代の日本、そして地球ではあり得ない。ここは、中世ヨーロッパ風のファンタジー世界であるとしか思えなかった。
単純に推測するなら、五島で落ちた洞窟がその入口だったということだろう。まさかまさかではあるが、それしか思い当たるフシがない。深い溶岩の穴に落ちたはずなのに、どこも怪我していないことだけは幸いだったが。
「そういえば、木の洞を通って異世界に行く的な話を読んだことがあったな。『捜神記』だっけ、『聊斎志異』だったっけ……」
目蓋を閉じて考えてみたが、どうしても思い出せない。
いずれにせよ、教育学部で歴史オタクの学生が異世界転移の仕組みや原因を考えてみたところで、わかるはずはなさそうだ。
切り替えることにして頭を一つ振った北斗は、次に、この世界に来てから見聞きした物事について考えてみることにした。
森の中をパトロールしていたらしいベルスと兵士たち。森の向こうに連なるかがり火と炊事の煙。城門の衛兵は、「カルガディア軍が城を包囲して一か月」などと言っていた。
つまり、ベルスたちの国――彼はローウェル王国と言った――とカルガディアとは戦争状態にあり、この城は敵の包囲下にある。
そして北斗は、そのカルガディアの密偵ではないかと疑われているのだ。確かに、向こう側は敵陣という夜の森に一人、見知らぬ男がいればそう見なされても仕方がない。
「まずは、オレが密偵じゃないってことを理解してもらわないと、どうしようもないよなあ」
うんうんと、北斗はうなずいた。それにつれて、灯火が作り出した影がゆらゆらと揺らめく。理解してもらえなければ――それは、下手すれば彼自身の命に関わることなのだ。
だが、どうやって、密偵じゃないことを証明するのか。
ピタッと動きを止めて、北斗は途方にくれた。それが問題なのである。
異世界から来ただなんて言っても、とうてい信じてはもらえないだろう。異世界の物品、例えばスマホでもあれば別だが、洞窟に落ちた時に放り出してしまったはずだ。ポケットの中をまさぐってみても、やっぱり、ない。
まあ、スマホだって、魔法の道具か何かと言われればそれまでか。
とも思ったが、ベルスは魔力を感知する魔術があると言っていた。その魔術をかければスマホが魔力で動いているのではないことがはっきりするわけで、北斗は今になって、着の身着のままでコテージ村を出てきてしまったことを後悔した。
「う~ん……」
困った、と考えあぐねた北斗は、薄汚れた石畳であることも忘れて、地下牢の床にごろんと寝転がった。
とたんに、強烈な睡魔が北斗を襲ってきた。森の中で目覚めてから、信じられないような出来事の連続で、さすがに身も心もくたくたになっている。
これ以上、物事を考える気力が湧かない。
「まあ、とにかく明日だ、明日。なるようになるさ」
幸い、取り調べをするベルスは話のわかる男のようだ。おとなしくさえしていれば、無碍に危害を加えられるようなことはないだろう。
腹を決めた北斗は、とにかく心身を休めようと、腕を枕にして眼を閉じた。
しかし、次の瞬間。
あることに気づいた北斗は、ガバッと、飛び跳ねるようにして起き上がった。
「誰か!誰か来てくれ!!」
ガシッと鉄格子をつかむと、ガンガン鳴らしながら大声で番兵を呼んだのである。




