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とどかなくても背伸びする/300文字
「お姉さんのせいで、あたまがとろけました」
匂いが離れなくなってしまうというのに、まだ電車は来てくれません。
見てくる人がいるくらい泣いているお姉さんがわたしを好きなのは知ってます。でもそれで服が濡れるのは誰のせいだと思ってるんですか。
そう思ってたからか駅はうるさくなって、電車が来てしまった。
手が、胸が、髪が、匂いが離れて。
耳が赤くて冷たそうだった。
だからせめて。
「お姉さん」
急いで寄りました、かかとを上げました。
手がとどきませんでした、それでもお姉さんの声を吸って、飲みこみました。
「次会ったら、綺麗な声も耳も何もかもあげます。耳を暖められなかった代わりにです」
私が行くまで、心を空かせててください。




