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ミスターとエーアイ ~異世界放浪譚~  作者: 三鷹
江戸国編

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27/29

026:通過儀礼

 天空パレス経由で西盾拠点一階の西側前へ移動。

 下階から西街区に入るため、ここから進む。


 背後には、拠点内とその周囲に兵士の姿。

 兵士からは私を認識できない。

 エーアイが外観認識遮断を掛けているからだ。

 だが長時間の外観認識遮断は避けたい。


 私は地下道を走った。

 上階と同様に、地下道が暗くなってきた。

 だが、まだ見える。

 周囲が見えなくなる暗さまで、私は走った。


「この辺りで良いか」


 私は足を止めた。


「ここまで来れば、兵士からは見えないだろう。問題なければ、外観認識遮断を解除してくれ」

《問題ありません。外観認識遮断を解除します》


 三分間待機。

 暗闇に目が慣れてきた。

 前回の巨大ハエの件もある。

 地下道の中央ではなく、右壁に沿って歩く。


 静かな地下道に断続的な足音が聞こえてきた。

 音の発生源を目で追うが動きが早い。


 一気に攻撃されたら不利だ。


 私は威嚇を兼ね、光を放射する。

 相手はビクッと驚いて一瞬固まる。

 その直後、私の左側をすり抜け逃げていく。

 正体は、二メートル級の巨大ネズミだった。


 その後も何度か巨大ネズミと遭遇する。

 あるものは、私をすり抜け背後へ逃げる。

 あるものは、私の進行方向へ逃げる。

 駆除したところで死臭に群がる数を増やすだけ。

 襲ってこないのであれば、面倒なことはしない。


 上階同様、左へ直角に曲がる角が見えてきた。

 ここで、座標ビューアが異常を察知した。

 角を左折した先に、“種別不明”が十八体。


 私はエーアイに尋ねた。


「種別不明とは何だ?」

《未定義の種別です》


「マッスルに化けた生命体か?」

《はい。種別名を決めることを推奨します》


「面倒だな……形態変化体でいい」

《座標ビューア種別名:形態変化体。登録完了》


 彼ら十八体の陣形は手前から五体、六体、七体の三段構え。

 位置は角から西街区の門の中間地点。

 距離にして、角から約五十メートル先。


 相手は、ただの門番か?

 それにしては、数が多すぎる。


 私の位置から曲がり角までの間、罠や仕掛けがあるようには見えない。

 だが、念のため、私はエーアイに依頼する。


「罠があれば、教えてくれ」

《確認済みです。ミスターには問題ありません》


 エーアイの言葉が、妙に引っ掛かる。

 何かしらの意図がある言い方だ。

 だが、理由を訊くのは後回しだ。

 私はゆっくりと歩を進め、曲がり角へ近づく。


 曲がり角の直前まで距離を詰めた。

 ここで一歩踏み出せば、お互い目を合わせることになる。

 相手は動かない。

 耳を澄ましても、声ひとつ聞こえない。


 十秒待つ。


 私は一歩踏み出しながら、左を正面に見据える。


 十八体は半透明ではないゴースト。

 色が濃い、液状のゴーストのように見える。


 相手は私を認識している。

 だが攻撃をしてこない。


 私は相手への視線を維持したまま、左壁寄りから中央へ移動した。


 そのまま三秒待つ。

 相手も無言のままだ。


 私は相手との距離、約十メートルまで、ゆっくり詰める。


 再び三秒待つ。


 すると、一斉に相手の形状が変化した。

 人型の輪郭が作られ、徐々に細部が埋まっていく。

 輪郭が作られた時点で、誰を模倣するのか、すぐ分かった。


 私は、その様子を興味深く観察している。


 十八体の偽マッスルを見て、私は拍手した。

 私を歓迎するための催しと解釈した。


 そこで、エーアイが口を挟む。


《歓迎ではありません。彼らなりの威嚇です》


 その言葉を聞いて、私は拍手を止めた。

 威嚇に対して拍手で応対するのは、挑発や侮辱にあたる。


 だが、相手全員、笑顔になった。

 十八体の偽マッスルの不気味さが増した。


 ここでようやく、先頭五体の中央にいる偽マッスルが口を開いた。


「オレらの英雄を賛美してくれて、ありがとう」


 挑発や侮辱ではなく、賛美と解釈されたようだ。


 偽マッスルは話を続ける。


「オマエは、体調はどうだ?」

「絶好調だ」

「よし。オマエは合格だ!」


 他、十七体の偽マッスルから歓声が上がった。


「ようこそ。江戸西街区へ」


 偽マッスルたちは五十メートル先の大門へ走る。

 閉ざされた大門を、偽マッスルたちが開く。


 私はエーアイに訊く。


「話の筋が見えないが、理解できるか?」

《はい。後ほど説明します。今は楽しみましょう》


 私は大門に近づき、門の文字を見る。


[ 江戸西街区 北下門 ]


 偽マッスルたちが私を取り囲む。

 全員笑顔で、掌を上に向け、両腕を上下させる。


(胴上げのサインか)


 私は両手を左右に広げ、丁字型になる。

 偽マッスルたちに胴上げされながら、私は西街区の門を通過した。


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