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ミスターとエーアイ ~異世界放浪譚~  作者: 三鷹
江戸国編

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22/29

021:護街隊のアジト

 私の位置は、店から十メートルほど離れている。


 三分経過。


 男女の客が短剣の店から出てきた。

 私を見た瞬間、二人は固まる。

 二人は目配せし、私へ深く頭を下げた。


 女は無言で南東エリアへ走っていく。

 階段とは別の方向だ。


 男は謝罪の言葉を口にした。

 ひと呼吸した後、男は話を続ける。


「我々のアジトへご案内します」


 私は男の提案を受け入れた。


 男の後をついていくと、南東エリアに入った。

 女が走り去った方向と同じだ。

 南東エリアは飲食店や倉庫が点在していた。

 建物の大きさは、大小さまざまだ。


「こちらになります」


 ひとつの倉庫の中に案内された。


 倉庫の中は折りたたみ式の椅子と机が、壁際に整然と寄せられている。

 物は少なく、余計な装飾はない。

 必要最低限の会議室といった様相だ。


 車椅子に座る男を、店から走り去った女が押し、私の前へ近づいてくる。


 男の背筋はまっすぐで、視線は鋭い。

 車椅子に座る男が、ゆっくりと口を開いた。

 低く落ち着いた声が、倉庫に響く。


「ご足労いただき感謝する」


 その言葉に合わせるように、女は車椅子を止めた。


「我々は護街隊。私は、この隊を束ねる責任者のアカバネだ」


 アカバネは静かに頭を下げた。


「まずはお詫びを申し上げる」


 一拍置いて、アカバネはゆっくりと顔を上げ、私を見据えた。


「我々は君を敵と誤認し襲撃した。完全に我々の落ち度だ。深く反省している」


 私は詫びを受けに来たわけではない。

 情報を得るためにここに来た。

 だが、ひとつだけ懸念が残る。

 私はアカバネに訊いた。


「一般人の安全を考慮しないのか?」


 アカバネは即座に返答した。


「それは誤解があるようだ」


 傍観者に紛れて、傍観者を守っていたこと。

 そして、あえて忍者の服装にしたのも意味がある、とアカバネは言う。


 私は忍者服にした理由について説明を求めた。

 アカバネは即座に答える。


「傍観者に無用な恐怖感を与えないためだ。だが、それ以上に重要なことがある。それは、敵に対する防御に適した服装だからだ。完全ではないが、ある程度の効果がある」


 私は敵について尋ねた。

 すると、アカバネは即答した。


「西街区の住民だ」


 私はこの回答をもって、質問をやめた。

 これ以上の質問は、相手から私に対する質問にも答えざるを得なくなる。

 相手に協力を求められる可能性さえある。


「すべて水に流す」


 この言葉を最後に、私はこの場を後にした。


◇◇◇


 下階の探索を終え、下階の西側出口にいる。

 この地下道が、どこまで進めるか不明だ。

 今回は、ここを探索する。


 座標ビューアによると、五百メートルほど先に武装した三人がいる。

 市街地の地下道では兵士だったが、下階は今のところ不明だ。


 ここで座標ビューアの表示名が偽忍者のままだったことに気づく。

 偽忍者から護街隊へと、表示名を変更した。


《座標ビューア表示名:護街隊。変更完了》


 三百メートルほど進む。

 武装した三人が見えてきたと同時に、柑橘系のような匂いがしてきた。


「この匂いは危険か?」

《問題ありません》


 さらに百メートルほど進む。

 三人はグレーの作業服で、マスクをせずに液体を散布している。

 武器を携帯しているが、誰かを襲う気配はない。


 私はさらに近づく。

 作業場の十メートル手前で三人に声を掛けた。


「通っても構わないか?」


 一番背の高い男が答えた。


「問題ありません。ただ、この先は危険ですよ」


 私は何のための作業が気になった。

 私が尋ねと、男は右の口角だけを少し上げた。

 男はやや大きめの声と早口で、私に言葉を返す。


「あの連中を近づかせないための対策です。この匂いを嫌いますから」


 この街の常識からはズレているのは承知の上で、私はストレートに訊いた。

 なぜなら、無用なリスクは避けたいからだ。


「あの連中とは?」


 もう一人の髭を生やした男が答えた。


「おいおい、アンタここ初めてか? 簡単にいえば、害虫とかネズミとかだな」


 三人目の茶色の帽子を被った男が会話に加わる。


「人間みたいな動物もいるって噂だぜ」


 髭の男が否定する。


「それはデマだな」


 背の高い男が、冷たい声で会話を遮る。


「無駄話しないで、仕事してください」


 日本にいた頃、虫や小型哺乳類が柑橘系の匂いを嫌うと聞いたことがある。

 実際に試したことがないので、わからないが。


 私は三人に礼を告げ、先へ進む。


◇◇◇


 先へ進みながら、エーアイに尋ねた。


「未知の敵は座標ビューアに表示されるのか?」

《ミスターの記憶情報に依存します。初見では、表示されない可能性が高いです》


 座標ビューアは便利だが、依存しすぎるのは禁物だ。


「では一旦戻ろう。市街地の中央広場へ行きたい。転移点は任せる」

《了解しました、ミスター》


 未知の敵に対し、危険を回避しただけではない。

 私には、別件で気になっていることがあった。

 それは、アクオと自称自警団の位置関係だ。


 アクオは今、中央広場にいる。

 そして罠に嵌めるかのように、数人の自称自警団が動いている。


 一番最悪なのは、アクオが軍のいる検問所の方向に引き金を引くことだ。

 アクオに軍に盾突く意図が皆無だとしてもだ。


 自称自警団の餌食になるのは容認できない。

 私の杞憂ならば、それでいい。

 たとえ、アクオに笑われようとも。


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