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ミスターとエーアイ ~異世界放浪物語~  作者: 三鷹
江戸北街区編

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20/21

019:サブロ

 自警団長が叫ぶ。


「構え!」


 指示通り、自警団は一斉に態勢を固める。

 自警団長は、満足気な笑みを浮かべている。

 傍観者の誰かが、大きな声で叫ぶ。


「散弾銃だ、みんな逃げろ!」


 群衆の空気が一変した。

 広場のオブジェの陰へ身を隠そうとする者。

 ただ立ち尽くして状況を飲み込めない者。

 互いに衝突しながら逃げていく者が入り乱れる。


 叫び声、足音、押し合う気配が渦を巻く。

 場の緊張は限界まで張り詰めていく。


 自警団長は、その混乱を眺めている。

 頬には満足したような笑みが広がっていく。


 私はエーアイに指示を出す。


「これ以上は危険だ。ホログラムを消してくれ」

《了解しました、ミスター》


 再び、自警団長が叫ぶ。


「狙え!」


 その直後、その言葉を発してしまった自警団長の表情から笑みが消えた。

 銃を構えた自警団は、標的である私を見失い混乱している。


 私の最適解は、ここから私が消えること。

 そうすれば、そもそも戦闘は成立しない。


 私は外観認識遮断のまま、自警団の背後にいる。

 だが、今の私では、せいぜい五分が限界だ。


「このまま天空パレス経由で東街区へ頼む」

《了解。最適な場所を計測し転移します》


 ここから先は北街区の問題。

 私には関係ないことだ。


◇◇◇


 天空パレス経由で東街区の地下道に到着した。

 外観認識遮断は、すでに解けている。


 外観認識遮断を初めて実戦で使った。

 先日の戦闘VRの防御鍛錬で会得したばかり。

 通常の攻撃や防御と異なり、負担が大きい。


「私の心身負荷指数は?」

《現在79。無理は非推奨です》


 今回は私が外観認識遮断を発動した。

 だが、連戦が予想される場合、エーアイに任せたほうが良い。


 東街区の軍関連施設に近づいたときのことを思い出す。

 あの時、エーアイが発動する外観認識遮断と隠蔽を経験しておくべきだった。


 座標ビューアを確認する。

 東街区の地下街にはニュートエル、そして副リーダーのサブロもいる。

 ニュートエルとは初対面だ。

 北街区でサブロとは一応面識はある。

 しかし私のことは、覚えていないだろう。


 私は地下街へ歩き出そうとした。

 そのとき、背後から声を掛けられた。


「あっ、来てたんですね」


 タダオだ。以前よりも目の輝きが増していた。


「どうぞ、そのまま、お進みください」


 私はタダオとともに、地下街へ入った。

 すると、ニュートエルの一員と思われる男が近づいてくる。

 タダオを気を利かせて、その男に先手を打つ。


「この方は大丈夫です」


 その男と私は、お互い軽く会釈を交わす。

 何も会話することなく、男は仲間の元へ戻った。


 副リーダーのサブロが一瞬、こっちを見た。

 だが、何も気にしていない素振りをした。

 サブロは私を覚えている、と私は直感した。


 座標ビューアによると、ニュートエルは全員、地下街にいる。

 地下道や中央公園にはいない。

 私はこの現状についてタダオに訊いた。

 タダオは左指で顎先を摘まんだ。


「軍から注意を受けたようです。

中央公園内に軍以外が駐留することを好みません」


 私はエスト広場へ向かっていた。

 タダオもなぜか、同行している。

 ひとりのほうが気が楽だが、断る必要はない。


 歩きながら、タダオ主導の話が続く。

 話題の中心は、やはりニュートエル関連だ。


「彼らの拠点を中央街区から東街区へ移転させたい、と思っています」


 障壁は高そうだ。

 だが、タダオなら軽く達成するに違いない。


◇◇◇


 今日のエスト広場は人が多い。

 ニュートエルが席を独占しているわけではない。

 彼らは、ここに一人もいない。


 私は空いた席で座標ビューアを眺めている。

 北街区の様子を遠くから見ているのだ。


《ところで、自警団の表示名は?》


 私はすっかり忘れていた。


「覆面解体人と覆面抜剣隊は重複可能か?」

《同一人物で複数可能です》

「では、自称自警団で」

《座標ビューア表示名:自称自警団。登録完了》


 自称自警団の三十六人は北街区内に散っている。

 残りの三十八人は射撃訓練所にいる。

 そこが彼らのアジトだとすれば、遠回りして戦闘に備えたことになる。

 軍のいる検問所を、銃口の先に向けないために。


 私はひとつ、違和感に気づいた。

 それは、北街区へ向かっていたはずのアクオの姿が見当たらないこと。

 アクオは北街区の下階にいるかもしれない。


「私の心身負荷指数は?」

《現在52。回復進行中。完全ではありません》


 以前からエーアイに言われていたのだ。

 天空パレスよりも、外でのんびりしたほうが回復が早いと。


「天空パレスと比較して、回復速度の違いは?」

《天空パレスよりも、約十パーセント速いです》


 エスト広場の空いている席が無くなった。


(最後に掃除のオジサンに挨拶してから、北街区へ戻るか)


 私はエスト広場を後にした。


◇◇◇


 地下街に掃除のオジサンの姿が見つからない。

 中央公園のトイレにもいない。


 薬屋の店主なら、何か知っているかもしれない。

 私は薬屋へ向かった。


 薬屋の前に客は二人。

 私もその行列に三人目として加わった。


 店は一人、または一グループずつの入店だ。

 プライバシーを考慮しているのだろう。


 私の番が回ってきた。

 入店後、買い物に来たわけではない旨を伝え、詫びた。

 そして、掃除のオジサンの行方について尋ねた。

 店主はしばらく沈黙し、口を開いた。


「里帰りさ。あと一週間ほどで戻るはずさ。

これ以上のことは、ウチの口からは言えないよ」


 私は一礼して店を出た。


◇◇◇


 人目につかず転移するため、地下街と公園を結ぶ地下道へ向かっていた。

 その途中、サブロと出くわした。

 私は軽く会釈して、その場を過ぎるつもりだったが、サブロが口を開いた。


「お聞きしてもよろしいですか?」


 私は頷いた。


「また北街区へ行かれるのですか?」


 やはり、サブロは私のことを覚えていた。


「その予定だ」


 サブロの表情は穏やかだ。

 だが、何かを模索しているに違いない。

 回りくどい質問が、それを表している。


「なぜ北街区へ行かれるのですか?」


 サブロは市街地の下階を知っているはずだ。

 だが、彼に訊くのは得策ではないと考えた。

 私はシンプルに事実のみを伝えた。


「ただの観光だ。そろそろ、良いか?」

「お手数をおかけしました。ご協力感謝します」


 私はその場を後にした。


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