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ミスターとエーアイ ~異世界放浪物語~  作者: 三鷹
江戸北街区編

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19/21

018:自称自警団

 座標ビューアで下階の外枠を再確認した。


 市街地と同形。

 南側と東側の地下道には下階なし。

 だが、西側には、下階の痕跡あり。


 私は以下の順序で進めていくことにした。


 まずは、西側地下道の下階の範囲を探る。

 ただし、西街区へは入らず。

 次に、下階入口の捜索。


◇◇◇


 市街地と同じ明るさの西側地下道に入る。

 状況を座標ビューアで確認。


 五百メートルほど先に武装三人。

 下階の存在あり。


 そのまま先へ進んだ。


 北街区の地下街は、東街区と比べて明るい。

 ここだけ切り取れば、何が危険なのか分からないだろう。


 三百メートルほど進んだ。


 前方二百メートル先にいる三人は兵士だ。

 兵士の他、背丈が低い柵のようなものも見える。

 ひとまず、行けるところまで行く。


 兵士との距離、三十メートルまで近づいた。

 兵士の脇には、持ち運び可能な小さなバリケード。

 バリケードは日本の工事現場で見かける、トラ模様の柵に似ている。

 三人の兵士と三つのバリケードが横一列、等間隔に並んでいる。

 地下道を完全に塞いでいるわけではない。


 十メートルほどまで近づいたところで、兵士が私に呼びかけた。


「止まりなさい」


 兵士の言葉に威圧も激情もない。

 ただ任務を遂行する者の声だった。


「我々に通行禁止の権限はない。

だが、江戸国としては推奨しない。以上」


 この辺りまで、地下道に沿った下階の確認は済んでいる。

 今の目的は、西街区へ行くことではない。


 私は踵を返した。


◇◇◇


 地下道から戻り、市街地の西側出口前にいる。


 次にやることは、下階入口の捜索だ。

 下階入口の有力候補は三つ。


 中央広場を含めた周辺一帯。

 黒服が立つ店。

 射撃訓練所。


 移動する前に座標ビューアを確認。

 変わったことは特にない。


・アクオが東街区から北街区へ向かっている。

・サブロが北街区から消えた。


 ぐらいだ。


 座標ビューアを注視しながら、中央広場へ向かう。


◇◇◇


 中央広場に到着した。

 途中、黒服が立つ店の前を通ったが、今回は素通りした。


 中央広場の中心に近いオブジェらしき物から順に見ていく。


 しばらく探していると、周囲から私に対する小声が聞こえてきた。


「ねぇ、じーじ。あそこのひと、なにしてんの」

「あの大きい石と、お話してるのかもね」


「あの人、忍者と戦った人だよね」

「またマジックのネタを仕込んでるんだよ。多分」


「あの人、何やってるのかしら?」

「武具の材料でも探してんじゃね?」

「自警団に連絡したほうが良いんじゃない?」

「あいつらだろ。オレ、自警団が嫌いなんだよ。

ほら、お前が噂するから、来ちまったよ」


 紺色の半纏姿で特殊警棒を持った三人が現れた。

 中央の男が、顎を突き出しながら一歩前に出る。


「我々は北街区自警団だ。ここで何をしている」


 私はあえてストレートに返答した。


「下階の入口を探している」


 その男の呼吸が、突然荒くなった。


「な、なにを寝ぼけたことを!

貴様、武具の材料を盗む気だな!」


 その男の顔の赤みが増していく。

 私は自警団の男に訊いた。


「この街に、射撃訓練所はあるか?」


 私の話の途中で、男は突然、右手に持った特殊警棒で殴り掛かってきた。

 隙だれけの大きなモーション。

 自分勝手な感情だけで暴力を振るう典型だ。


 私は左側へ重心を移し、相手の死角となる右脇を左指先で押す。

 男は特殊警棒を落とし、その場に倒れた。


《戦闘不能。生体反応、異常なし》


 自警団の二人は茫然としている。

 私は特殊警棒を拾い、三人に告げた。


「没収する」


 一瞬、自警団の口元が緩んだ。

 二人は倒れた一人を左右から抱え上げ、姿を消した。


◇◇◇


 その後も公園付近を探しているが見つからない。

 怪しい建物はたくさんある。

 だが、下階を探すために、勝手に建物内に入るのは論外だ。


 座標ビューアを見ながら、考えを整理していた。

 すると、また自警団がやってきた。

 特殊警棒を没収された本人も同行している。

 自警団長が話し合いに来たようだ。

 目の前にいる自警団の人数は五人。


 だが、期待した私が甘かった。


 結局は自分たちの虚栄心を満たしたいだけの集団だ。

 住民の安全、安心を守る集団ではない。


「去れ」


 私は一蹴した。

 だが、自警団は帰らない。


 自警団長は団員の一人に耳打ちした。

 自警団の人数が増えていく。

 数台の荷車が到着する。

 座標ビューアに既知の表示名が混ざる。

 最終的に、七十四人まで膨らんだ。


(なるほど、そういうことか)


 座標ビューアを見て、笑いそうになった。

 自警団に、あの六十四人が含まれていたのだ。


 六十四人とは、覆面解体人と覆面抜剣隊の合計人数だ。

 覆面解体人と覆面抜剣隊が座標ビューアに表示されなかった理由。

 そしてここまで自警団の人数が増えた理由が理解できた。


 自警団の背後に位置する軍の検問所からも、この騒動が見えているだろう。

 だが、国家防衛に繋がらない限り、民間の争いに介入しない。


 それを見越して、自警団は動いていた。

 自警団の武器は、特殊警棒から散弾銃に変わった。

 ここで発砲したとしても、背後に撃たない限り、兵士には到達しない。


 何が起こるのかと集まってきた傍観者。

 散弾銃に気がついて、この場から去る傍観者。


 自警団にとって、傍観者など眼中にない。


 自警団は住民の安全を掲げている。

 だが、この場に安全は存在しない。


 自警団が守っているものは住民ではない。

 自警団の立場だけなのだ。


《戦闘で死者が出る可能性が高いです。

死者が出た場合、完全消去が最適です》


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