足軽サバイバル
死した足軽たちの亡骸を、物色している男がいる。
弔ってやろうなんて気持ちは微塵もない。彼の目的は金目の物を盗むことにあるのだ、剥ぎ取るものを剥ぎ取ったらあとは放置して終わりである。それを咎める者などいない、いるはずもないのだ。なぜなら戦場とは、足軽とはそういうものだからである。
足軽の多くは農民で構成された、急ごしらえの兵隊だ。恩賞なんて期待できない、そのくせ資源である田畑の多くは戦によって荒らされ火を放たれることもある。そんな彼らの生活を、保障してくれる者は誰もいない……だから生きるため、そして武士へのヘイトコントロールのためにもこのような略奪行為は黙認されていた。
刀に鎧、着る物や人そのものさえ。戦を終えた足軽たちは、盗賊も同然だった。死体が身に着けているものを、次から次へと剥ぎ取っていく男は下卑た笑みが浮かんでいる。
だが、戦乱の世とはこういうものだ。誰かと戦わなければ生きることはできない、ならば時には他者を踏みつける覚悟も必要。誰もが生きるために必死、生き残るための究極のサバイバルが日々行われているのだ。
要するに、
「生きるためには四の五の言ってられねぇんだよ! っていうかテメーもとっととやれや!」
あ、すいません。
足軽仲間からそう叱りつけられ、手を止めていた俺は物色を再開する。
正直、目利きに自信はないが奪える物は奪っておいた方が堅実だ。高値がつけば儲け、安くったって少しは生活の足しになる。そうしてせっせと手を動かしているが、同行者は「おら! ちゃっちゃとしろ!」と怒鳴りつけてくる。
ちっ、うるさいなぁ。
あまり騒ぐと他の足軽が来て獲物の奪い合い、そのまま殺し合いに発展することも戦場では珍しくない。年上だから文句は言いづらいが、お前こそ文句ばかり言っていないで静かに手を動かせと言いたくなる。
……あ、いいものを見つけた。俺は「それ」を手にすると、足軽仲間に向かってそいつを振りかざす。
「な……あ……?」
何が起こったかわからない、という顔をする相手に向かってもう一振り。それであっさり息絶えたらしい彼の持ち物を、改めて探りなおす。
戦場では、他者を踏みつける覚悟も必要。例え、命を奪ってでも――こうして、どさくさに紛れて人を殺めてでも生きるためにやらなければいけないこともある。
「ま、念仏の一つぐらいは唱えてやるか」
俺は骸と化した「それ」に南無阿弥陀仏と呟いた。
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