近くの王子様
王国の城下街に住む6歳のリリアーナは、王子様と結婚することを夢みていました。リリアーナはずっと王子様を探しています。
「ねえ、お母様!王子様はあのお城にいるの?あそこに行ったら会えるかしら!」
リリアーナは街の中心にある大きなお城を指さしてお母さんに聞きました。
「そうね、王子様はお城にいるけれど、会いに行っても会わせてはもらえないわ。パレードのときに遠くから見ることは出来るけれど、リリアーナがお話をするのは難しいわね。」
お母さんがそう答えると、リリアーナはとても落ち込んでお母さんにたずねました。
「それじゃあ、私は王子様と結婚できないの?」
リリアーナが今にも泣き出しそうな様子でうつむいていると、お母さんは微笑んでこういいました。
「あのお城にいる王子様は難しいかもしれないけれど、いつかあなただけの王子様があらわれるわよ。」
でも、リリアーナは納得できません。リリアーナはお城に住む王子様にどうしても会って話しがしたくてたまらなくて、王子様に会いに行くことを決めました。
「お母さん!私王子様に会いに行ってくる!夕飯までには戻るから!」
そう言ってリリアーナは、とっておきのピンクの花柄のワンピースに白いポシェットをさげて、お城に向かって家を飛び出しました。けれど、お城に近づいた頃、王子様にどうやって会うのかを考えていなかったことに気が付いてリリアーナは迷ってしまいます。なにもいい案が思いつかず、お城の前をウロウロしていると、向こうから誰かが手を振って近づいてくるのが見えました。
「リリアーナ!何をしているの?」
そう言って近づいて来たのは、同じ学校に通うリアムです。リアムは学校で1番頭が良くて、リリアーナにとても優しくしてくれて、困っている時にはいつも力になってくれる友達で、リリアーナは今回もリアムに力を借りようと思いました。
「あら!リアムこんにちは!今ね、王子様に会いに来たんだけれど、どうしたらこの門を通してもらえるのか全く思いつかなくって困っていたところなの。リアム、何かいい案はないかしら?」
リリアーナがそう伝えるとリアムはしばらく考えて、正直に伝えてみるのがいいよと言いました。リリアーナは、リアムはこの門を通してくれる画期的なアイデアを出してくれると思っていたので、正直に伝えるなんて絶対に失敗することを言ってくる彼に少しびっくりしてしまいます。
「でも、そんな事で通してもらえると思えないわ。どんな手を使っても王子様に会いたいもの。」
リリアーナが不満そうにしていると、リアムは、
「嘘をついたり、無理やり入ったりするのはダメだよ。そんなことをして君が捕まったら大変だ。」
そう言ってリリアーナを止めました。そしてこう続けます。
「それに、僕はリリアーナにそんなことをして王子様の心を手に入れようとして欲しくはないよ。僕はリリアーナは素直でまっすぐなところが素敵だと思っているからね。」
リアムの言葉にリリアーナはハッとしました。王子様と結婚がしたいと思っていたのに、その彼が嫌がるようなことをして会おうとしていることに気が付いたのです。
「私、王子様と結婚したい気持ちが強くて、"王子様"じゃなくて"一人の人としての彼"のことはちっとも考えられていなかったのね。私は、絵本の王子様とお姫様がお互いに想いあっているところに憧れたはずなのに、これじゃあ王子様とは結ばれるはずないわ。」
そう言って落ち込むリリアーナに、リアムはそっと近ずいて言いました。
「そんなことないよ。すぐに間違ってるって気が付いたリリアーナはやっぱり素敵だ。ほら!リリアーナ、僕も協力するから王子様になんとかして会わせてもらおう。」
リアムがリリアーナに手を伸ばすと、
リリアーナは突然立ち上がって、
「お母さんが言っていたことがわかった気がするわ!」
と、目をキラキラさせて言いました。そして、
「私、あのお城に住んでいる王子様と結婚すれば大好きな絵本の結末のように幸せになれると思っていたの。でも、違ったのよ!私にもいつかきっと、お互いに想いあえる人が現れるの!その人が私にとっての王子様なのね!」
と、突然のことでぽかんとするリアムの隣で、リリアーナは楽しそうにはしゃいでいます。
「リアム、ありがとう!私、これからは私だけの王子様を探すことにするわ!」
そう言って、王子様に会いに来たこともすっかり忘れて、リリアーナは嬉しそうに走り出してしまいました。でも、リリアーナは気が付いていません。さっきまで傍に王子様がいたことに。
リリアーナが彼に気が付くのはまたしばらく先の話。




