第2話 残りわずかな数字
休み時間、直哉は机に突っ伏して深く息を吐いた。
教室にいる三十人近いクラスメイト。
全員の頭上に数字が浮かんでいる。
ちらっと視界に入るたび、胸の奥が重くなる。
「おい、直哉!」
背中を叩かれて顔を上げる。そこに立っていたのは、親友の悠斗だった。
明るい笑顔、快活な声。事故に遭う前と何も変わらない。
「よかったよ、マジで。もう戻ってこないんじゃないかって思ってたんだぞ」
「……心配かけたな」
自然と笑みがこぼれた。悠斗の存在は、やっぱり安心する。
だが次の瞬間――視線は彼の頭上へ。
『15204』。
数字は減っていくが、まだ充分な大きさだった。
直哉は安堵しつつも、やりきれない思いに襲われた。
――友人の寿命を、こんなふうに確認してしまう自分。
「おーい、直哉! 生き返った記念に、今度ゲーセンでも行こうぜ」
悠斗の明るさに救われながら、直哉はうなずくしかなかった。
そのとき――。
視界の端で、別の数字が目に飛び込んできた。
『23』。
直哉の心臓が止まりかけた。
何度も瞬きをして確認する。
やっぱり、23。
それは、すぐそこに座っている男子生徒――クラスメイトの和也の頭上に浮かんでいた。
(あと……二十三日……?)
背筋が冷たくなる。
笑い合う教室の中、ひとりだけ、残された時間が桁違いに短い。
視線を逸らしても、数字は消えなかった。
――これはただの数字じゃない。
本当に寿命なのだ。
握りしめた拳が震えた。
直哉の新しい日常は、最初から大きな試練を突きつけてきた。