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第5章  孤独の章 ― 声にならない願い ― 第1話 法則の兆し

 翌朝、直哉は自分の部屋でノートを広げていた。

 兄の数字、母の数字、父の数字……

 書き溜めた記録を、何度も見返している。


 数字の減り方には、どうやら一定の法則があるらしい。

 例えば、兄・和也の場合、体調の良い日や笑顔の時間が長い日ほど、数字の減少が少ない。

 逆に、疲れていたり、落ち込んでいる日は加速して減っている。


 「……なるほど」

 直哉はペンを握りしめ、頭を抱える。

 でも、まだはっきりとは分からない。

 感情や行動と寿命の数字が、どう関係しているのか。


 ノートの片隅に、ふと別の数字が浮かんだ。

 自分の頭上の数字。

 【残り 19,410日】


 兄や家族の数字より、圧倒的に大きい。

 でも、これも日々微妙に変化している。

 ――自分の行動や感情も、数字に影響しているのか?


 直哉は深呼吸をして、机の前に置かれたスマホに手を伸ばした。

 美咲にメッセージを送る。


『ちょっと話したいことがある』


 返事はすぐに来た。


『今から行く』


 直哉は胸の中で小さくつぶやく。

 ――やっと、話せる人ができた。


 その日の放課後、美咲がやってきた。

 直哉はノートを見せながら、これまでに気づいた“数字の法則”を説明する。


「笑ったり、楽しんだりした時は減りが遅くなる」

「逆に、疲れたり悲しんだりすると加速する」


 美咲は真剣な目で聞きながら、時折うなずく。


「じゃあ……兄ちゃんを笑わせたり、元気にさせれば……数字は増えたりするの?」

「わからない。でも、減るスピードは抑えられるかもしれない」


 その瞬間、直哉の心に一筋の光が差し込む。

 守る方法は、絶望の中にも存在する。


 でも、同時に思う。

 ――この力には、まだ見えないルールがある。

 そして、もし間違えば、取り返しのつかないことになる。


 美咲はそっと手を握り、微笑んだ。

「一緒に考えよう。私も力になる」


 直哉は頷いた。

 その瞳には、決意と希望が混ざり合っていた。


 ――兄を守るための戦いは、まだ始まったばかり。

 そして、この法則を解き明かすことが、直哉の宿命になる。

ここからは少し短めで集中連載します。

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