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第10話 決意

 放課後の校庭。

 夕陽が長い影を落とし、風が校舎の壁を揺らしていた。


 直哉は一人、ベンチに座り込む。

 頭の中には、さっき見た数字が何度も浮かんでは消えていく。『10』――和也の寿命。


 教室では、友人たちの笑い声が遠くに響く。

 悠斗や美咲の笑顔が思い浮かぶ。

 彼らは知らない。直哉だけが、この現実を背負っている。


(……もう、我慢できない)


 拳を握りしめる。

 孤独な戦い。誰にも相談できない、理解されない戦い。

 けれど、直哉の胸には、揺るがぬ決意が芽生えていた。


「俺は……絶対、和也を守る」


 その言葉は、風に消されることなく心に刻まれる。

 誰もが笑顔でいられる未来を、直哉は自分の手で守るのだ。


 そのとき、足音が近づいた。

「直哉」


 振り返ると、美咲が立っていた。

 夕陽の光に包まれた彼女の瞳には、心配と優しさが混ざっている。


「……和也くんのこと、私に話して」

 その言葉に、直哉は一瞬息を呑む。

 話したい。すべて打ち明けたい。

 けれど、信じてもらえるだろうか――


「……まだ、無理だ」

 小さく首を振ると、美咲は黙ってうなずいた。

「分かった。でも、私、待ってるから」


 その言葉が、直哉の心に温かな光を灯す。

 孤独でも、戦う決意を支えてくれる存在がいる――そのことが、少しだけ心を軽くした。


 直哉は立ち上がる。

 夕陽に染まる校庭を見渡すと、風が髪を揺らし、遠くのグラウンドからは子どもたちの声が響いてくる。


(俺は、守る。絶対に、誰も傷つけないように――)


 握りしめた拳の先には、まだ見ぬ未来がある。

 その未来を、直哉は自分の力で切り拓くのだ。


 そして、次に数字が減る瞬間にも――

 決して諦めない。

お読みいただきありがとうございます。

第3章はここまでです。次回から第4章『迫り来る現実』です。

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