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第3話 友人たちの笑顔

 昼休み、教室はいつも通りのざわめきに包まれていた。

 窓から差し込む陽光が、教室の隅々まで温かく照らす。

 だが、直哉の視線は教室の中心、和也の周囲に釘付けだった。


 「おい、和也! 次の体育、俺たちチーム一緒な!」

 悠斗の元気な声が響く。

 クラスの男子たちは自然に輪になり、和也を中心に笑い声をあげている。

 まるで和也は、その場の空気の中心にいるかのようだった。


 直哉は少し距離を置き、机の端に座ったまま観察する。

 ――『17』。

 昨日と変わらず、数字は静かに浮かんでいる。


 誰も気づかない。

 和也自身も、悠斗も、美咲も、他のクラスメイトも。

 ただ目の前の現実は、楽しそうな日常だけだ。


 「ナイスシュート!」

 ボールがクラスメイトの足元を転がる。歓声があがる。

 和也の笑顔が弾け、皆も笑う。

 その瞬間、直哉の胸が痛む。

 元気そうに見える和也と、数字の減る現実――そのギャップが、心を押し潰すようだった。


 昼休みが終わりに近づき、教室に静寂が戻る。

 和也は自分の席に戻り、笑顔を少し残しつつもノートを開く。

 その後ろ姿を見つめながら、直哉は小さく息を吐いた。


 (このまま何もしないで、ただ見ているだけでいいのか……)


 放課後。

 直哉は、友人たちが帰る中で、和也の後をそっと追った。

 気づけば、家路へ向かう和也の背中を、自然に追いかけていた。


 途中、公園のベンチに座る和也の母親の姿を見かける。

 和也は母に向かって手を振り、嬉しそうに走り寄った。

 母も笑顔で迎える。

 だが、直哉の目には、ほんの一瞬、母の表情に影が差したのが見えた。


 (やっぱり……何かあるんだ)


 その直後、和也は立ち上がり、母と共に公園を後にする。

 まるで、普通の日常の一コマ。

 だが、直哉にとっては胸を締め付ける光景だった。


 帰り道、直哉は頭の中で何度も繰り返す。

 数字が減るということ、笑顔の背後に潜む現実、家族の影――

 すべてが、ひとつに絡み合って胸を締めつける。


 そして、直哉は心に決めた。

 ――この日常を守るために、俺は何かをしなければ。

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