第12話 新しい日常の始まり
次の日も、和也は元気に教室に現れた。
笑顔は昨日と変わらず、まるで何事もないかのように振る舞う。
しかし直哉の目には、数字が鮮明に見えている。
――『18』。
誰もその意味を知らない。
和也本人も、クラスメイトも、そして先生たちも。
けれど直哉は知っている。
この少年の残り時間が、確実に減っていることを。
休み時間、悠斗と軽く雑談する直哉。
「なんか元気ないな?」と悠斗が笑いながら突っ込む。
直哉は曖昧に笑うだけだった。
その後、放課後。
直哉は和也と少しだけ距離を縮め、校門まで歩く。
話す内容は、勉強や趣味のこと。
数字や寿命のことには触れない。
それでも、直哉の心の中では決意が固まっていた。
(守りたい。たとえ誰も信じなくても、俺が……)
家に帰ると、美咲が何気なく声をかけてくれる。
「直哉、今日も和也と一緒にいたの?」
「うん、少しだけ」
小さな会話の中に、ほっとする時間。
直哉は気づく。
自分だけが知る秘密を抱えつつも、人との絆が日常を支えてくれることを。
数字が減っていく不安と、誰かを想う温かさ。
その両方が、直哉の新しい日常だった。
――この先に待つのは、予測できない日々。
でも、少しずつ歩き出す勇気が、ここにあった。
お読みいただきありがとうございます。
次回から第2章です。




