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第9話 静かな恐怖
翌日、教室。
和也はいつも通りに机に座り、楽しそうにノートを広げていた。
笑い声も弾んでいる。
その姿を見た瞬間、直哉の胸は締めつけられた。
(元気そう……なのに)
頭上に浮かぶ数字は、昨日より確実に減っていた。
――『19』。
日常の光景と、この数字のギャップが、直哉の心を押しつぶす。
休み時間、和也は友人と笑いながら話す。
体調が悪そうに見えるところは一つもない。
直哉の目には、ますます恐怖だけが残った。
(どうすれば……? 話しかけて助ける? でも理由を説明できない……)
誰も、彼の頭上の数字を知ることはない。
和也本人も知らない。
そしてクラスメイトも、まるで普通の少年として接している。
放課後、直哉はまた校門の外まで和也を追った。
背中にはいつもの軽やかさがある。
なのに、心の奥では緊張と不安が増していく。
あの数字――寿命――が、一日一日、確実に減っている。
元気な笑顔の背後で、静かに迫る残り日数。
直哉はその現実に、どう向き合えばいいのか答えを出せずにいた。




