プロローグ ー僕だけに見えるものー
ゆっくり更新していきますので、よろしくお願いします
目を開けた瞬間、白い天井が目に飛び込んできた。
消毒液のツンとした匂いが鼻を突く。ここが病院だと気づくまでに、少し時間がかかった。
(……俺、生きてる?)
たしか、横断歩道を渡っていたときだった。眩しいライト。けたたましいクラクション。
その後の記憶は途切れている。
体を動かそうとしたが、鉛のように重い。右腕には点滴の管が刺さり、心電図のモニターが規則正しい音を刻んでいた。
「よかった、目を覚まされたんですね」
看護師が駆け寄ってくる。
安心させるように微笑んだその人の、頭の上に――奇妙な数字が浮かんでいた。
4216。
なぜか、それは秒ごとに揺らいでいるように見えた。
「え……?」
声が漏れる。だが看護師には気づかれていない。
まるで僕にだけ見えている幻のようだった。
次に入ってきた医師の頭上にも、やはり数字があった。
それは「12487」。
夢を見ているのかと思った。
事故で頭を打ったから幻覚でも見ているんだろう――そう思い込もうとした。
けれど、病室に駆け込んできた母の頭上に浮かぶ数字を見た瞬間、僕は凍りついた。
――120。
それは他の誰よりも短く、残酷に小さな数字だった。
お読みいただきありがとうございました。
次回もプロローグの続きになります。
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