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占い師さんの額の傷

作者: 塩狸

仕事場で妻子持ちの上司に迫られて

人肌恋しい時期でさ

そう

彼氏に振られた後だったから尚更

正直、少し迷ってふらつきかけていた時

出先で入った小さなお店の一角に

若い占い師さんがいたの

女の人ね

スペースを借りてるみたいで

テーブルにはカードが置いてあった

なんとなくでもなく気になって見てたら

目が合って

気付いたら、ふらふら席立ってさ

占い師さんの方に向かって

その上司のことを相談したの

占い師さん

真剣に聞いてくれてから

目の前のカードには1つも触れずに

代わりに

重めにセットしてる前髪上げて、額に付いた2センチ位の傷を見せてくれた


「高校の時ね

私と、男の幼馴染みのWと、友達のFって子がいて

Fは高校から一緒になった友達だったの

3人でよく一緒に居たんだけど

どうやらね

Fは

その幼馴染みのWを好きになってたみたいなの

でもね

本当に幼くて

本当に何も気付かなかった私は

2年に進学して

その幼馴染みのWに告白されて付き合ったのよ

Fは

私たちが付き合ったって知ってからも

今まで通り仲良くしてくれてたの

表向きはね


それからほんの2ヶ月後くらいしてからの放課後

Wとね

校舎の昇降口から出ようとした時に

ちょうど降りだしてきた雨に気付いて

私が

「傘あるよ」

って折り畳み式の傘を開いて

幼馴染みと校舎から出ようした瞬間に

上から降ってきたのよ


「何がですか?」


占い師

「Fちゃん」


Fちゃんは屋上から飛び降りた

雨が降りだして来なかったら

占い師さんが折り畳み傘を持っていなかったら

2人の上にFちゃんが直撃していたと


占い師さんは

「あのね、例え

『知らなかった、気付かなかった』

ってだけでもこうなったりするの

でも

『初めからわかっている災難』

ならいくらでも逃げられることが可能でしょ」


説得力の塊


ちなみに占い師さんのその額の傷は

Fちゃんが頭から地面に落ちた衝撃で飛んできた歯が当たった傷

どうやっても消えないんだって

「それからね、どんなに晴れてる日でも、お守り代わりに

折り畳み傘を手放せなくなっちゃったのよ」

ついでに建物から出る時は必ず足踏みをしてしまうと

では

幼馴染み君はどうなったのか

「男って、弱いのよねぇ……」

と溜め息を吐く占い師さん


そもそも

その幼馴染みWは

占い師さんを好きだったのではなく

「Fの気持ちを知っていた、でも自分はそれに応えられない」

「それをFに伝えたいためだけに占い師さんに告白した」

んだそう

占い師さんは、とばっちりもいいところだった

「今思えば手の1つも繋いで来なかったわ」

そして

「彼はね、寝ると必ずあれを夢に見るんだ、って今も病院を出たり入ったりよ」

たまに見舞いへ行くらしい

しかし最近は

Fの頭が潰れる直前に

ばちりと合った目に

頭が潰れた瞬間

こちらに飛んできた眼球に

呼ばれているように感じているらしい

「そろそろ限界かもね」

と占い師さんは緩くかぶりを振る


「占い師さんは?」

夢に見ないのか

「そうね

夢では見ないな

ただあれ以来

やっぱり精神的なショックなのかしらね

おかしなものが沢山視えるようになって、まともな仕事には就けなくなったわ」


今まで

占い師の人って

自分の持った特技を活かせて仕事に出来るんだからいいなって軽く考えてたけど

少なくともこの占い師さんは

他に仕事の選択肢はなかった


上司の誘いは断った

上司の独断で来期は異動はなったけど

それだけで済んだと思えばいい


それでも

異動になったと占い師さんに溢したら

初めてカード捲られて

「大丈夫、代わりに運気上がるよ」

って

重い前髪のままニッて笑ってくれた

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