第八話.出発
最近、人間って一体なんなんだろう……って考えるようになりました。
ひねくれてるっていうか…、物事が予測できないんですよね。
だからこそ生きてる醍醐味になるんでしょうけど。
「…!!!!何だと!?何があったんだ?!ユエ!!!」
ギンタとジュラはユエに駆け寄った。
「異常気象を調べにここに来ました……。
それでエルメスが「これは魔法の仕業だ」と言って、魔法を解除したんです…。
でもそれを見張ってた『巨大な力の塊』の幹部クラスの刺客が二人現れて…。」
レオンはとぎれとぎれに話した。
「それで…。戦う事になったのか……。しかしよくも幹部クラスを二人も…!!」
ジュラは言葉の途中でユエの瞳を見てハッとした。
「お前……!!!『第一限界』を…解除しやがったな!!!!」
ユエはもう何も喋らなかった。まるで死んでいるかのように…。
「クソ!ギンタ!こいつをすぐに医療部に届けろ!!!
一分一秒でこいつの生死が決まるんだ!!」
ジュラはいつになく焦っていた。それを素早く察知し、
ギンタはコクリと頷くとすぐにユエを抱きかかえて本部に戻った。
「……。間に合ってくれよ…!」
「…ジュラ…さん。」
「…。確か、レオン……だったな。どうした?」
「あいつまで…あいつまで死んだりしないですよね……?」
レオンはうつむきながらジュラに問いかけた。
「…!ああ、大丈夫さ。あいつなら。さ、とりあえず本部に報告に行かなきゃ。」
ジュラはエルメスを背負うと、レオンに手を差し伸べた。
「……はい…。」
レオンはその手を取って立ち上がった。
(……入団から一週間で仲間の死を経験…か……。辛すぎるな…。)
もう、日が沈もうとしていた。
それからユエ達は、休養・状況報告も含めて、一週間の有休期間をもらった。
ユエはギンタのおかげもあって、なんとか一命を取り留めた。
レオンは毎日それを看病しつつ、本部に状況報告をと、とても忙しい日々だった。
「ふむ…。なるほど。紫色の魔方陣か…、やつら何かまたやらかしてくるな…。」
レオンの前に立っていたのは、
最高司令官『桜下天王部』の最高位『フレアディ・リオ・マナカヤ』通称リオルであった。
リオルはジュラの親戚で、年はレオン達とさほど変わらない。
しかし、その実力は『少年団』内にかなう者はいないほど。
また頭脳も明晰で全てにおいて天才であった。
「レオンだったな?ありがとう。仲間の死は辛かっただろう。しっかり休んでくれ。」
「……はい。でも、仇は打ちました。悔いはありません。」
レオンの目には涙が浮かんでいた。その涙は仲間の死による悲しみの象徴だった。
レオンは状況報告を終えると、桜下天王部の階から下りて行った。
途中でギンタとジュラに会い、会議室へと向かった。
「レオン。ユエは目覚めたか?」
ジュラはレオンの瞳をジッと見つめた。その視線にレオンは目をそらして言った。
「ええっと……まだ、目覚めてません。」
「そうか…もうそろそろ目覚めるだろうが、そしたらヤツにこう言ってくれ。」
ジュラが話したのは『特別クラスへの移動』についてだった。
『特別クラス』というのは、上級・中級・初級の全てに股がるクラスで、
それらのレベルにおいて特別だと指摘された『チーム』が所属するクラスだ。
『特別クラス』に所属するチームは桜下天王部や少年七人隊と自由に接触できる。
「…たしかにうれしいですが俺とユエとエルメス3人あってのチームでした…。」
「分かってるが、そのエルメスが殉職してしまったんだ…。
今、少年団は殉職した仲間を悠長に惜しんでいられるほどヒマじゃない。
ただでさえ人員が不足しているんだからな。」
ギンタが後押しした。
「……分かりました。ユエが目覚めたら伝えておきます…………。」
レオンはうつむき気味で会議室を後にした。
「…ジュラさん。俺、あいつらを見てて思った事があるんです。」
「何だ?」
「一週間で仲間の死を経験する事なんて、ある意味絶望です…。
それでもたくましく生きてるあいつらを見て…、
しっかり生きなきゃって思えてきたんです。」
「…お前のチームの…テイルとシドは…顎龍に殺されたんだったな?」
「はい、でも俺はその仇を打ちました。
あいつらも、仇は打ちました。それで終わりにした事がすごいと思います。」
会議室に一瞬の沈黙が走った。
「…そういえば、ユエは何であんなショック状態に陥ってたんですか?」
「ああ、『限界・解除』だよ。」
「『限界・解除』…?」
「王族に伝わる、人体の限界を超える技だ。」
「…!やっぱりユエは王族だったんですか…!!うすうす感じてはいましたが…。
……では!ジュラさんも王族!?」
「いや…俺とあいつは義兄弟だ。同じ母親から生まれてきた。」
「!!」
「あいつの父親は正式な王だ。『グラメディウス・グラン・アルフォリア』。
今ではその王も、『巨大な力の塊』に所属してるがな……。」
「……そうだったんですか。」
「俺はあいつに『限界・解除』を教えた。
俺は『限界・解除』を会得できなかったが、あいつなら出来ると信じてた。」
「……。」
ジュラは会議室の窓から青い空を傍観していた。
「…あの、一つ良いですか?」
「…?」
「『第一限界』って事は、『第二』『第三』とかもあるんですか??」
「ああ、ただ、俺が習ったのは『第一』だけだ。
第一でも体への負担は大きい。
第二は体力を全て使い切る賭け。
第三なんか寿命を10年以上削るモンだ。
第四、これは使ったら1年以内に死ぬ。
そして最後が第五限界、これが出来たのは、王族でも立った一人だ。
伝説の戦士『グラメディウス・ユウガ・アルフォリア』。
伝説の戦士は第五限界を使った事で死んだと言われてる。
一説によれば第五限界を使った者は必ず5時間以内に死に、
死ぬまでの時間、辺りにいる生命体を全滅させるまで暴れ回る。
理性をなくしてしまうとも言うそうだ………。」
これを聞いて、ギンタは背筋がゾクッとするのを感じた。
「あいつなら…伝説の戦士すら超えちまうかもしれないな。」
レオンが医療部に戻ると、ユエの意識は回復していた。
「ユエ!!!」
「レオン!!!!!」
「………っ、良かった…!」
「…そうだ!エルメスは…?」
レオンはただ黙って首を横に振った。
「…そうか。」
「少年団の中央部の東の…『慰霊墓地』に埋葬されてる…。」
「……。」
「…あと、ジュラさんが俺らを『特別クラス』に移動させるって…。」
「ハァ!?何言ってんだあのバカ兄貴!!エルメスが死んですぐだと!?」
「……俺も!そういった……!でも今は人員が足りないから応じろと……!!
……………ユエ、押さえろ。仇は打ったんだ。これ以上憎む者はないんだ。」
「………まだだ…。」
ユエはうつむいて呟いた。
「エルメスの仇は…まだ打ってない!!
これから、新しい出発が始めるんだ!!!!」
ユエは医療部のベッドから立ち上がった。レオンはコクッと頷いた。
これでとりあえず、第一部は終了です。
この調子で行くと、第四部くらいまでは行くかな…?
第二部からは弱冠恋愛も入ってきます。(カテゴリに追加しとかなきゃ っつ)
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