第五話.刺客
くつしたが嫌いで、普段(家に居る時)は履いてません。
今も履いてないのですが、最近、足がやけに冷えやすくなってしまいました。
それでも、やっぱりくつしたは履かないのでした。
「ふー。終わった。」
ユエがため息をついた。
ここはイベリコ山脈。
レイオル山脈と対をなす山脈で、少年団のすぐ北にある。
しかし、その険しさはレイオル山脈と比べ物にならないほどで、
北からは絶対に攻めて来れないことから『北方防御の壁』とよばれている。
ユエ達は任務で、この山脈に築いてある砦の補強作業をしていたのだ。
「しっかし、寒かったな。いまもう4月だぜ?」
レオンがタオルで額を拭いながら言った。
「確かにこの寒さは異常だな。…ん?何か降ってきたよ?」
「何言ってんだ、エルメス。今日は気象予報で降水確率0%って…」
ユエは降ってきたものを手にかざした。
「…これ…雪だ。」
「はぁ?この季節に雪?ほんっとにおかしいぞ?コレ。」
レオンはタオルをバッグにしまった。
「とりあえず作業は終わったし、さっさと帰って状況報告しよう!」
ユエは上着を着て駆け出した。あわてて二人も後を追った。
「…と、いうことがあったんですよ。」
「この季節に雪か…。たしかにそれはおかしいな。」
今日はギンタの傍らにジュラもいた。
「…もしかしたら『巨大な力の塊』が何か仕掛けてきたのかもしれないな。」
ジュラは深く考え込んだ。ギンタも、うんうん、と頷いていた。
「よし!お前らはこの異常気象について調べてくれ!
今の少年団は忙しすぎるからな。俺たちもあとで向かう!」
ジュラは思い立ったように立ち上がった。
「?何が忙しいんですか?」
「お前らが落とした『レイオル山脈』が『巨大な力の塊』に攻撃されているんだ。
俺らはそれに加勢しに行かなきゃいけないんだ。」
「兄貴が行かなきゃならないほど、相手は手強いのか??」
ユエはジュラに問いかけた。
「ああ。相手は『巨大な力の塊』の幹部どもだ。顎龍も数匹連れてる。
並のやつらじゃかなわない。俺の他にもう一人『少年七人隊』が派遣される。」
「!それはカノンじゃないですか?」
レオンはジュラに問いかけた。
「…キミはたしか、カノンの幼なじみだったな。残念ながら、カノンじゃない。」
レオンはそれを聞いて、唇を噛み締めた。ユエはこう言った。
「焦るなよ、レオン。とりあえず今は与えられた任務をこなそうぜ?」
「そうだよ。この異常気象。めちゃめちゃ気になるし…。」
エルメスもはりきっていた。
「…分かった。さっさと終わらせよう。」
ユエ達は再びイベリコ山脈をのぼり、砦へとたどり着いた。
「うわー。なんかさっきよりも強くなってね?」
ユエが頭についた雪を振り払った。
「これ、魔法を使ってる…!!」
エルメスがゴクリと唾を飲んだ。
エルメスは持っていた樫の木を地面に突き刺すと、『解』!!と叫んだ。
すると、雲が晴れ、紫色の層が現れた。
「なっ…!何だァコレェ!??」
レオンは思わず尻餅をついた。
「…何て大きな魔方陣…!」
エルメスは額の汗をぬぐった。
「あーあ、バレちまったよ。」
「!!?」
「こんな簡単にバレちまうとは…『フォール』のヤツもまだまだだな。」
金髪の男が言った。
身長180cmくらいの長身で、後ろで髪をくくっている。
そして、背中にはユエの『大刀カルバトロス』に
負けないくらいの大きさの『大刀』を背負っていた。
「誰だ!!おまえら!!」
ユエが一歩前に出た。
「いや、あの魔術師、『フォール』の弟だ。魔力の質が全く同じだ。」
もう一人の男が言った。
全身黒色のマントに身を潜めていたが、背中のでっぱりから、
持っている武器は『月刀』だと判断できた。
「無視すんなァ!俺の質問に答えろー!!」
ユエがキレていた。
「おい、あいつら、お前の兄の話をしてるみたいだぞ?エルメス。」
レオンがエルメスに耳打ちした。
エルメスは黙っていた。
「ま、いいや。バレたら殺せって、教祖様から言われてたし。」
金髪の男が言った。
「!!!お前ら、『巨大な力の塊』か!!」
とっさに三人は身構えた。
「『お前ら』?俺の名前は『シルク』だ!しっかり覚えておいてくれよ?」
金髪の男が言った。
「…俺は『シュウ』。まぁ覚えてもらわなくても良い。どうせすぐ死ぬし。」
黒マントの男が言った。
「死ぬのはどっちだ?」
レオンがニヤリと笑った。
「おっ!こいつらけなげにも俺らと対等にやる気だぜ?シュウ。」
「…見た所、少年団の中級クラス入りたて…ってとこか。
そんなんで『巨大な力の塊』の幹部二人を相手に戦うと?」
「…こっこいつら幹部クラスか!!」
エルメスが樫の木を手に取った。
「エルメス!ビビるこたぁねえよ!俺らはあの『顎龍』を討伐したんだぜ?」
ユエがエルメスに言った。
「…!!レイオル山脈を落としたヤツらってのはお前らか。」
シルクが自分の大刀に手をつけた。
「お前らじゃねえ!俺の名前は『ユエ』!」
「俺はレオンだ!そしてこいつは『エルメス』!!」
「おーおー悪かったよ。ユエ…君!
さて、七人隊に来られると厄介だし、さっさとやるか!」
「レオン!お前はエルメスと黒マントをやれ!大刀のアイツは俺がやる!!!」
ユエは大刀を構えた。
「…!!気をつけろよ!ユエ…!」
レオンはユエから離れた。
「…なるほど、利口だな。あのユエとかいうガキ。
俺の方がシルクよりも強い事を見抜いていやがったか…。」
シュウはレオンとエルメスを睨みつけた。
「いや、アイツならあのシルクとか言うやつもすぐ倒して、
加勢してくれるだろうぜ?」
レオンは『双刃ギヴァセス』を取り出した。
「言ってくれる…!!」
シュウは月刀を構えた。
「いいねーいいねー!盛り上がってきたねー!」
シルクは大刀を構えた。
「そうだな…久々に本気でやってやる。3分で決着つけてやるよ!!」
ユエがシルクに手招きをした。
歴史に名を残す事件が今、始まろうとしていた…。
えー、どうでしたか?早くも第五話終了です。早いものですね。
でもまだこれで全体の1/3も終わっていません。
どれだけ長くなる事やら…。僕にも分かりません(汗)
僕が書くのを飽きるが早いか、物語が終わるが早いか。
それも僕には分かりません(笑)