第三話.顎龍討伐
ようやく初の戦闘シーンを書けました。
一日一話のペースで書くって、意外としんどい物があるんですよ。
なので、読者のみなさんともっと触れ合いたいと思いつつも、
なかなかそれが出来ません。
というか今の所、読者の方も居ないんですけどね(笑)
というわけで、今回は非常に勝手ながら、後書きは省かせていただきます。
その分は小説で御楽しみください。
「あーあ。面白くねーな。」
レオンが呟いた。今は、初級クラスの休み時間だった。
ユエ達が少年団に合格してから、まだ、3日目のことであった。
「大体、少年団の目的なんて勉強しなくても分かってるし。」
「では、勉強しなくても分かってるレオンに問題です!
少年団の最終目的とは?15字以上20文字以内で答えなさい!」
エルメスがレオンの背後に回って問いかけた。
この二人はどうやらチームを組んだらしい。
それがユエにとっては面白くなかった。
「『宗教集団バラモの解体』だろ?」
「正解!」
『宗教集団バラモ』というのは、開祖『ラ・ベレイズ』と呼ばれる魔術師が広めた
宗教集団の総称である。エルゲリアの大人という大人はバラモに所属している。
その理由は、ベレイズが『子供を捨て、魔法と剣の力を高めれば、
どんな願いも叶う』と説いたからである。
捨てられた子供は、大人達やベレイズに復讐するため、
少年団を設立したというわけで、その設立者が『桜花天王部』に所属している。
俗に言う『最高司令官』達だ。
そして、少年団に対抗し、バラモは『巨大な力の塊』という
戦闘集団組織を作った。
そして『巨大な力の塊』は、ベリモンなどのモンスターを作ったり、
少年団と戦ったりしてくるのだ。
「やっぱさ、初級クラスも飽きてきたし、中級クラスに行こうと思うんだわ。」
レオンのその一言で、再びクラス中が静寂に覆われた。
「うーん。確かに。」
エルメスはそれに同意した。
「よし、いこうぜ!エルメス。こんなとこ、とっとと卒業してーよ。」
レオンはそういうと、エルメスを連れて教室を出た。
その後、教室はその話題でざわついていた。ユエはすぐにギンタの元へ向かった。
「ええ!?そんなことがあったのか?」
ちょうど任務終わりで休憩していたギンタは、それを聞いて大仰天した。
「今回の中級クラスの試験は顎龍の討伐なんだよ…。」
ギンタは頭を抱えた。
「?顎龍って、なんなんですか?」
ユエはその言葉がなぜか引っかかった。
「顎龍ってのは、『巨大な力の塊』の第三拠点、『レイオル山脈』の守護龍さ。」
レイオル山脈は、少年団本部の南にあった。
少年団本部の南には、野原が広がっていて、さらに南下すると森林があるのだ。
森林を超えるとレイオル山脈がある。レイオル山脈を超えると、
『巨大な力の塊』の第二拠点『毒霧の海』があるという。
「実はな…顎龍はかつて俺でさえ苦戦した相手だ。」
ギンタがいつになく真剣な視線なのを、ユエは感じていた。
「運悪く、任務の帰りに会っちまってな。もちろん勝ったが…。」
そのあとのギンタの言葉は濁っていて聞き取れなかった。
「とにかく、顎龍をなめてかかって命をおとした同胞はごまんといる。
はやくそいつらをとめてや……。」
ギンタの話の最中にユエの目は輝いていた。
「………お前、そいつらと一緒に顎龍討伐してやるとか思ってないか?」
ギンタは引きつっていた。
「ん!ギンタさん!俺、いってきます!」
ユエはそういうと、一目散に駆け出した。
「おい!ユエ!お前行くつもりだろ!死ぬぞ!!」
ユエはギンタの忠告をまるっきりシカトして行ってしまった。
「大丈夫さ。あいつなら。」
ギンタの背後にはジュラがいた。
「…ジュラさん…!でも…。」
「大丈夫、あいつには『切り札』がある。」
「『切り札』…ですか?でも、剣魔法で勝てるレベルの相手じゃないですよ?」
「あいつの『切り札』は剣魔法なんかじゃないんだよ。
そんなに不安なら、一緒に見に行くか??俺が一緒なら怖くないだろ?」
「…はい。」
ギンタにはトラウマがあった。
さきほど本人が言ってた通り、ギンタは顎龍に殺されかけた。
決死の思いで顎龍を倒し、なんとか勝った。
しかし、当時ギンタのチームメートだった二人は死んでしまったのだ。
それがトラウマになっていたのである。
場面変わってこちらは、『レイオル山脈』。
顎龍のみが守っているこの山脈は、
未だかつて少年団が落とした事がない土地であった。
後ろに『毒霧の海』が控えていることもあって手が出せなかったのである。
「顎龍…だっけか?どこにいるんだ?」
レオンはエルメスに尋ねた。
「えっと、確かこの山脈の谷だったと思うけど。」
「あれか。あの関所だな?」
「うん。あれだね。」
「よし、一気に行くぞ、エルメス!」
レオンが関所に向かって駆け出した。エルメスもそれに続いた。
「…!!!いやがった!」
レオンが関所を突破すると、目の前に蒼い瞳を持った大きな龍が現れた。
「こいつが…顎龍…!!」
エルメスは思わず退いた。
「エルメス、行くぜ!面白くなってきやがった!」
「よし!レオン!援護する!」
レオンは背中の鞘から二本の剣を取り出した。双刃であった。
「一族に伝わる『双刃ギヴァセス』。この切れ味をとくと見せてやる!」
エルメスは持っていた樫の木で地面に何か描き始めた。魔方陣だった。
「この魔方陣は俺たちに無限の魔力を与えてくれる。
俺を攻撃しても自分に跳ね返るだけだ!」
エルメスはそういうと、呪文を唱え始めた。
『一族に伝わりし双刃よ!今こそその輝きをしめせ!』
レオンの体が光り輝く。
『剣魔法!一族の一撃(ガル=ショット)!!』
レオンの双刃が顎龍の体にバッテン印の傷をつけたように見えた。
が、顎龍には傷一つついていなかった。
それどころか、その衝撃がレオンの体に跳ね返ってきたのだ。
「ぐはっ!!?」
「レオン!?くっそ!これでもくらえ!化け物!」
エルメスは魔方陣の魔力を解き放つ。
『魔方陣解放!!龍星の隕石!!』
魔方陣の魔力が柱になったかと思うと空から魔力の塊の隕石が大量に降ってきた。
その多くが顎龍に直撃したが、
谷が浅くなっただけで、顎龍に大きなダメージはなかった。
「…!!『龍星の隕石』がきかない!?
「ど…どうやら生…命力も化けもん…みてぇだな…。」
ほとんど戦う力の残っていないレオンがかろうじて立ち上がった。
「…!計算外だ!ここは一度戻って形勢を立て直そう!」
「バカ言うな!…こんな化け物が黙って俺らを返してくれるワケねーだろ…?」
レオンは力を振り絞って『双刃ギヴァセス』をグッと握った。
「…それに…俺はあいつを超えるまで、負けねえって誓ったんだ…!」
「…?でもそんなこと言ってる場合じゃない!
あいつはまだ一回も攻撃してないんだよ!
守備だけで俺たちにダメージを与えてきてるんだ!」
エルメスの言う通りだった。
顎龍はまだ一度も攻撃という攻撃はしていない。
「…それでも、引けないんだよ…!」
レオンはふらつく体をどうにか留めて、顎龍に飛びかかった。
「うおおおおおお!!!!」
ガキィ!!!刀が弾かれたような音が響いた。
それはレオンのギヴァセスが顎龍の体に弾かれた音ではなかった。
「…!!!!お前は…!」
レオンの攻撃を止めていたのはユエの『大刀カルバトロス』だった。
「ボッロボロじゃねーか?それでも実技試験首位合格の実力者か?」
ユエはレオンをせせら笑った。
「…うるせぇよ。出て…くんな…。
お情け合格ヤローの…太刀打ちできる相手じゃ…ねえ…。」
「どうかな。やってみなきゃ分かんねーよ。」
「ば…か…ぐっ!ぐふぁ!」
レオンの口からは血が流れていた。
「見ろ。お前の双刃じゃ、あいつは倒せねーよ。」
『おれの獲物だ。』
ユエはニヤリと笑うと、噂の総重量100tを超える『大刀カルバトロス』を
片手でブンブンッと振り回した。
「エルメス…だっけ?そいつを治療しといてやれよ。
魔術師なら、回復系統の魔法ぐらい使えるだろ?」
「…!分かったよ。」
エルメスは言われるままにレオンを治療し始めた。
「さぁて?顎龍さんよぉ?その実力を俺にも見せてくれよ?」
ユエの目は顎龍の青い瞳に負けじと輝いていた。