第十六話.双刃使い、双刃を捨てる
いよいよ修行編です。
これが終わったら第三部が始まります。
少年は四部構成で「戦友の死別」「兄の裏切り」「月獅の戦い」「本陣を破る」となっています。
もう終わりにしようかと思ってましたが(他の連載もあるし)
意外と更新を待っている人がいるようなので、頑張ってみます。
少年団では、今、深い悲しみに包まれていた。
優秀な医療班隊の5番隊隊長、オトハを失ったことと、
少年七人隊の一人が、巨大な力の塊の十一人目の幹部であったこと……。
そんな中、レオンはユエの安否を気遣って、
ずっと少年団の砦の外でユエの帰りを待っていた。
そして、ユエは帰ってきた。黒い、マントのような風に乗せられて。
すぐに治療したが、ユエは生死を彷徨っていた。
そして、ユエは「意識が戻れば安全、そうでなければ死」という状態になった。
レオンは、ユエに付きっきりでずっと病室にこもっていた。
その時、信じられない二人組が、レオンの前に現れた。
桜花天王部の二人、参謀のグラメディウス・ゲル・ファイアと、
少年団最高司令官フレアディ・リオ・マナカヤだ。
ゲルは少年団唯一の老人であるに関わらず、スッとしていて威厳がある存在だった。
一方リオルは、レオンより小さいながらもゲルを上回る威厳を備えていた。
「これは…もしや…故奴…『第五限界』を使ったんじゃなかろうな?」
ゲルが目の色を変えて、レオンに尋ねた。
「はい…。それで…手が…なんか…剣と同化して…。」
レオンがなれない相手にギクシャクしながら答えた。
「………むむ…。故奴…名前は?」
「グラメディウス・ユエル・アルフォリアですけど…。」
「……!?我が孫の義弟ではないか!!」
「もういいだろ?ゲル。俺は聞きたい事がある。」
リオルがゲルの前に出る。
「レオン…と言ったか。十一人目の幹部というのは、ジュラ本人で間違いないのだな?」
「はい。自分で「神帝」と名乗っていましたので。」
「……ふふん。自ら「神の帝王」と名乗るとは…。奴は何も変わっておらんな。」
「……?」
レオンは、リオルの知ったような仕草が妙に気になった。
「それで?レオン。ユエが目覚めたらお前はどうするつもりだ?」
「俺は…、ユエの意志に従います!」
「…ほう。」
「ユエには俺は何度も助けてもらった…。俺は…あいつの右腕になってやりたい。」
「……分かった。ゲル。やはり例の件で行こう。私は職務に戻る。」
リオンはくるっと振り返ると、病室の出口に向かって歩き始めた。
「分かりました…。それでは手配と…彼らに説明をしておきます…。」
ゲルは軽く頭を下げ、リオンが部屋を出るまでその後ろ姿をジッと見ていた。
リオンが完全に出て行ってから、ゲルは鋭い目つきでレオンを見た。
「さて……、故奴が助かったと仮定した話をしようかのう…。」
「…は…はい。」
「実はな…歴史上グラメディウス・ユウガ・アルフォリアは第五限界に
『挑戦した』ことで死んだという風になっている。が、それは正確には誤りじゃ。」
「…!?どういう事です?」
レオンが手を膝の上において、真剣に話に聞き入った。
「ユウガ・アルフォリアには妻がいたんじゃ。名を「ハート・クレ・ハーフ」。
通称、『クレハ』。そう…さっき無くなった、オトハとやらの祖母じゃ。」
「……!!」
「彼女は月刀『真薇』の使い手で、心底ユウガに惚れとった。
そして、ユウガの手綱をとれたのも、彼女一人だったんじゃ。」
「…手綱…?」
「第五限界はな、ある意味『限界・解除』に置いて、ある意味最強を誇るものなんじゃ。」
「…。」
レオンは視線をユエにやった。
「第四限界までは一気に体力を減らす技…。というリスクがあるのも、
本当は王族以外でも習得できる、という隙間があるからじゃ。
つまり、第四限界までは、その気になれば、お主でも習得できるのじゃよ。
だが、そういった『誰にでも』習得できる幅は必ずリスクを伴うもの。
誰もが『王族の極意』をノーリスクで得ようなど、そんな上手い話はないからのう。
その『リスク』に当たるのが、『生命削消』、
すなわち、使用者の命を削るという事なのじゃ。」
レオンはユエの傷を見て、唾を飲んだ。
「第一限界より、第四限界の方が解放できる力も多いが、その分命も多く削られる。
しかし第五限界だけは別でな、王族の中でも選ばれた人間だけが成功できる。」
「それは……ユエが選ばれた人間って事ですか?」
レオンは視線をゲルの瞳に戻した。
「ああ。第五限界の定義はこうじゃ。」
・使用してから体力が尽きるまで、暴れ続ける
・体力が尽きると同時に、命も尽きる
・第五限界中に使える能力に幅は無い
「この三つじゃ。
このうち二つ目に注目して欲しい。というより、これに注目したのがクレハじゃった。
『体力が尽きると同時に、命も尽きる』という事は、裏を返せば、体力が尽きる前に
第五限界を解除している者を止めれば、命は助かるという事。
そんなムチャクチャな理論が、実際に実証されたんじゃ。
だから、『ユウガ』と『クレハ』は伝説になっとる。」
「第五限界を解除した…ユウガ…さんはクレハさんに止めてもらっていたって事ですか?」
「ああ。暴走するユウガを止める事ができたのも、クレハが奴のためだけに開発した
「月刀演舞『優心牙導』」の力じゃ。」
「月刀…演舞……。」
レオンはそのとき、ゲルの言いたい事が分かった気がした。
「レオン、ソナタが本当に故奴の右腕になりたいと思うなら、この剣戯を覚えよ。」
ゲルはレオンの眼をジッと見つめた。それはレオンの覚悟を見るためでもあった。
レオンは少し考えて、後ろを振り返った。
そこには、レオンの一族の形見とも言える『双刃ギヴァセス』が置かれていた。
レオンがその形見を見つめるのを見て、ゲルは口を開いた。
「分かっているとは思うが…双刃では教えられん。武器を変転させなければ…。」
「分かってます!……ただ…。」
「……武器を…変えます。月刀を…教えて下さい。」
レオンの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
ギヴァセスは病室の明かりを反射して灰色に光っていた。