第十話.風使い
早くも十話突破です。
この調子で五十話、百話、千話!!!
……とは行きませんが、せめて三十話くらいまでは行きたいですね(汗)
それまで、みなさん、宜しく御願いします!
「……どこだ?どこにいる…?!」
ユエたちは背中合わせになった。
「静かに!!……………逃げたわね…。」
「……ちっ…!どうする?」
「とりあえず、報告に行こう。相手は間違いなく『巨大な力の塊』のヤツだ。」
「…それも、『幹部』クラスのね…。」
「!!!オトハ。何で分かるんだ?」
「『幻術生殺』を使える時点で幹部の『アイツ』よ。」
「…アイツ……?」
「『巨大な力の塊 十幹部の一角、『フォール』……。」
後ろにいたのはジュラだった。
「兄貴……!お前は何でいっつも人の背後から迫ってくるんだよ…!」
「いや、悪い。前みたいに誰かが殉職したらシャレにならないからな…。」
「それよりも…『フォール』って……!!」
「『レースシト・フォル・メガロリアン』。エルメスの実の兄だよ。」
ジュラは続けた。
「………!!!」
「十幹部の十人、
『飛剣シルク』
『幻獣ガウスト』
『黒風フォール』
『治癒メイル』
『刹那リタルダン』
『瞬殺ヴァキ』
『魔操スダ』
『悪童ピノー』
『死旋カナシダ』
そして…『謎夢シュウ』。
どいつもこいつも恐ろしい腕の持ち主だ。」
一同は唾を飲んだ。
「この前、ここでの一戦で、『ガウスト』と『ヴァキ』はつぶした。」
「…それで、俺らが、『シュウ』ってやつを殺したから、あと7人か…。」
「………残念ながら、『シュウ』は死んでない。」
「…!?いや…あり得ないッスよ…!俺は…この手であいつの首をはねたんだ!」
レオンが言った。
「あいつは十幹部を率いるリーダー格だ。首をはねられたくらいじゃ死なん。」
「あいつだけじゃない。『ガウスト』も『ヴァキ』も、そのうち生き返る。」
「!!」
「十幹部の『治癒メイル』。あいつの力は人道をとうに外れてる。
並外れの魔導師で、人間の命を司ってる。
生き返らせたい人間の体があれば三日三晩で生き返らせるんだ。」
「じゃあ…それで『シュウ』も…?」
「いや、アイツはきっと『自分』で生き返る。」
「!」
「アイツの力は分からない。アイツは『謎夢シュウ』だからな。」
「俺たちはそんなヤツらを敵に回してるのか……!!」
「俺ら少年七人隊一人の力が、あいつら一人の力とほぼ互角だ。
頭数でこっちは負けてる。その分は、桜下天王部の2人で勝てる計算だ。」
桜下天王部の二人は、知っての通り、最高司令官の『リオル』と、
『グラメディウス・ゲル・ファイア』通称『ゲル』である。
ゲルはリオルに付き添っている参謀で、少年団で唯一の70才である。
王族の血筋で、ユエの祖父の弟である。
「『巨大な力の塊』を倒しても、『バラモ』はまだ残ってる。」
「『ラ・ベレイズ』か。あいつ、何歳なんだ??」
ユエが指を折って年齢を数えていた。
「とりあえず、『黒風フォール』を倒すぞ!」
ジュラが立ち上がった。
「そのままの流れで幹部を全員倒してやる!」
ユエは指をパキポキ鳴らすと、『魔法指輪』をはめた。
「いくぞ!!!」
レイオル山脈の山頂には、『頂の柱』と呼ばれる砦がある。
元々『巨大な力の塊』の領土だったレイオル山脈には、
『巨大な力の塊』の技術が注がれており、要塞と化していたのだ。
「今考えたら、俺ら、よくこんなトコ落とせたよな。」
ふと、レオンが呟いた。
「『巨大な力の塊』が俺らを甘く見て、『顎龍』一匹に任せてたんだ。
不幸中の幸いって感じだな。」
ユエがニヤッと笑った。
「………。ま、いいか。ここを落とせてなかったら、どっちみち『毒霧の海』に
たどり着く事すら出来なかったんだからな。」
「…さ、『頂の柱』についたぞ。」
「一般戦闘部特別クラス所属の『グラメディウス・ユエル・アルフォリア』、
通称ユエです。」
「同じく、『ホワード・レオガレン・ギヴァセス』、
通称レオンです。」
「最高司令官に任命・引率されました、医療部の『ジース・オト・ハーフ』、
通称オトハです。」
「引率の少年七人隊所属、『フレアディ・ジュレール・アルフォリア』、
通称ジュラです。」
「どうも、レイオル山脈の管理委員の『クギャ・ゼカ・ロク』です。
クロと呼んでください。」
「これから、『毒霧の海』への進行を開始します。
ここをその拠点とします。」
ジュラは引率証明書をクロに見せた。
「……分かりました。ついてきてください。」
クロはそういうと、ユエ達をどこかに案内し始めた。
途中の廊下で、窓から見える光景は、まさに地獄であった。
紫色がかかった霧の湖のようなものがある。
空を飛んできたカラスは一瞬でドロドロに溶け、湖へと落ちて行く。
湖はあぶくが出ていて、毒があるのは一目瞭然であった。
「あれが…『毒霧の海』です。」
これを見て、一同が再び緊張に包まれたのは言うまでもない。
「ここで、休憩を取ってください。」
クロは、一同をある部屋に案内した。
「…?あの…我々はすぐに進行したいのですが…。」
「先ほどご覧になられたように、今日の『毒霧』はあぶくが出ています。
あれでは進行するどころか、外に出たとたんに体が溶けてしまいますよ?」
「………!…では、いつ頃になれば?」
「あぶくが出てもう3日目です。あぶくが出るのは3〜4日で、
それ以降は急激に毒性が薄れます。
そのときを狙い目に行動されてはどうでしょう?」
クロがカレンダーを見ながら言った。
カレンダーには赤マルと青バツで印がつけてあった。
「だってさ…!ユエ。今日は諦めよう。」
ジュラがユエの肩をポンと叩いた。
「ちぇっ。」
「あの……私は?」
オトハが手を軽く上げて申し出た。
「ああ、この砦には、二人部屋が五十部屋以上ございます。
一人で構わないのなら、それでも結構ですよ?」
「オトハ!俺で良かったら、一緒に寝てやるぜ?」
レオンがオトハの肩に手を乗せる。
「じゃあ、ユエさんとで。」
オトハはユエの手をとってニッコリ微笑んだ。
「…俺はべつに構わないけど?」
ユエはジュラに聞いた。
「………。」
レオンは機嫌が悪そうだった。
「じゃあ、俺とレオンは一緒の部屋で。」
ジュラはクロに言った。
「では、用意しておきますので、この談話室で御待ちください。」
クロが頭を下げた。
レオンだけが機嫌が悪かった。
(レオン)……何で俺は不幸なんだ?(ブツブツ)
(ユエ)どうした?レオン。
(オトハ)ユエさん、かっこいいです!
(レオン)キッ!!!(ユエを睨みつけてる)
(ユエ)…ど、どうしたんだよ?
(ジュラ)……若いって良いな(笑)