やはり連中は動きました。
慌ただしく、下級貴族や、平民の騎士見習いや、衛兵を率いて王宮を飛び出した王太子とカフス達を王宮内に残って居た影の者達が見ていた。
クリスタル辺境伯を影から支える一族、トパーズ一族達だ。
彼ら、彼女らは身分や名前を偽造し、優秀な高等教育を受けた平民として王宮内に、侍従や侍女として務め情報を集めていた。
主は若きトパーズ男爵家当主であり、シーファス次期辺境伯を陰日向に支える侍従ルーカスだ。
「あの寄せ集めの手勢で何が出来るのかしら?」
「ふふ、直ぐにルーカス様には魔導伝書鳩を飛ばしたよ。我々の仕事は……この国の最期を見届けるまでだからね。皆、気を抜かずに己の務めを果たせ」
「「「「はっ!!」」」」
今は物置としてか使われない王宮の部屋は、トパーズ一族の会合の場として防音設備も設けられ、時折こうして密かに集まる。
トパーズ一族達は、その場から一瞬で消えるのだった。
「王太子とカフスが我が屋敷を襲撃する……か?」
辺境伯王都屋敷では、髪を一つに結わえたシーファスが頬杖を付きながら足を組み、広間でソファーに座りルーカスからの報告を聞いていた。
「左様の様です。王国騎士団や近衛騎士団の全てはクリスタル一族の分家筋。既に辞職願を纏めて出して此方に向かって居ります。この分だと、鉢合わせする可能性が御座いますが……如何なさいますか?」
伝書鳩の足についていた暗号を解読して報告した後、ルーカスはシーファスに問い掛ける。
「籠城も愉しそうだが……鉢合わせするなら捕縛させた方が早い。ルーカス、近衛騎士団と王国騎士団に命令を出せ。【愚かにも群がる害虫を発見次第捕縛しろ】とな」
「御意に」
少し考えた後、シーファスは美しく微笑んでルーカスに命じた。
あれから数十分後、王国騎士団を率いるパール一族と、近衛騎士団率いるルビー一族は、辺境伯家王都屋敷まであと少しと言う貴族街で留まっていた。
「若様の御命令だ、我々はこの場で留まり、王太子とカフス達を一網打尽にする」
「「おーっ!!」」
フェリゲルスが声高に宣言すると、王国騎士団や近衛騎士団からも雄叫びが上がる。
「ふふ、本当に愚かですね。わざわざ此方へ向かって来るなんて恥さらしな。まぁ、若様に献上する手土産に出来るから問題ありませんが……」
アレクセスは愉しそうに笑みを浮かべた。
「王宮に残った兵は、騎士も含め見習いと衛兵だけだ。連中が何を仕出かすか分からんからな。全員魔封防御結界を張れ。カフスは厄介な呪い持ちだ。念のためとは言え、気を抜くな」
「「はっ!!」」
フェリゲルスの命令に王国騎士団や近衛騎士団は返事をすると、各々で自らに描けるのだった。