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第十二話 テスト勉強は計画的に

 この学園で受ける、初めての中間試験が近づいてきた。授業の内容は、歴史はロマネス史も近隣王国史もからっきしだけど、それ以外の科目は元の世界とほとんど変わらないから助かっている。私は中高時代1ヶ月前からスケジュールを立ててかなり余裕をもってテスト勉強を始めていたのだけれど、前世での蓄積があるから、そこまでがむしゃらに勉強しなくても大丈夫そう。とりあえず歴史を何とかしよう。

 未来が来ないかもしれない、あるいは元の世界に戻る日が来るかもしれないのに、勉強する必要はあるのかと思わないこともないけれど、無事にこの学園の3年生になれたときに困るのは自分だ。


 昔、元の世界でノストラダムスの大予言というのが流行ったらしい。彼はいくつか予言を残しているのだが、その中でも1999年に空から恐怖の大王が降ってきて、人類は皆滅亡するという予言が特に浸透し、メディアで特集を組まれるほどだったようだ。でも、いくら話題になったとはいえ、きっとみんな、2000年が来てもいいように日々を過ごしていたはず。明日隕石が降ってきて地球が滅亡すると分かったら、大事なひとと過ごすなど、目の前の幸せを大事にすると思うが、リミットまでの期間が長ければ長いほど、本当にそのタイミングで終わるのかの確証も揺らぎ、未来を見据えた行動を取るようになると思う。

 だから私は、この世界でしっかり生きるためにも、テスト勉強にも真面目に取り組みたい。……ヒロインと対決するときに何か役に立つかもしれないしね。


 授業終わりに図書館に向かおうとすると、カトリーヌとナディアがやってきた。

「アニー、今日のご予定は~?」

「図書館でロマネス史の勉強しようかなって。寮室だとやる気にならないし」

「もうテスト勉強始めてるのか⁈ 週末3人で乗馬したいと思ってたのにさ」

「歴史は高校レベルどころかほとんどゼロから勉強しなきゃだからさぁ。しかも元の世界で起こったことも所々入り込んでて余計に混乱するんだよね……。でも乗馬は行きたい! ここんとこ運動不足だし」


 聖ロマネス学園は広大な敷地を有しており、学校と寮以外にも、乗馬エリアや植物園、劇場にカフェ、ビリヤード場など、ちょっとした観光スポット並みに施設が揃っている。……というのも、ゲームの仕様上、平日は勉学や趣味、部活に励み、休日は前述の場所に出かけて、攻略キャラたちとエンカウントしたり、親密度を高めた攻略キャラとデートをしたり…というのが必要だったため、デートスポットになりそうな場所を学内に用意したのだ。貴族のご令嬢に、護衛もつけずに街でお出かけなんてさせられないから。もっとも、良家の未婚男女がふたりでいることは現実ではありえなかったと思うが、まぁそこはファンタジーということでお茶を濁させてほしい……。


「アニーが図書館で勉強するなら~、ナディアも一緒に行こうかな~」

「え! テスト期間モードになるのはまだ早いって! カフェ行こう、な?」

「今から準備しとけば試験前日に慌てなくて済むよ?」

「そうそう! ほら、行きましょう~?」

「女神! 皆さん! これからどちらに?」

 前方から、ミカとハリーがやって来る。満面の笑みで手を振るミカに、カトリーヌが口をとがらせながら答える。

「ミカ王子! アニーとナディアがもうテスト勉強するって言うのさ」

「ふむ……。中間試験まであと1ヶ月。確かにまだ早いかも」

「だよな! だからこれからカフェに…」

「でしたら女神、生徒会室を利用されては? 図書館だとお喋り厳禁ですが、生徒会室なら話しても大丈夫。分からないところがあれば、僕もハリーも質問に答えますし」

「……だから、何でいつも俺まで」

「今日は決闘場が使えなくて稽古できないんだろう? いいじゃないか一緒に勉強したら」

「……」

 OKということだろう。

「せっかくだしカイトも呼んでいい?」

「呼ばなくてもいいですが……まぁでもそうですね、6人の誰かが夏期補習に引っかかっては、夏休みを存分に楽しめませんからね」

「……夏期補習?」

 カトリーヌが顔色を変える。

「中間試験で成績の振るわなかった者は~、夏休みも学校に通って補講を受けなきゃならないのよね~?」

「……こうしちゃいられない、皆! ほら、早く行くよ!」

 その後、寮に戻ろうとしていたカイトと無事合流し、6人でテスト勉強をすることになった。


「僕は基本的にはどの科目もできるようにはしているのですが……女神は苦手な科目はありますか?」

「歴史が苦手かなぁ」

「そうでしたか! 歴史ならお任せを! 聖ロマネス王国の第一王子として、ロマネス史はもちろん、近隣王国史についても詳しい自信があります」

「オレもゼルニア国の歴史は詳しいから力になれるかもー!」

 カイトに続き、ハリーが珍しく私に話しかける。

「……物理はどうだ」

「う〜ん、歴史ほどではないけど、そんなに得意じゃないかも」

「……じゃあ物理は俺が教」

「ハリーでなくても、1年生の物理であれば僕も教えられると思います」

「はーい! オレ物理苦手でーす! ミカ先輩教えてくださいっ」

「……女神、歴史の試験範囲はどちらですか? テストに出そうなところ、僕の方でまとめますよ。ナディアさんとカトリーヌさんも、聞きたいことがあったら遠慮なく聞いてね」

「ちょっとー! ミカ先輩オレのこと無視しないでくださいよー!」

「あの~、勉強のことじゃないんですけど、このお花はどなたが飾られたんですか~?」

 ナディアは、テーブルの真ん中に置かれた花瓶を指さす――そこには真っ赤なアマリリスが飾られていた。

「ハリーが飾ってくれたんだ。植物園から分けてもらったんだろう?」

「ああ。……アマリリスがぴったりだと思って」

「ぴったり……。何に?」

 私の問いかけに、ハリーは呟くように答える。

「……チーム名に」

「もしかして~、この6人組の名前を考えてくれたんですか~?」

「……宿題だっただろ」

「ハリーがこのチームのことをそこまで大事に想っていただなんて……。僕は感無量だよ……。この花はアマリリスというんだね、ぴったりだと思ったのはどういうところなんだろう」

「アマリリスの花言葉は、おしゃべり、誇り、輝くほどの美しさ……とかがあったと思う。確かに、私たちにぴったりかも!」

「アタシたち、喋ってばっかだもんな!」

「オレたちで未来を切り開くってことに、誇りも持ってるよなー!」

「輝くほどの美しさ……まさしく女神のためにあるような花です! このチームにふさわしい!」

「……あとは花びらもな」

「あー! この花、花びらが6枚あるー! そこまで考えて、わざわざアマリリスをもらってきてくれたんっすね!」

「わざわざではない。……見ていたら、管理人の方が分けてくれたんだ」

「ふふふ、この6人のチーム名は『アマリリス』で決まりだね!」

「だな! テストもいい点取って、アマリリスの皆で夏休み満喫しような!」

「そういうカトリーヌが一番心配だけどなー」

「カイトには言われたくないね!」

「はいは~い! おしゃべりはここまでにしてそろそろ勉強しましょうね~?」

「……ナディアが花のこと言い出したのにさ」

「何か言った~? カトリーヌ~?」

「えー、国語の試験範囲は、と……」



 その後も、生徒会室で集まって教え合ったり、図書館で黙々と勉強したりして各々試験勉強を頑張った結果、皆赤点は回避し、夏休みの補習メンバーにも選ばれずに済んだ。ちなみに、2年生の首席はミカで、次席がハリー、1年生の首席は私で、次席は何とカイトだった。……カトリーヌが地団太を踏んで悔しがっていたのは、言うまでもない。

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