春の章 合縁奇縁 6
現在にレスキュー隊隊長として御手洗炎が登場。続々と現在に143年前に存在していた人物が現れてくる。
現在に集結する意味とは…。
登場人物紹介
御手洗 炎
現在に現れた烏枢沙摩明王。143年前に現れた時も同じ消防の仕事に就いていた。見た目はガタイもよく少し怖いが家庭では家事をこなす良き夫。
規制線が張られた事故現場ではレスキュー隊が懸命の救助活動をしていた。
救急車を含め相当数の消防車両が次々と現場に到着する。
列車内から次々と負傷者が運び出され、
救命士が負傷箇所、呼吸、意識レベルを確認し迅速にトリアージを右手に装着している。
「衝突事故?」
レスキュー隊隊長の御手洗はこの事故に疑問を抱いていた。
六両編成の車両を見渡す限り脱線もしておらず、下りの列車が停車していないので接触事故でもなし。
腕の一本すら見当たらないから人身事故ではない。動物との接触なら死骸があるはずなんだが周辺には無さそうだ。
隊員が報告に上がる。
「隊長、警察からの情報だと何かと衝突した形跡はなし。車両下部に巻き込まれた形跡もなしとのことです」
「何故ブレーキを掛けたんだ?」
「運転士が怯えていて何も喋れないそうです」
「怯えて?」
どうやら持病でもなさそうだ。しかし、声も出ないほど何に怯えているんだ?人身事故でもないのに…。
御手洗は事故原因の糸口すら掴めない状況に苦慮する。
「うわっ!!」
背後で若い新人救命士が突然驚いた声を上げる。
声を上げた彼の元に御手洗がいち早く駆けつける。
「す、すいません御手洗隊長」
「いや、どうした?」
「こ、これ見てください。右の眼球が半分損傷しているみたいなんですけど、何かゾンビみたいで気持ち悪くて…」
「おい、彼はまだ息がある。言葉に気を付けろ」
「す、すいません」
目にした負傷者は男性で血まみれの顔から白い眼球が見え隠れしていた。しかも瞳孔が開いたまま、じっと救命士を捉えている感じがした。
確かに新人には少々グロテスクで恐怖を感じたかもしれない。
「隊長すいません。吐きそうです…」
新人救命士は口を押えて必死に耐えているようだった。
「あっちに行ってろ、俺が診る」
救急救命士の資格を持つ御手洗が新人救命士を除けて負傷者の状態を確認する。
少し呼吸リズムが異常だな。一時的なものだといいのだが…。
眼窩(眼球が入っている骨の枠)は骨折してなさそうだ。既に止血しているが傷口からの出血が多かったようだな。
確かにグロテスクだがそれ以上に瞬きせず威圧するように凝視されていてこちらが戦いてしまうな。
それに散瞳している瞳孔。右、左、斜め上、下、どの角度からもこっちを見ている感じがする。
ん?虹彩の色がブラウン系ではないな。ブルー系…カラーコンタクトか?
御手洗が左眼を開眼し瞳孔径を観察する。
こっちは裸眼だな。円形で径も正常の範囲内。やはり右眼はコンタクトか?
それにしては独特の輝きがあるような…まるで水晶のようだ。
「うっ」
負傷した右眼を暫し見ていると一瞬殺気を感じた。この気配…まさか怨毒か…。
それもかなりの憎悪に満ちている…。この私でもこの場では対治できない。
御手洗は手際よく右眼に眼帯をつけ処置を完了する。
そして心中で唱える。
「オン・アビラウンケンソワカ、オン・アビラウンケンソワカ、オン・アビラウンケンソワカ」
どうか治まってくれ。
再び呼吸の確認をする。
よかった…胸の動きが一定して上下している。呼吸リズムが正常に戻ったようだ。
それにしても、この気配、過去にもどこかで…。
いや、思い出している暇はない。
御手洗は手際よく黄色のトリアージをつけて、救急車へと運ぶ。
「創傷からの出血は止血している。眼球損傷、および頭部外傷、胸椎圧迫骨折はしてなそうだが念のため検査をお願いしてください」
「了解しました」
「搬送先はどこだ?」
「天野病院です」
「よろしく頼む」
天野病院か…この件、後で宝さんに報告しておいた方がよさそうだな。
御手洗は再び事故車両へと救助に向かう。
引き続き読んでいただきありがとうございます。
先ほどエピソード2を忘れてましたので投稿しました。
ストーリーの流れを最初から読んでいただけたらと思います。
御手洗が真言を唱えた時点で何となく彼はもしや!?と察していただけたらと思います。
次のエピソードではまた新キャラクター登場です。序章でほんの少し出てきました。
王生家の一員で長男です。
午前中エステに行ってたのですが今揉み返しがきていて肩に何かが乗っている感じがして辛いです。
とりあえず薬…。




