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春の章 合縁奇縁 2

現在のストーリーの主人公、三世が登場。職業は獣医師。生命に関わる仕事に就いている。

そして現在の一応姉である宝も登場。


同日。同じく北海道S市内。

とある町内会館駐車場。

時刻は13時を少し過ぎたころ。

車体に『移動動物病院 GO アニマルクリニック』と書かれている白のバンが駐車場を借りて診療中。

車の周りにはペットを連れた飼い主が10人ほど並んでいる。

犬、猫、鳥、兎、多種多様。

専用に造られた車内では診察が行われていた。

子どものパピヨンが診察台におとなしく座っている。

「ルークちゃんにまた牛乳あげました?」

若い獣医師が飼い主さんに問いただす。

「三ちゃんごめん。実は……昨日お風呂上りに飲んでたら、一口頂戴ってせがんできてさ」

「もう…あれほど言ってるのに!ダメじゃないですか!」

左手でルークちゃんを優しく撫で、器用に右手でパソコンのカルテに症状を入力する。

若い獣医師は飼い主さんに語気を強めて注意する。

こうでも言わないと甘やかす一方で聞いてくれないからだ。

「以前も、いや、何回も言いましたが、ルークちゃんは牛乳アレルギーなんです。少量でもダメな物はダメです!!下痢だけじゃなくて外の症状が出てきたらどうするんですか?」

飼い主が反省した様子でルークちゃんを見つめて謝る。

「ごめんな。お腹痛かっただろ?」

ルークは目を潤ませて飼い主をじっと見る。

「そんな目で見るなよ…」

確かに皆ペットは可愛い。でも人間と同じでアレルギーに悩まされるのは可哀想である。

ペットは喋れないから人間のように口で症状を伝えることができない。飼い主は病院で診察されて初めて事の重大さに気が付く。

「言っときますけど風呂上りのバニラアイスもダメですからね」

「わかった、わかったよ。これからは気を付けるよ」

言葉を繰り返したな…俺の前で嘘つくなよ。地下五階まで落ちるぞ。

恐らく可愛さに負けてついついあげてしまっているんだろう。

ルークは毎月アレルギー症状で診察しているのがその答えだ。

勝手すぎるよ人間はとつくづく思う。

この飼い主さんもそうなのだが、この地区はご高齢の世帯が多く動物病院に連れて行く手段が無い。

だから月に1回、こうして町内会の駐車場を借りて診察をしている。

平日は仕事が終わった帰宅後に診て欲しいという飼い主さんの要望も多い。

車で訪問できるというメリットを生かし、このご時世案外移動動物病院は必要とされているようだ。

「本当に気をつけてくださいよ。これいつものお薬です」

「ありがとう。三ちゃん」

何か軽い返事。多分守ってくれないな…。

俺の名前は王生三世いくるみさんぜ何故かみんな気安く三ちゃんと呼んでくる。一応先生なんだから名前できちんとと呼んで欲しいものだが…。

如何せん苗字が先ず読めない。そして三世。名前までもが何て読むのかわからない。だからこの地区で診察に来る飼い主さんたちはいつの間にか年下の俺を三ちゃんと呼ぶようになってしまった。

車内に掛けてある免許証をチラッと見る。

「獣医師免許証にフリガナ振ってないし」

かなり抵抗あるけど…それも慣れた。

次の患者さんと飼い主さんを呼ぼうとした時、スマホが振動する。

「うわっ」

秒で不機嫌な顔になる。

「宝からだ」

ぜってぇ出たくない相手だ…。ここは診察中を理由にとりあえず無視しておこう。

30秒経過。まだ振動している。

「三世出ないなぁ。診察中?」

電話の相手は蛇柄のスマホケースを手にした女性。

更に10秒経過。相手は諦めて切る気配がない。

「あーもう!しつこい!」

三世が頭を掻きまわす。

一方相手の女性も我慢の限界。蛇柄のピンヒールで床を蹴る。

「三世!早く出ろ!」

次の瞬間、相手の声が聞こえたのか三世が根気負けして電話に出る。

「もしもし」

「三世、もしかして診察中だった?なかなか出てくれないからさぁ」

「そうです。診察中です」

かなりぶっきらぼうな返事。

「今羽田なんだけど、17時50分頃新千歳に着くから空港のいつもの場所にお迎えお願いできる?」

うんもすんもなくいきなりかよ。

「俺忙しいんだけど。他に…」

「こっちは飛行機乗りっぱなしで疲れてるんだから、14時間だよ14時間、しかも、成田からの便が予約取れなくて羽田まで移動したんだから。食事しようにも微妙な時間帯だし時間潰すのも大変でさ、というわけでお姉様のお願い聞いて欲しいんだけど」

三世の話を途中で遮って自分の意見を押し切る。

三世は嫌そうな顔でスマホを耳元から遠ざけて聞いていた。

「俺にお願いする時は必ずお姉様アピール。姉と呼ぶのも抵抗あるのに。マジやめて欲しいわ…」

小声で呟く。

「今のスマホは性能いいんだよ。全部聞こえてるんだけど」

三世、歯を喰いしばって不快な表情をする。

「JRがあるだろうが。何で俺がわざわざ燃料代と高速代と時間を費やして迎えに行くのか分からねぇ」

「三世しか電話つながらなくてさぁ。お土産あるから。じゃ、よろしく」

プッ。

「は?一方的に切るんじゃねぇよ!ったく…絶対他の兄弟やつらにかけてねーよ、アイツ」

待てよ、成田から羽田?14時間…ということは海外か…また変な土産じゃないよな。前回は謎のスパイシーな恐らくクッキーと思われる焼き菓子。あれ結局どうなったんだ?誰か食べたのか?

「ふぅ……」

思わず大きなため息をつく。

「診察終わったら空港直行か…マジ疲れるわ。先ずは早く仕事を終わらせますか」

パソコンのカルテを切り替える。

「次の方どうぞ」


今日は春分の日。午前中はエステでリフレッシュ。

そして今…改めて見直したらエピソード2が抜けていた…。

改めて序章から読んでいただけたら幸いです。

引き続きエピソード6投稿予定です。

ありがとうございました。

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