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春の章 合縁奇縁 5

北海道では線路内に侵入する鹿との衝突件数が年々前の年を上回っている。

謎の青白い発光体の正体とは?果たして鹿?それとも……。

S駅 3番のりば

在原がホームに到着した列車に乗り込む。

車内は帰宅時間ともあって肩と肩がぶつかり合うくらい混み合っていた。

「3番線より小樽方面T行普通列車が発車致します」

ドアが閉まりゆっくりと発車する。

何とか満員の列車内でつり革を掴むことができたが、もまれて足元もおぼつかない。

「この時間帯はやっぱり混んでるな…」


S駅を出発して約10分。

街灯が点き始めた市街地をあっという間に通過し、次駅に到着予定の車内アナウンスが流れる。

「次はK駅、K駅──」

車窓から見える西の空は既に暗くなってきていた。まもなく日没の時刻だ。

運転士が線路上に何やら青白い光が輝いているのを目視確認する。

「鹿か?」

慌てて非常ブレーキをかける。

「ダメだ!間に合わない!」

光源はその場から全く動かない。前方百メートルほど先だが、この薄暗さでは鹿なのか何なのか確認できない。

次の瞬間、青白い発光体が運転席目がけて飛び込んできた。

「うあーっ!!」

車掌が目を見開いたまま叫ぶ。

列車はそのまま数百メートル走行して停車した。

急停車した列車内は乗客が折り畳むように重なって倒れておりパニック状態だった。

血を流して朦朧としている乗客、既に意識が無い乗客。

いたるところで呻き声や泣き叫ぶ声が聞こえていた。

その中を謎の発光体は何かを探すように浮遊していた。

当然、誰も気が付く余裕などない。


K駅で降車するはずだった在原は、

間もなく到着ということもあって列車の出入口付近で額から血を流し倒れていた。

「うっ…時間…間に合わない…」

何とか時間を確認しようと右手にしている腕時計を見ようとするが目が開けられない。

「どうして…光は感じるのに…」

在原はそのまま気を失ってしまった。


そのころ、さくらは渋滞につかまっていた。

「どうしたんだろう全然車が進まない。今日のラッキーワードは「静かに待つ」だったよね。回り道しない方がいいかな」

でもこの道は線路まで一直線。この時間に道路工事はやってないだろうし、考えられるのは交通事故か列車事故で踏切が開かないかのどちらか。

さくらはオーディオをラジオに切り替える。

「只今事故の速報が入ってきました。函館本線のS駅とK駅の線路内で小動物らしき物と列車の接触があった模様です。現在S駅とK駅の間で運転がストップしています。なお、ケガ人が多数出ている模様でレスキュー隊も出動しているとのことです」

「嘘…まさか主査乗っていないよね…」

その時さくらのスマホが鳴る。

「藤原先輩からだ」

「あっさくらさん?今、列車の中なんだけど、前の列車が何かと接触したらしくてずっと動かないのよ。今日の飲み会は残念だけどキャンセルだわ」

さくらの顔から血の気が引いた。

「……」

「さくらさん聞こえてる?」

ラジオを切り、耳を澄ますと僅かに警報音が聞こえていた。

「もしもし、さくらさん?」

藤原が何度もさくらに呼びかけるが返事がない。

さくらは通話を切り、咄嗟に在原に電話をかける。

呼び出し音が延々となっている。

「お願い。出て…」

さくらは呼び出し音が鳴ったままのスマホを持ったまま、

遠くにぼんやりと見える遮断機の警報灯を茫然と見つめていた。

微かに聞こえる警報音は次第に消防車や救急車のサイレンにかき消されていった。


読んでいただきありがとうございました。

この列車事故は今後の在原に何らかの影響を及ぼします。

次のエピソードでは過去の序章に登場した人物が現在にも現れます。

小説の中での動物あるあるは何らかの形で獣医師の三世がさり気に解説してくれます。(多分…下書きの段階ですが…)

引き続き 春の章 合縁奇縁を読んでいただけたらと思います。

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