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春の章 合縁奇縁 20

大耶は仕事で多忙な中、休みを利用して古くからの友人に会っていた。

長年切っても切れない関係にあるその友人の正体とは…。




登場人物紹介

北方きたかた 汰門たもん

現在に目覚めた多聞天。大耶とは旧知の仲。

どの時代にいてもあらゆる角度から時代の流れを預言する能力を持っている。

海上自衛隊に所属している。


 北海道の日本海に位置するY港。

防波堤の西側には二隻の艦艇が停泊中。

中防堤には外海に大物を狙って釣り竿を遠投している太公望たち。中海にはサビキ釣りを楽しんでいるファミリーでいっぱいだ。

ゆっくり港に入って来た黒いSUVがフロントを海に向け端の空き地に車を駐める。

車から降りて来たのは大耶だいやだった。海を眺め両手を上げて背伸びをする。

「潮のにおいがする。気持ちいいな…」

家からここまで高速使ってノンストップで60分。流石に同じ姿勢は張り込みより体が固まるよ。

首を左右真横に倒したり肩を回したりして筋肉をほぐす。

「ふぅ…」

岸壁を少し歩いて釣り人のバケツを覗いてみると、小魚が数匹泳いでいた。

「チカですか?」

「あぁ今日は余り釣れてないよ」

釣り人が残念そうに答える。

「今日は小潮かもしれませんね。昨晩半月でしたから」

「お兄さん詳しいね」

「それほどでも」

向こうからジーンズに春らしい薄いベージュのステンカラーコートを着た男性が走りながら近づいてきた。

気が付いた大耶が軽く右手を挙げて合図を送る。

相手の男性はぶつかる寸前で止まった。

「待った?」

「今着いた」

大耶の視線が迷走している。

「何?あんまりジロジロ見るなよ。今日の服装なんか変か?」

「いや、春色コーデきまってるよ」

「サンキュ。私服着る機会少ないからさ、おしゃれな服着こなすの苦手で」

「だからってこんなに近くで見せなくても」

「いいじゃん」

モデルのように優雅にターンして全身を見せる。

「車あっちに駐めてある」

「おい」

大耶と並ぶと身長も同じ位でクールな大耶が随分と親し気に話す男性。

彼の名は北方きたかた汰門たもん

最北の海上自衛隊の隊員で大耶とは長い付き合いだ。

「前回は三ヶ月前だったから、そろそろ連絡来るとは思ってたけど三日前に電話よこすなよ」

「ごめん、ごめん。でも流石、大耶いい勘してる。ほら俺車持ってないし、大量に買い込むなら付き合ってくれるかなぁなんて思っちゃったりして」

「毎度毎度図々しい。休みが取れたから良かったものを…」

「いいじゃん彼女いないんだし、どうせ休みは空いてるんだろう?」

「確かに空いてるけど」

顔からも口調からも本当のことを言われて図星なのがわかる。

職業柄あまり感情の起伏を表に出さないのに、汰門の前では無防備に表情を出す。

それは長年途切れる事のない関係を現在も保っていて、一番信頼している絆があるからだ。

「あれ?車替えた?」

「買って二ヶ月ちょっと経つかな」

「おー黒光りしてんじゃん」

「結構気に入ってる」

「羨ましい」

大耶が自慢気に笑顔で返事をしそそくさと車に乗る。

汰門も助手席に乗りシートベルト締める。

「まずはドラッグストアに行きたいんだけど、いい?愛用の歯磨き粉、シャンプー、ボディーソープ、とにかくアメニティー全部切れそうでさ。あっ、そろそろ日焼け止めも。で、次は家電量販店。ドライヤー壊れちゃったんだよね」

「了解。ランチはいつものワイナリーでいいのか?あのお店だと落ち着いて話できるし」

「OK。ガッツリ肉食べよう肉。俺はいつものハンバーグとワインかな俺ドライバーじゃないし」

「片道60キロ往復120キロのガソリン代に高速代かけて来てやってるんだから、おごれよ」

「いつもおごってんじゃん。でも、この車燃費良さそうだな…」

「おい」

「よし出発!」

二人は港を後にする。



読んでいただきありがとうございました。

北海道あるある

チカ……北海道に生息している海の小魚。ワカサギ(現在は淡水魚)に似ている。

 釣り初心者の頃よく釣って天ぷらにしてました。それから釣りにはまり釣り具店でバイト、船舶免許取得。数年前に大手術をしたので釣りはもう無理ですね…。


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