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春の章 合縁奇縁 11

在原が搬送されたのは宝が勤める病院だった。

しかも宝は主治医。

病床にいるにもかかわらず必死に何かをしょうとする

在原の謎の行動が気になる。

午前9時10分

天野病院ICU(集中治療室)

左腕に点滴を打たれ、ベッドサイドモニターで観察されている一人の患者。

頭部から右目元にかけて包帯が巻かれていて顔を覗うことはできない。

二人の看護師がモニターをチェックしている。

「容体は安定しているようですね」

「奇跡よね骨折もしていないし脳にも異常なし。眼球打撲だけみたいだから、もう一般病棟に移るそうですよ」

「よかった…と言うべきなのかしらね」

看護師たちは患者を見て顔をしかめる。

ベッドネームには『脳神経外科・内科 在原 朝臣 血液型A     主治医 王生 宝』

と書かれていた。


3階のナースステーションに足早に入ってくる若い看護師。

「聞いて!聞いて!今日王生先生が戻ってくるぅぅ!」

その表情から嬉しさがにじみ出ているのがわかる。

「何何何?誰情報?」

興味津々で詰め寄って来る看護師。

「さっき看護師長が外科部長と話しているの聞いちゃいました!」

「やったー!」

思わず万歳する。

「今日からスムーズにお仕事ができますね!昼食もおにぎりから弁当にランクアップですよ!」

「早速売店でザンギ弁当買って来よう!味噌汁付きで」

「さらば残業!正に神!」

そう、ここは宝の勤務している天野病院。

看護師たちは宝を心待ちにしている様子。

「倉橋先生嬉しくないんですか?今日から王生先生 出勤しますよ」

独りだけパソコン画面に向かって黙々とキーボードを操作している話題に入ってこない男性医師。

このフロアーではちょっと浮いてる存在のように見える。

「もう、倉橋先生!聞いてます?」

「あのねぇ僕忙しいんですよ。王生先生からは帰国前に連絡あったし、それに今日から出勤するのも知ってましたから」

「エーッ!?何で連絡取り合っているんですか?二人はそういう仲だったんですか?眼科の羽黒先生がずっと狙ってたんですよ。もし二人が付き合ってること知ったら…」

パソコン画面から目を離し、やたらとツッコミいれてくる若い看護師に面と向かって渋々正直に話す。

「あのね…付き合ってませんから。幼馴染なんですよ。昔から妹のような存在とでもいいますか…そりゃあ連絡ぐらい普通にとってますよ」

ナースステーション内が一瞬静まり返る。

「何?この反応」

倉橋が予想外の反応にポカンとする。

宝の幼馴染で小児科医の倉橋清隆(きよたか)は主に病棟を担当している。

小児科医ともあってパソコンのディスプレイにはアニメのキャラクターやヒーロー戦隊が代わる代わる映し出されている。

白衣のポケットにはいつでも子供をあやせるように小さい折り紙が入っており、

机の上には折り紙で作った鳥や動物が所狭しと飾ってある。

お笑い芸人のようにいつも子どもたちを笑わせてくれる彼は

イケメンとは言えないかもしれないが、ぱっちりとした目が特徴の童顔の持ち主。

その雰囲気からか話しやすく病棟の子供たちには好かれている。

一方、看護師たちは現実逃避するかのように倉橋をスルーして会話を再開する。

「それにしても王生先生の帰国が早くて良かったですね」

「長い時は半年位海外に行ったきりだからね」

「今回は学会への出席だったみたいですよ」

「先生すごーい」

「だけど先生がいないと他の科に融通が利かないから仕事は滞るし、残業、残業で超最悪ですよ」

「でも憧れますよね、JDRとDMATに所属しているなんて…」

「常に人命救助のために世界を駆けまわっているなんて、本当に尊敬しますね」

「しかも脳神経外科と脳神経内科兼務。それにあの美貌、スタイル。語学堪能。もうパーフェクト!」

「知ってました?昔は産婦人科も受け持っていたらしいですよ」

「先生が男だったら告白してたかも…」

宝の話題で盛り上がっている中、ナースステーション内のモニターに映っている在原の指が微かに動いた。

看護師達は話に夢中で誰も気がついていない様子。

その指先は昆虫の触覚のように何かを探すように動いていた。

何かに触れたのか一瞬動きが止まる。

そして器用に薬指と中指の間に一枚の紙をそっと挟む。

寝ているはずの在原の口角が何とも不気味に上がった気がした。

そして挟んだ紙を手元に手繰り寄せ音を立てないよう両手で少しずつ破きだした。


JDR 国際緊急援助隊

DMAT 日本の災害派遣医療チーム

読んでいただきありがとうございました。

ザンギは唐揚げのことです。

北海道ではなぜかザンギ。

旭山動物園で食べたジンギスカンザンギ美味しかった…。

この時、安住アナウンサーと黒柳徹子さんをお見掛けしたのを覚えています。

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