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たーちゃんとれもねーど(後編)

 お裾分けとたーちゃんの近況報告を済ませてから自室に戻る。

 サンドイッチさんは、たーちゃんの話に出てきた蓄光ガラスに興味を持ってくれた。一つ欲しいとのことだったので、帰りに渡せるように部屋に確保してある予備の分を避けておく。


 その間、たーちゃんは良い子に待っていてくれた。

 手にはサンドイッチさんからもらったお土産の砂糖菓子がある。けれど今日は食べないのだとか。自室に戻る途中で、ドランとドラゴンさんが帰ってきたら女将さんと親父さんも一緒に、みんなで食べようと話してくれた。


「ねぇじぜる」

「どうしたの?」

「れもねーどおいしいねぇ」

「そうだね〜」


 レモネードのほどよい酸味と甘味を感じながら、のほほんと返事をする。


「ねむねむさんにおれいしたいね〜」

「ねむねむさん?」

「いや〜なかんじがなくなったからぁ、ねむねむさん」


 ねむねむさんとは、ランプを求めてやってきたあのお客さんのことか。サンドイッチさんに続き、たーちゃんは不思議な名前を付けるものだ。


「お礼って言ってもあれは迷惑料としてもらったものだし、あんまり返すのも……」

「なさけわぁひとのためならずぅ。おんはねぇ、うれるときにうっておくものだよぉ?」

「恩って……たーちゃん、そんな言葉どこで覚えたの?」

「おじちゃんがねぇ、ねむねむさんにはよくしておけぇってゆってた~」

「ドラゴンさんが……」


 レモンの蜂蜜漬けの試作で、たーちゃんは親父さんと共に配達ギルドに行くことが多い。その間のことはジゼルも話を聞くだけなのだが、一体どんな話をしているのだろう。


 ドラゴンさんのことは信頼しているが、たーちゃんにあまり変な知識を教えないでほしい。教えてもらったことをすぐに実践しようとするのはたーちゃんのいいところでもあり、少し困ったところでもある。


「なにかあったときにぃ、ちからになってくれるんだってぇ」

「困った時はドランを頼るから大丈夫だよ?」

「そうだねぇ。じぜるにはぁどらんがいるもんねぇ~」


 むふふと口元を押さえながら笑うたーちゃん。

 この笑い方もドラゴンさんに教えてもらったのだろうか。含みはあるが、これはこれで可愛い。


「ランプのことならひとまずあれで終わり。それにあの人の場合、大抵のものなら手に入るだろうから恩ってほどのものは……」

「これあげるとぉよろこぶ」

「クッション?」

「じぜるのぬの〜。これがあればぁ、いっぱいねむれる」


 ジゼルの布とは、たーちゃんの抱っこバッグのために作成した伸縮性のある布のことである。あの後、女将さんがこの布を使って、たーちゃんの巣の中のクッションやジゼルのクッションなども作ってくれた。


 ちなみにドランも同じものを持っている。巣材集めにも持って行き、仮眠の際に利用しているようだ。ドラゴンさんに狙われるとぼやいていたが、ドランのことだ。文句を言いつつも使わせてあげているのだろう。


 手触りはいいが、安眠できるかと聞かれれば微妙だ。王子なら普段からいい素材の寝具を使っているだろうし、もらっても困るだけじゃ……。


 そもそもジゼルとランプの彼はただの売り手と買い手である。以前もらったもののお礼とはいえ、気軽に送ってもいいものだろうか。少し考えてしまう。


「でももらっても困るだけのような気が」

「ぜったいよろこぶ。たーちゃんがほしょーする」

「うーん……じゃあ女将さんに相談してみようか。元々女将さんの案だから、ダメって言われたら諦めてね?」

「わかったぁ」


 たーちゃんは元気に返事をしてレモネードを飲み干す。グラスを下げてから、早速女将さんに相談することにした。


 女将さんも城から大量受注があることを把握しており、レモンと蜂蜜をくれたのが王子であることも当然気づいている。だから止めてくれるはずだと。そう思っていたのだが……。


「あの布は枕にちょうどいいからね。きっと喜ばれるよ」

「え」


 予想外の返答に、ジゼルは少しだけ固まってしまう。

 

「きもちいいよねぇ〜」

「ああ。あたしも追加で欲しいくらいだよ」

「えっと多めに作りますね。どんなものを作りたいとかがあればそれにあった大きさの布を作りますが」

「シーツ」


 即答だった。追加で欲しいという言葉はお世辞ではなかったらしい。

 善は急げと材料を買いに市場に繰り出す。親父さんの分のシーツと、ドラン達に新たなクッションをプレゼントすることも考えて、大きめのものを四枚作ることにした。


 寝る前にグツグツと煮込んで、夜中に店裏の物干しを借りて干す。洗濯バサミで留めてはいけない。ここでシワができてしまうと、せっかくの布が硬くなってしまうのだ。このまま朝まで干せば完成だ。


 地面に落ちないことを祈って部屋へと戻る。

 道具を片付け、たーちゃんと一緒にベッドに入る。


「たーちゃんねぇ、あした、ねむねむさんにおてがみかくんだぁ」

「一緒に書こうね〜」

「うん」


 たーちゃんは字が書けるらしい。

 新事実だ。初めてのお手紙の相手が王子なのは少し複雑だが、たーちゃんの新たな一面が見れたことに喜ぼう。


 ドランは今日遠出しているけれど明日には帰ってくるから、できあがった布と一緒にたーちゃんの文字を見せられるといいな~。


 ご機嫌なたーちゃんを寝かしつけながら、大きな欠伸をする。


 今日も楽しい一日だった。

 明日も変わらず平穏な日がやってくることを願って、眠りにつくのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ねむねむ殿下、可愛い♪ たーちゃんが殿下に加勢してくれるって意外でした。なんだかほのぼのします~☆
[良い点] ねむねむさん!たーちゃんネーミングセンス良いですね。おまけに文字も書ける忘れてますが精霊さんでしたね。
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