2.寒期明けのアイス屋さん
「市場を見て、どんなパイにするか決めようか」
「そうするぅ」
話しながら、手紙と錬金飴を入れた箱が山積みにしていく。送り先を間違えないよう、送り先のメモを添えるのを忘れずに。
ジゼルが書いた宛名メモを、たーちゃんが紐に引っ掛ける。全て蓋をし終えたら、最後の確認だ。
たーちゃんは山積みされた荷物を持ち上げて、メモに書かれた宛名を読み上げていく。
「ふぉーくすこうしゃく りょうちぶん」
「フォークス公爵家の〜領地に発送する分、あったあった。箱の大きさは大」
「おっきいはこ〜おっけ〜」
ジゼルは読み上げてもらった名前を手元のチェックリストから探し、二つ目のチェックを入れる。一つ目は箱詰めした段階で種類と数が合っているか確認した際につけたチェック。
今日は二十個ほどだが、注文数に関係なく二重チェックは行うようにしている。販売アイテムは現状錬金飴だけとはいえ、手紙も同封する以上、間違いがあってはならないのだ。
「おわりっ!」
「ありがとう。うん、数もオッケー」
たーちゃんがお手伝いしてくれたおかげで、二重チェックもスムーズに終わった。重複も抜けもなく、キッチリ二十三個。大中小に分かれた箱のサイズも記載通りだった。
客間の端に避けた台車の上に荷物を積んでいく。
普段は親父さんが食材を大量に買い込む際に使う台車なのだが、最近は錬金飴運搬用になりつつある。もっとも配達の帰りにお使いを済ませることもあるため、いつもの使い方もしているのだが。
「じゃあこれを配達ギルドに持って行こう。部屋から荷物持ってくるから待っててね〜」
「わかったぁ〜」
部屋に戻り、お買い物用のポシェットとたーちゃんの上着を回収する。随分と暖かくなって来たとはいえ、夕方には少し冷え込む季節。午後のお出かけには上着が必須だった。
たーちゃんに上着を羽織らせたら準備万端だ。
台車を転がしながら客間を出る。そしてカウンターにいる女将さんに声をかける。
「今から配達ギルドと市場に行ってきます。何か買ってくるものありますか?」
「あ、なら手紙も一緒に出してきてくれないかい? お金も渡すから」
「了解です」
女将さんから受け取ったのは、オーレルさんに宛てた手紙だった。孫二人を連れてきた日以降、オーレルは度々この国を訪れているらしいが、文通は続いているようだ。
手紙をポシェットに入れ、配達ギルドに向かう。
あとはいつも通り、手紙と荷物と共に宛先を書いたリストを渡す。配達ギルドの職員側は慣れた様子でテキパキと確認してくれた。
代金を支払い、軽くなった台車にたーちゃんが座る。
「しゅっぱぁ〜つ」
まるで船の舵を切るように「まぁっすぐ〜」と上機嫌で道案内をしてくれる。ジゼルは台車をゴロゴロと転がしながら、パイにちょうどいい野菜や果物を探す。
夕方に差し掛かった時間なこともあり、朝とは違う商品が並べられ始めていた。夕飯や明日の朝食用に使えそうなものが多い。食事を売り出す店もチラホラと。
見慣れた光景ではあるが、ジゼルもたーちゃんもここ数ヶ月は忙しくしていた。ようやく一段落ついたこともあり、いつも以上に食事の誘惑を感じてしまう。
「ねぇジゼルぅ、たーちゃん、あいすたべたい」
たーちゃんは前方を指さしながら、ジゼルを見上げる。
「アイス屋さん始まったんだ。一個食べたらお腹冷えちゃうから、私も半分こでいい?」
「うん!」
アイスの露店は寒い時期は店を閉めている。ジゼル達が部屋に籠もっている間に今年の営業を始めたのだろう。台車を転がしながら、メニュー看板の前で立ち止まる。
「いろんな味あるよ。何味がいい?」
「たーちゃんえらんでいいの?」
「もちろん」
「どぉしよぉかなぁ〜」
たーちゃんは台車からぴょんっと降りて、看板の前で思案する。味はヘーゼルナッツとクランベリー、ミルクにレモンがある。ジゼルが好きなピスタチオは売り切れのようだ。
お財布を取り出して待っていると、地面に映っていたジゼルの影が塗りつぶされる。
「たぬきを連れた三つ編みの女っつうと、あんたがジゼルか」
「え」
振り返ると、背後には大柄な男性が立っていた。
普段から冒険者を見慣れているジゼルでも固まってしまうほど大きい。身体つきもガッチリとしている。
そんな男がマジマジとジゼルの顔を覗き込み「あってるよな?」と確認する。
「たーちゃんとジゼルにごようじ?」
ジゼルの代わりに返事をしたのはたーちゃんだった。
「やっぱあってるよな! 人違いじゃなくてよかったぜ。まぁなんだ。ひとまずアイスでも食いながら話そうや。おっちゃん、俺様は全部載せ。嬢ちゃんとたぬきの分も奢ってやるから好きなの選べ」
「やったぁ〜。たーちゃん、みるくにするぅ」
「嬢ちゃんは?」
「あの、自分で払いますので」
ジゼルはたーちゃんを抱き上げ、一歩後ろに下がる。警戒心を見せるが、男はまるで気にした様子はない。




