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12.帰宅

「ただいま帰りました」

「ただいまぁ~」


 お土産を載せた台車を転がしながら宿に戻る。


「お帰りなさい、ジゼル、たーちゃん、ドラン。凄い荷物だね!?」

「いつもお世話になっているので、お礼も兼ねて色々買ってきたんです。よければ使ってください」


 ドランは台車に載せていた寸胴鍋を渡す。数が多いため、他の調理道具は説明しながら食事用のテーブルの上へ置いていく。


 親父さんは予想外のアイテムに固まってしまっている。


「こっちはドワーフの里の方達から。たくさんお土産を持たせてもらったんですよ」


 シマさんの畑で取れた野菜に加え、小麦とベーコンと牛乳とチーズ、それから毛糸もたくさん。

 あれからシマさんとは会えなかった。ギリギリまで待ったのだが、忙しいのだろう。昨晩のドワーフの正体も不明のまま。シマさんから野菜を預かっていたクオッツにお礼を託し、帰ってきた。


 他のもらい物も含め、かなりの量だ。

 今押している台車も、配達ギルドの台車の中でも大きめのものを借りてきた。


 野菜の入った箱は床に下ろしたが、他の物で机の上がすぐにいっぱいになってしまう。


「こんなにたくさん! ドランのところも好きなの持っていきな」

「俺の分は大丈夫です。宿屋で使ってもらった方が食材も嬉しいと思うので、全部もらってください」

「そうかい? じゃあ遠慮なく使わせてもらうよ」


 親父さんはお土産に釘付けだった。

 鍋を手に、わなわなと震えている。たーちゃんはテーブルに上り、残りの道具をアピールする。


「くっきーとぉ~おかしのかたもあるんだよぉ~」

「こっちの鍋は宿の裏に置いてある釜置きに合うサイズを選んでもらったんです」


 ドランの言葉に、親父さんは寸胴鍋と台車に置かれた鍋をそれぞれ確認してからきょとんと首を傾げる。


「宿裏にあるのはジゼルが錬金術に使う釜置きだけだぞ?」

「大きめの物や大量に瓶を作る時はこれからも使う予定ですが、使用頻度はあまり多くないので、親父さんが嫌でなければコンロがもう一つ欲しいなぁって時に鍋とセットで使ってもらえたらと。あれなら親父さんが目を離さなきゃいけない時でも私が火の番を代われますし」

「たーちゃんもみててあげるねぇ」

「うーん、でもなぁ……。あれはジゼルの大事な錬金道具だ。料理に使わせてもらうのは、やっぱり違うだろ」


 少し考えて、親父さんは言葉を絞り出した。

 即断られたのであればジゼルも無理強いはしない。渡す側にあるのが好意だったとしても、使うのは親父さんだ。複雑な気持ちを胸に抱えたまま、なんてあってはならない。


 だが親父さんが抱いている気持ちは遠慮である。諦めようとする際の間と、寸胴鍋に向ける視線がジゼル達の背中を押してくれる。初めに一歩踏み出したのはたーちゃんだった。


「おじちゃんが、あれはただのかまおきだって。なべをつかえばりょうりで、れんきんがまをつかえばれんきんじゅつになるんだっていってた!」

「……本当に俺が使わせてもらっちゃっていいのか?」

「はい。釜置きだって使ってもらえた方が嬉しいと思いますから」


 ジゼルはグッと拳を固める。すると親父さんの下がっていた眉が、一気に元気を取り戻す。


「そういうことなら遠慮なく……。何を作ろうか」

「そういえば今度、おやっさんの娘がワインを送ってくれるそうです」

「なら煮込み料理もいいなぁ」


 ふふふと笑い、浮かれている親父さん。そこに女将さんがぴしゃりと声をかける。


「喜ぶのはいいけど、料理に使うのはまだ待っておくれよ? ジゼルには追加の瓶も作ってもらわなきゃいけないんだから」

「ああ、そういえばそうだったな。ならそれまでに考えておくか」

「もう結構なくなっちゃってますか?」

「瓶入りは全種類完売さ。たくさん作っていってくれたおかげで錬金飴自体はまだ少し余裕があるんだけど、こっちが溜まっていてね。明日以降でいいから目を通しておいてくれるかい?」


 女将さんが取り出したのは大量の手紙だった。三束もある。

 たった数日でここまで溜まるとは……。ジゼルも目を丸くする。


「わぁ凄い数……。今日のうちに送り主と必要な数のチェックだけしちゃいますね」

「明日でいいよ。今日はご飯食べたら休みな」

「チェックだけならすぐですから」

「たーちゃんもおてつだいするぅ~」

「そうかい? 急かしたみたいで悪いね。無理するんじゃないよ?」


 女将さんは申し訳なさそうに眉を下げる。


「ならその間に俺はもらった野菜を使ってスープでも作ろうかな。ドランも食ってくだろ? できるまで時間かかるから、待ってる間に風呂でも入ってけ」

「俺も手伝います」

「何言ってんだい。さっさと入った入った」


 女将さんはドランに石けんとタオルを持たせ、背中を押す。戸惑いつつも風呂場に入っていった彼を見送り、ジゼルはたーちゃんと共に数日ぶりの自室に戻った。



 明日からまたしばらく忙しくなることだろう。

 だがそれだけジゼルが作った錬金飴が求められているということでもある。


「さぁて頑張りますか」


 手紙をまとめる紐を解く。束の中にはすでに見慣れた封筒もかなりの数が混じっている。ありがたい話だ。


「たーちゃんがわたしたあげるねぇ~」

「おねがいね」


 たーちゃんは積まれた手紙の中から次にチェックする手紙を渡してくれる係だ。ジゼルはメモとペンを取り出す。そして各地から寄せられた手紙の一通一通に目を通していくのであった。


これにて精霊編完結です!


明日発売の『ジゼルの錬金飴3』はウェブ版とはまた違う内容となっておりますので、購入して応援していただけると嬉しいです(*´∇`*)4巻も出したい!


三巻記念SSも投稿予定です!

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― 新着の感想 ―
たった数日で3束もの注文依頼は凄いですね 私も3種類とも錬金飴欲しいので気持ちはよくわかります
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