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7.義眼とグラスアイ

「あたいの専門はガラスを使ったミニチュアとドールパーツ。その他にも精霊用ドールを作ったり、メンテナンスをすることもあるよ」

「精霊もお人形遊びするんですね」

「人形遊びをする精霊もいるっちゃあいるけど、基本的には精霊が入るための人形ーー要は容れ物だね。たまに亡くなった相棒にそっくりなドールが欲しいって頼みに来る精霊もいるんだよ」

「ジゼルとおんなじおかお?」

「あんたで例えるならそうだね。その中に入って旅をするんだってさ。あたいは精霊なりの追悼だと思ってる」

「追悼、ですか?」

「相棒と過ごした場所を巡ることでその胸に思い出を深く刻んでいくーーなんて、実際の目的は個々によって違うんだろうし、正確なことなんて本人以外誰にも分からないけどね!」


 暗くなった話を吹き飛ばすように豪快にアッハハ〜と笑う。

 そして精霊とドールに関する話題を付け加えてくれる。


「一般人には精霊の入ったドールと普通の人との見分けがつかないから、少し前までは人型ホムンクルスと勘違いされてたって話だよ。まぁ外を普通に出歩いているような精霊は、ドールを動かせるくらい膨大な魔力と細かい魔力操作ができる個体で、そこに至るまで相棒と多くの会話をしてきたから流暢に話せる、って考えると不思議ではないけどね。今でも人型ホムンクルスの最終到達目標はドールに入った精霊だってんで、たまにあたいのところに錬金術師が話を聞きに来るんだよ」


 人と見分けがつかない精霊と言われて、パッと頭に浮かぶのは宿屋の常連客のサンドイッチさんである。初めて来店した時から全く見た目が変わっていないらしい。


 だが彼が精霊であるという確証はない。精霊でなくとも、長命種の血が混ざっていると老化が緩やかになるのである。


 もしドールに入った精霊なら、彼もまた相棒のために旅をしているのだろうかーーとそこまで考えて、軽く頭を振る。余計な詮索はよそう。


 彼は親父さんの作るサンドイッチを気に入っているお客さんであり、たーちゃんのお気に入り。

 それだけだ。客と宿屋手伝いの程よい距離感を崩す必要も、互いをもっと知る必要もない。


 ジゼルはただ、サンドイッチさんを含めたお客さんが宿泊している間、快適に過ごしてもらえるよう宿屋の手伝いを頑張るだけだ。


「ねぇねぇ、ばいく? のひとのついとーするのぉ? ばいくつくったのひとじゃない?」

「オディリアは人間だよ。それにあの子はまだ生きている。人間としても、錬金術師としても。そのためにジゼルのガラスを譲ってもらえないか相談しにきたんだ」

「どういうことだ?」


 ガーネットの言葉にドランが首を傾げる。ジゼルも今までの話とガラスが結びついていない。一体何に使うつもりなのだろうか。


「二十年前、オディリアはとある事故で右目の視力を失ってね。それから、以前のような繊細なアイテムは作れなくなった。代わりに今はあたいと一緒に、グラスアイをベースとした特殊な義眼作りを目指している」


 グラスアイとはドールパーツの一種である。その名の通り、ガラス製の目。

 ガーネットがそのグラスアイを作り、オディリアという錬金術師が特殊な溶液に浸ける。義眼技師が最終調整し、客の手に渡すという流れらしい。


 通常の義眼よりも手間と時間、お金はかかるが、見た目は本物の目にかなり近い。

 グラスアイの時点で色味の確認がしやすく、強度が高い。加えて眼の部分に衝撃が加わっても、球体の内部で割れるため目の中が傷つく恐れが少ないことからかなりの人気があるのだとか。


 現在三年先まで予約が埋まっているそうで、販売所に並べられているグラスアイを選んでいく人や、リテイク前のグラスアイを予備として買っておく人もいるのだとか。


「手紙に書いてあった色はこのためだったんですね」

「そうそう。それでさ、その義眼のベースとなるグラスアイの虹彩パーツにジゼルのガラスを使わせてもらいたいんだ」

「私はグラスアイのことはよく分からないのですが、普通のガラスを使っても大丈夫なのでしょうか?」

「あたいは錬金術のことは分からないけど、いつも使ってるのもあたいが作ったガラスだから大丈夫だと思う。そうそう、オディリアから手紙を預かってきてるんだ。読んでくれるかい?」


 そういってポケットの中から一通の手紙を取り出した。早速封を切り、手紙を確認する。便箋からはふわっとワインの香りがする。


 読み進めていくと、オディリアがワイン農家の娘であることが書かれていた。

 代々この里にワインを納品している関係で、ガーネットはもちろん、里のドワーフ達とも親しいのだと。ペレンナの存在を聞かされていることからも、かなり長い付き合いであることが分かる。


 ペレンナの実が錬金飴と反応したということを聞き、ジゼルの魔力もしくは精霊の力を借りたアイテムには特殊な力があるのではないかと考えた。そこからジゼルのガラスを使えば精霊の目と同じ状態が再現できるのではないかと思い至った。


 ジゼルのガラスの使用方法も書かれている。


 ①魔力水にジゼルのガラス玉とペレンナの実を入れ、数日置く。膨らんだペレンナを取り出し、絞る。果汁は義眼用コーティング剤の材料に入れる→義眼用コーディング剤αを生産 生産者:オディリア ※義眼用コーティング剤のレシピは別途記載


 ②ジゼルのガラス玉を使用してグラスアイを作成 生産者:ガーネット


 ③①と②を材料とし、調合


 クオッツの時もそうだが、どのように使うか伝えてもらえるのは助かる。

 驚くべきは義眼用コーティング剤のレシピまで書かれていることだ。レシピはジゼルが活用するも、販売するも自由。


 また現在、義眼用コーティング剤を用いた義眼の販売は行っているものの、義眼用コーティング剤を売り出す予定はないとのこと。


 想定していたものができなくても、今回譲り受けた以上のガラス玉を要求することはしない。もらったガラスを使って生産したグラスアイ・義眼を使用するのはオディリアのみとする。



 この条件で検討してほしい。

 そう締めくくられている。

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― 新着の感想 ―
ガラスの義眼なんて割れるのが怖いと思いそうですがこの世界では逆なのですね そのうちお洒落で色んな色の義眼にする人も出てきそうですね
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