ゲームのボリューム(プレイ時間)問題について語る回
先日ゲームのボリューム水増しについての話を目にしまして。その大元は「お使いなどでロクなファストトラベルも無く長距離移動を強いたり、数を揃えるためにイベントを使いまわしたりと、プレイ時間を伸ばすための不要な水増しを止めて欲しい」という実にもっともな内容でした。
……が、昔を知る者としてちょ~っとだけ複雑な気分になってしまったので、思考整理がてら私見を書いていこうと思います。
主にACで発展していた頃のコンピューターゲームは、基本的に「狙って撃つ」「避けて進む」ような「そのゲーム特有のシンプルな作業を繰り返す」ものでした。
またなるべく短時間でお金を投入させる必要があるためそれを意識した難易度調整をされがちで、(上手くなれば伸びるとはいえ)必然的に一回のプレイ時間が短いのも特徴でしたね。
それが変わったのが家庭用ハード(ファミコン)が普及してからのことで、(上記のようなACのノリで作られたソフトも多かったけど)短時間でプレイヤーを〇す必要が無い=一プレイを長く続けられるソフトが増えていきました。
そんな家庭用ハードという土壌で開花した大輪の花、それが「RPG」というジャンルでした。
ACの頃のゲームにも「地球を救う」的な背景や設定はあったものの、基本「プレイ(作業)」部分が主なのでそういったストーリーはあくまでゲームを彩る要素の一つでしかなかったんですよね。
それがRPGを始めとしたストーリー重視なジャンルが興隆するに伴い、徐々にストーリー部分がゲーム内における比率を増し、作品によってはむしろストーリーを追うために戦闘などのゲーム部分をこなすという逆転現象まで齎すようになりました。
そしてストーリー重視になることで、ACのプレイ時間制限が無くなった時とはまた異なる形でゲーム時間が長くなっていくことになっていったのでした。
このプレイ時間が長くなったというのが、スマホもネットも無い時代の自分のような年に2~3本ゲームソフトを買えれば良い方な子供にとっては本当に有難くて。自分が飽きっぽかった影響も大きいと思いますが、進む度に新しい面白さを提供してくれるRPGというジャンルに夢中になったのを覚えています。
友達との貸し借りという手段もあったものの、借りれるかどうかやいつまで借りられるかを考えると結構不安定な手段でしたからね。
少し話が逸れますが、ACのゲームが「わんこそばを気が済むまで食べ続ける」タイプだとすると、RPGは「コース料理を楽しむ」ような感じだと思っています。……いやどうだろう、長~い一本のうどんを啜り続けるような感じかも……?
と、とにかく。短時間プレイを繰り返すのと一本道に沿って結末を目指すのとでは、同じ時間のプレイでも得られる楽しさの性質は大きく異なるのですよね。
どちらも別種の楽しみはあるものの、その後のRPGの興隆っぷりを見るに多くの人が「ストーリー(ゲーム内世界)に没入する」ことの楽しさを知ったのは確かと言えるかもしれませんね。
そしてスーパーファミコンやプレイステーションの頃になると、性能が上がり表現できる幅が増える&容量が増えてストーリーが長く出来るようになったことで更にプレイ時間(クリアまでに要する時間)が伸びました。
しかしながらこの頃には、上記のようなプレイ時間が長くなってきた経緯が忘れられ、「プレイ時間が長い」という要素がある種のお約束に成り果ててしまった感もあります。
「表現したいことを形にした結果長くなる」と「プレイ時間を長くするために手間を増やす」では作品として完成した時の手触りは大違いなんですけどね……。
その後時代が進むに伴ってPCやスマホでの動画やSNSやゲームといった競合する娯楽の増加、学業や仕事などによるプレイヤー自身の余暇時間の減少もあり、「プレイ時間が長い」というのがもはやデメリットと化しつつあるのが切ないところ。
しかしそれに伴って今まで語って来たような流れが一気に逆転して、FPSを始めとした短めのプレイを繰り返す系のゲームが主流になっているのが面白いところです。
……と、経験則に基づく非常に個人的な見解ではありますが、ゲームのプレイ時間が長くなったのはこういった流れだったと思います。
・ゲーム時間が長くなったこと自体は自分は良いことだと捉えてる。
・無駄にプレイヤーに負担を強いる水増しは擁護し難いが、そんなプレイ時間を水増しするための作業ですら楽しめていた時代は確かにあった。
・何より悲しいのは、あれだけ夢中になっていたゲームなのに今は自分の中での優先順位が大きく下がってしまっている。
自分が上記のような考えを持っていることもあり、冒頭の意見に対して抱いてしまった複雑な気持ちは
「プレイ時間が長いのは昔は良いことだった。プレイヤーの不利益にしかならない水増しは憎むべきものだがそれと同一視して欲しくはない」
というものだったんだと思いました。
まあ今でも新旧問わずRPGやオープンワールドゲーム等の長いゲームを楽しんでプレイ出来ている人は沢山いる訳で、結局のところ情熱を失った老兵が昔を懐かしんでいるだけの話でしたね。
そんな話に長々付き合わせてしまい申し訳ありませんでした。
失った物を嘆いても何も解決しないから今有るものや出来ることをやっていくしかない。
……そうは理解していますが、やはり心情的に寂しいものであります。




