第三十二話 新聞
1890年 (明治23年) 2月下旬
その日、東亜グループの会議室で重い空気が漂っていた。
「鉄道庁に我々は長い間、嫌がらせを受けて来たが、今回ばかりは許す事が出来ん。…やり返してやろうと思うっているのだが、案のある者はいるか?…一応、俺も考えてある。」
市太郎がそう言い終わると三宅が手を挙げて言った。
「鉄道庁に対して、我々も嘘の記事を流すのは如何でしょうか?」
「うむ、俺もそう思っていた。…付け加えると、東亜グループでも新聞会社を作ろうと思っている。」
市太郎がそう言った。
「新聞会社ですか?…既存の新聞会社に金を渡して、記事を書かせるのではいけないので?」
「そうだ。…奴らが鉄道庁に買収されたら、俺らは抵抗出来なくなるからな。」
「なるほど。」
「ああ、それとだ。…記事の内容だがな、嘘100%ではなく、事実と嘘の割合を五分五分にしろ。」
「何故ですか?」
「嘘で塗り固めた記事よりも、嘘を信じやすくなる。」
「確かに、真実が含まれていたら、嘘も本当なのかと思いますもんね。」
「その通りだ。…それとだ。…ダミー会社を作り、鉄道庁や井上勝に近い議員に金を渡せ。」
「敵に塩を送るのですか?」
「ああ、毒入れだがな。…金を送った後、その議員が賄賂を貰い汚職していると言う記事を出し、議員を失脚させる。それによって、井上勝や鉄道庁の政治への影響力を低下させるんだ。」
「なるほど、中々えげつない事をお考えになりますね。」
「褒めても何も出てこないぞ。」
市太郎は笑いながらそう言ったのであった。
こうして、鉄道庁と東亜グループの壮絶な誹謗中傷合戦が始まった。
例を言えば、東亜新聞が鉄道庁の鉄道は健康に害があると書いたら、鉄道庁は東亜鉄道は電気を使っている為、乗車したら感電死すると言い返すと言うものだ。
因みにだが、新聞に市太郎の強い希望で4コマ漫画がつく事となる。
1890年 (明治23年) 3月上旬
ある日の夜、市太郎に武子が嬉しそうに話しかけて来た。
「市太郎さん、大事なお話があります。」
「どうしたんだ?」
市太郎は不思議そうにしながら尋ねた。
すると、武子はお腹を優しく触りながら言った。
「子を身籠ったようです。」
「!…本当か!…武子、ありがとう!」
市太郎は嬉しいそうにそう言った。
「はい!」
武子も嬉しそう返事をした。
因みだが、その後に産まれてくる子供達も東亜グループ躍進の一助となるのであるのだった。
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