第二十八話 信用金庫
1889年 (明治22年) 8月
「地方や中小企業の相手に特化した銀行…信用金庫を創りたいと思う。」
そう市太郎が言った。
「地方や中小企業相手ですか。」
東亜銀行で営業部長をしている吉野が聞き返してきた。
「そうだ。…現在、我々含めほぼ全ての銀行は、地方や中小企業から集めた資金(預金)を都市部の大企業や土地投機に集中的に運用している。…その為、地方と都市部での貧富の差が増しており、その原因となった我々銀行にあまり良い感情を持っていないそうだ。」
「なるほど。…その悪感情を減らす為にですか。」
「それもあるが、一番の理由は中小企業の振興によって、他の財閥の影響力を低下させたいと思ってな。…ついでに地方や中小企業から信用も手に入るからな。」
「そうですか。…詳しい仕組みは考えておられるのですか?」
「勿論だ。まず、中央信用金庫を創る。
中央信用金庫とは金融中央機関みたいな物だ。
その、金融中央機関としての役割として、信用金庫グループの信用力の向上に寄与する役割を担う。
その為に、信用金庫経営力強化制度(信用金庫に対しての経営コンサルティング)と信用金庫相互援助資金制度という信用金庫グループの2つの安全網を活用し、グループ全体の信用力の向上をさせる。」
「信用金庫相互援助資金制度とは何ですか?」
「簡単に言うと信用金庫グループ全体の預貯金高はかなりの金額になる予定だが、個別の信用金庫単位で見ると、高額な融資など単独で行なうことの難しい業務が発生することがあるだろう。そんな時に、中央信用金庫が信用金庫に資金を低金利で貸し付けたりして、サポートするんだ。」
「なるほど。では、その中央信用金庫の儲けは、信用金庫相手に資金を貸し付けることだけなのですな?」
「いや、その傘下にある信用金庫から預け入れられた預金を資金に、国内外の金融商品(株や国債、地方債など)を購入したり、事業会社などへの貸出により儲けたりする。」
「そう言う事なら、かなりの利益を出せそうですね。」
「重要なのはここからでな。信用金庫は、その営業区域の企業以外には融資をしない。口座の開設はどこに住んでいても出来るけどな。」
「つまり、会長は信用金庫の役割はその地域で集めた資金(預金)をその地域の企業に貸し出す事で地域を発展させ、その信用金庫も成長させると言う事ですね。」
「そう言う事だ。」
「分かりました。早速準備しましょう。」
こうして、東亜中央信用金庫グループが誕生した。
市太郎によって史実より早く、全国に信用金庫が創られた事によって、三菱などの財閥の影響力が史実よりも弱くなるのだった。
因みにだが、よく財閥は、組織の三菱、結束の住友、人の三井と呼ばれたりするのだが、この一件で、東亜グループは庶民の東亜と呼ばれていく事になる。
ややこしくて、脳がショートしそうです。(>人<;)
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