第二十二話 マラリアと黄熱病
1888年 (明治21年) 11月
パナマのコロンビアからの独立が成功した。
東亜グループがパナマに行った支援は傭兵の派遣、ルベロM1886小銃の改良版の提供だった。
旧式の小銃を使うコロンビア軍と最新式の小銃を使うパナマ軍、両者が衝突した時に勝利するのはパナマ軍に決まっていた。
パナマ軍は数に優るコロンビア軍に連戦連勝していき、無事独立する事ができた。
因みにだが、この事態にフランスは介入して来なかった。その理由として、あくまでパナマ単独によるコロンビアからの独立だったからだ。
そして、日本ではパナマの独立と同時に日本から数多くの若者がパナマへと船で送られて行った。
その中には市太郎もいた。
「社長。何故、社長も来たのですか?」
パナマ運河建設先遣隊のトップ石野が聞いて来た。
「レセップスが何故、パナマ運河の建設に失敗したか分かるか?」
「えっと、疫病の蔓延によって労働者が数多く亡くなった為、工事の建設が難しくなったからです。」
そう、レセップスはパナマ運河の建設に五万人の労働者を投入した。だが、労働者にマラリアと黄熱病の猛威が襲い倒れる労働者が多数出てしまい、工事が思うように進まなかった。その為、レセップスは数でごり押そうと考えた。
しかし、労働者が倒れ、新しい労働者を投入しても、その翌日にはマラリアや黄熱病に倒れている事がザラにあった為、レセップスの考えは失敗した。
最終的には、三万人の労働者がマラリアと黄熱病により亡くなってしまったのだ。
「そうだ。もっと具体的言うと、マラリアと黄熱病の蔓延だ。…では、何故マラリアと黄熱病にかかる原因は何だと思う?」
「…労働環境が不衛生だったからではないのですか?」
「確かにそれもあるだろう。しかし、一番の原因は衛生環境じゃない。」
「では、何なのですか?」
「蚊に刺されるからだ。」
「蚊?…蚊なら日本中にいますし、何なら私も毎年、刺されていますよ。ですが、一度も黄熱病やマラリアに罹った事はございません。」
「まあ、日本ではアラリアに罹ることは少ないからな。」
この時代の日本では、滋賀県において一定のマラリア感染があったものの、そのマラリアは致死性の低い(発熱、悪寒、発汗、頭痛、悪心と嘔吐、体の痛み、全身倦怠感)もので、熱と処理される場合もあった為、余りアラリアは身近に感じられるものではなかった。
「とにかく、マラリアや黄熱病を防ぐためには、蚊を撲滅させて仕舞えば良い。」
「蚊を撲滅…。そんな事、出来るのですか?」
「完全には無理だろうが、大幅に減らせると思う。」
「なるほど、蚊を撲滅させる方法とは?」
「パナマ運河の建設と並行して、パナマ運河一帯の沼地の排水や雑草の刈り取りをぬかりなくやるのだ。」
「それにはどう言った意味が?」
「蚊が繁殖出来ないようにするのだ。」
「確かに、繁殖しなければ勝手に滅びますからね。…了解しました。」
そう言って、石野は船の進行方向にある水平線を見るのだった。
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