第二十一話 密約
1888年 (明治21年) 9月
パナマ運河会社を買収した後に気付いた事だが、オーストラリアにも鉄鉱山あるじゃん。
…気づかなかった事にしよう。
…絶対部下達に怒られる。
パナマ運河会社を買収した同月、あるチラシが日本中にばら撒かれた。
その内容は
求む日本男児。
危険な工事、低い賃金、極暑、暗黒の長い日々。
耐えざる危険。生還の保証せず。生還の暁には名誉と賞賛を得る。
東亜建設
と言うものだった。
これは、パナマ運河開通工事の人員を集めるチラシである。
「…社長!すごい数の応募が来ました!」
中野がそう言った。
「ふっ、大航海時代を思わせる文言を使って良かった。」
「ええ、それに加えて海外に行ってみたいと言う気持ちが強いのでしょうね。」
ドタドタ
そんな事を話していると、1人の若い社員が走って来た。
「社長!…コロンビア議会が我々のパナマ運河建設を拒否しました!」
東亜建設の中にあった、和やかな雰囲気がこの言葉によって凍りついた。
「何!どう言う事だ!」
憤りながら中野が言った。
「は、はい。先日行われたコロンビア議会で、我々にパナマ運河建設権を貸さないと言う決議が決定されました。…恐らくフランスの工作があったものかと…。」
「何と言う事だ…。人員も揃い、いざ始めようという時に…。」
恐らくフランスは、万が一いや億が一でも成功しないように、妨害して来たのだろう。
「…中野、今すぐ新しい会社を立ち上げるぞ。」
静かに市太郎がそう言った。
「社長⁉︎もしかして、事業を諦めたのですか?…」
「別にパナマ運河の事業を諦めたのではない。民間軍事会社を作る。」
「民間軍事会社…。…もしかして、コロンビアと戦争をするつもりで?」
「流石に一国を相手に一企業が戦争出来るわけないだろう。」
「では何故?」
「パナマを独立させる。…その為に、パナマに物資と傭兵を送ろうと思ってな。」
「なるほど。…しかし、傭兵のあては?それに加えて、我々には戦争のノウハウがあませんよ。」
「西南戦争で敗れた士族を使う。」
「確かに、彼らならば多少は、戦慣れしているでしょうね。」
「分かりました。準備しておきます。…しかし、最短でも傭兵をパナマに送るのには、2ヶ月はかかりますよ。」
「構わんよ。俺もパナマ独立派の代表と話し合いをしなければならないからね。」
そう言って、市太郎は部屋から出て行った。
1888年 (明治21年) 10月 大阪某所
この日、市兵衛はパナマ独立派のトップ、マヌエル・アマドール・ゲレロと密会を開いていた。
「それでですね、アマドールさん。我々東亜グループが求めるのは、
1. 10マイル(16キロ)幅のパナマ運河地帯、およびパナマ運河の関連事業に東亜グループが必要だと考える地域は永久に東亜グループの管理下にある(永久租借権)と認める事。
2.パナマ運河の運営権は永久に東亜グループに付随する事を認める事。
その二つです。」
「…分かりました。では、私からも条件を一つ。もし独立後、数年以内にコロンビア軍の反撃があった場合すぐさま、我々を援護して下さい。…これが条件です。」
「分かりました。…これから、末永く宜しくお願いします。」
「こちらこそ。」
そう言って、市太郎とアマドールは握手を交わした。
ここに、市太郎とアマドールのいや、東亜グループとパナマ共和国の密約が交わされた。
この密約により、パナマにおいて東亜グループは強大な権力を得て行くのだった。
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