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第十話 年貢の納め時

1882年 (明治15年) 7月19日


「今日の昼12:30に京都に来い?…無理だ!」


市太郎が叫んだ。


「お前、一ヶ月前に言ったよなぁ!今日会わせたい人がいるから空けとけって。」


「そういやぁ、そんな事言ってた気がするが…あの頃はカルピノで忙しかったんだよ!」


「お前なぁ。…まあいい、取り敢えず何をしてでも絶対来い。遅れたらどうなっても知らんからな!」


「てか、会わせたい人って誰なんだよ!」


「…五代さんの娘さんだ。」


「まさか、お見合いなんて言わないよね?」


「そのまさかだ。」


「いや、本当に今日商談があるんだよ!」


「知らん!人の話を聞かんからだ!」


市兵衛はそう言って部屋を出て行った。


「はぁー。でもまあ、少しぐらいなら遅れても許されるだろ。…それに相手さんには悪いけど、お見合いは断るつもりだし…。」


さて、ここで五代さんもとい五代友厚商人について軽く紹介しよう。

五代氏はさまざまな事業の立ち上げや大阪経済を立て直すために、商工業の信用秩序の回復など様々な面で大阪経済に貢献した人物であり、それに加えてとても正義感の強い人物でもある。

五代氏の正義感の強いエピソードで、大阪港では外国船の荷物検査があまりにも厳しいので緩和しろと政府に要求した。しかし、五代氏は外国商人の要求の真意は荷物検査が行われることによる不満が、脱税や不正行為ができなくなる為であることを見抜いていたので全く動じなかった。と言う物がある。



「ふぅ、商談も上手く行ってよかった〜。」


この日、市太郎はカルピノを街の雑貨屋などに売ってもらう為に、いろんな店の店主の前でプレゼンしていたのである。そして、多くの店でカルピノを置いてくれる事になった。


市太郎がふと時計を見ると、時計は11:50を指していた。


「やっべ。急がないと。」


そう言って、駅に早足で向かって行った。




結局、待ち合わせ場所の料亭に着いたのは12:45だった。


市太郎が料亭の女中に部屋に案内されて部屋の前まで来た。

そして恐る恐る障子を開けると、そこには市兵衛と五代さん、そして幼い女の子がいた。

なんでこんな幼い女の子が?まあ、お見合い相手では無いだろ。


障子を開けると、一斉に市太郎に視線が集まった。


「…いやー、遅れてしまい申し訳ないです。」


「はっはっはっ。市兵衛さんから聞いていますよ。商談で遅れてしまったのでしょう?若い内はそれくらい商売旺盛で無いと。…ささ、座ってお見合いを始めましょうな。」


良かったぁ。めっちゃ良い人そうだ。


「はい、失礼しましす。」


そう言って、幼い女の子の前に座った。隣には親父がいる。


「まずは市兵衛さん、私の申し出に応じて下さりありがとうございます。」


「いえいえ、こちらとしてもこのような場は願ったりですから。」


親父と五代さんが笑顔で挨拶をした。


「ええっと、改めまして田中市太郎と申します。」


五代さんに向かって俺は挨拶をした。


「ふふ、お会いしたかったですよ。」


そう言って、笑いながら握手を求めて来たので、市太郎は笑顔で握手をした。


「それにしても、大阪商船の件はお見事でしたなぁ。あの住友さんの総理人さんが貴方との競争でしてやられるとは。」


「ははは、たまたまですよ。」


それから少しの間、雑談をした。


どうやら、五代さんは俺が大連合もとい大阪商船にさとの競争に勝った事やその他の事業で成功を収めている事から俺を新進気鋭の実業家、凄腕の商人と見ているようだ。


そして、雑談に一区切りついた為、五代さんは幼い女の子に挨拶をする様に命じた。


「武子挨拶をなさい。」


「はい、…五代武子と申します。今日は宜しくお願いします。」


そう言って挨拶をしたのは十歳ほどの女の子だ。容姿は艦○コレクションに出てくる曙に似ている。


「えっ、今日はって事はもしかして…」


「ええ、そうですよ。今日の主役の1人ですよ。まだ、11歳ですがね。」


ええ、10歳差なんですけど…


「五代さん、我々が長居しては若い2人が萎縮してしまいます。別の部屋に移動しましょう。」


市兵衛は生き生きとした顔で五代に話しかけた。


「ええ、そうですね。では武子、頑張りなさい。」


…何を頑張るんですかねぇ。

はぁー

10歳も歳が違うと何を話して良いか分からんな。…歳が同じでも分からんが。

あっ、ヤバい。緊張で気分が悪くなって来た。


そう、何を隠そうこの男は前世でも今世でも女の子と接して来なかった為、女の子とは言え女性と2人きりの状況になると、極度の緊張状対になってしまう。


「えっと、そのお気分が優れないのですか?…顔色が優れないですけど。」


武子が心配そうに聞いてきた。


「あーうん、大丈夫。」


「…」


「…」


ヤバい、黙っちゃったよ。どうしよう…気まずい。


本来、お見合いは男性がエスコートする為、武子はそれを待っているのだか、この男はそれを知らない為、焦り散らしている。


お見合いが進まないと思った、武子がそこから積極的に話しかけていくのであった。

因みに、市太郎は何を話したか一切記憶がない。



なんやかんやあったが、結局市太郎は武子と婚約する事となった。年貢の納め時である。


結婚は武子が15歳になった時に、行われる事に決まった。




少し投稿ペースが落ちます。


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