午前5時のラジオ、そこから聞こえる忠告
『本日、市内の川から大量の魚の死骸が浮かぶでしょう』
(……え、魚の死骸?)
ラジオを付けっぱなしにしながら寝ていたのか、そうおっかない言葉を聞いて私は起きた。
携帯電話を開く。
……夜中の5時を回っている。
(……こ、こんな時間に、ラジオだ、なんて……)
寝ぼけながら、アクビをする。
(あれ?)
聞こえるのは停波の音である、ザーザー音。
「なによ、死骸だなんて……変な夢でも見たのかしら」
そう私は呟いて、二度寝をしようとそのラジオを切った。
▪▪▪
翌朝……と言っても、朝の10時半。
今日はお昼からの仕事だから、この時間帯に起きても大丈夫。
なんだけれど、ねぇ。
二度寝したときに、妙に寝付きが悪いと思ったの。
1時間に1回、何故か目が覚める。
そこから30分位起きて、また寝るの繰り返し。
……例の『魚の死骸』の音声を聞いてから、妙なのよねぇ。
「ふわぁぁ」
アクビをしながら、ラジオを付ける。
(ちなみに、テレビは置いていなくて、情報源はもっぱらラジオに頼っている)
『……ここで、最新のニュースです。スタジオの立花さん』
『はい、お送りします。……今朝、白乃瀬市に流れます白乃瀬川から、大量の魚の死骸が浮いていると警察に通報がありました。警察と市の環境課による調査が進められています』
……え?魚の死骸?
白乃瀬川って、結構水質が良いって有名な川だったはずよねえ。
なんでまた、大量に魚が死んだなんて。
……え、まさか。
あの時聞いた、あの音声まんまの事が起きた、よね。
「……んもう、こんなの聞いて仕方がないじゃない」
そう、一人で文句を言いながらラジオの音声を切った。
▪▪▪
仕事はなんとか終わり、日付が変わる少し前に私は寝た。
昨日は妙に寝付きが悪かった反動で、すんなり寝てしまった。
『本日、市内の公園で貴女が襲われるでしょう』
(……っ!?)
昨日と同じ声がして、私は飛び起きた。
消したはずのラジオが、付いている。
……停波時の、ザーザー音が鳴っている。
けれど、その声はハッキリと聞こえた。
『市内の公園で貴女が襲われる』、と。
携帯電話を見る。
……昨日と同じ、午前5時。
「……どうしよう、今日もまた仕事なのに」
少し考えて、『熱が出た』と言って仕事を休もう。
妙な声のせいで、体調がちょっと悪くなってきたし。
「き、きっと……何も起きない、わよね」
ひとまず、寝てしまおう。
恐怖に怯えながら、私は眠りについた。
▪▪▪
「ねえ、結菜ちゃんさ、最近仕事場に顔を出さないじゃん。どうしたんだろうね」
「……彼女、ラジオから聞こえる例の忠告を聞いちゃったらしいのよ」
「え、あの某ラジオ局から聞こえる謎の忠告ってヤツ?それって、ただのネットの噂話でしょ?なんでまた結菜ちゃんが……」
「またまた、ただの噂話って流しちゃ駄目よ?結菜ちゃんが普段聞いているラジオ局って、かなりいわく付きらしいしね」
「………え、それってどういう意味?」
あのラジオ局で殺人が起きたのよ……それも深夜の5時ぐらいにね。
でね、その時の犯人が、あるテープに『貴女を殺す』と吹き込んだんだって。
警察の人が来て、犯人が捕まえられたんだけど……
そのテープだけが見当たらないらしいのよ。
それが、勝手に何者かの手によって再生されるの。
……それに、謎の忠告が聞こえるのは、そのラジオ局の周波数をずっと変えない人に向けられるらしいのよ。
もう、分かったでしょ。
色んな意味で周波数を合わせたままに、しちゃいけないことをね。