4話
前世の引きこもり生活が嘘のように、俺は猛烈に勉強していた。
暇さえあれば、というか、暇しかないのだが、絵本や書籍を手当たり次第に読み散らかした。
俺の母も、この歳で本を読み始めるのは驚いていたようだが、俺が読みたいと言えば何でも持ってきてくれた。
逆に言えば、この世界は本を読むことぐらいしかやることがないのだ。
娯楽がない。
これは非常につらい。
俺はこの先どうやって生きていけばいいのだろうと思う。
それでも、何もしないのはつらいので、本を読んでいる。
この世界の言葉も少しは慣れてきた。
もちろん母親に言葉を教えてもらいながらだが。
本は、母親が気を利かせて、読みやすい本を選んできてくれているのだろう。
内容も幼児向けというか、子供向けというか。
まあ言葉が易しいから、読みやすくてありがたい。
絵本を何冊か読んでいる中で、いくつか興味深い内容があった。
一つは魔法の存在について。
本当かどうか知らないが、絵本の中では当たり前のように魔法が使われていた。
ファンタジーな描写ではなく、日常生活の中に、自然と溶け込んでいるのだ。
まるで、日々の暮らしには魔法が当たり前とでも言うように。
もし、絵本の記述が本当なら、魔法を学ばない手はない。
ゲームの世界がリアルで体験できるのだ。
面白いじゃないか。
探してみれば、魔法に関する本もあるかもしれない。
そのためにも、やはり今は読解力を高めるために、言葉を学ぶべきだろう。
二つ目に、本に登場する人物について。
絵本を読んでいく中で、どれも共通しているものがあった。
それは、主人公や、主となるメインキャラクターは、人間ではなく、それ以外の種族だということ。
特に、悪魔や魔族のような容姿が多い。
人間もちらほら散見はされるが、脇役だったり、敵役だったり。
いよいよ俺が生まれたこの国が、人外魔境の可能性が高まりつつある。
本当にここで上手くやっていけるか心配だ。
ただ、人間が登場するということは、この世界のどこかしらにはいるのだろう。
できれば前世のよしみで、敵対などはしたくないものだが。
絵本を読むにつれて、何となくこの世界の常識であったり、当たり前も身についていく。
絵本といえど馬鹿にはできない。
まっさらな状態で生まれたならともかく、俺は前世の常識や記憶を引き継いでいるから、その辺りは普段の生活では怪しまれないように気を付けないといけないな。
「ふあぁぁぁ…」
差し込む陽ざしが温かく、心地よい陽気が俺を眠りへと誘う。
昼寝の時間だ。
ひと眠りするか…。