3話
翌朝目が覚めてから冷静になった頭で考えると、俺は生まれ変わったのだろうという結論に至った。
そうでないとこの事態に説明がつかない。
俺は例の角が生えた女性にミルクを飲ませてもらいながら、腕を組みこれからのことを思案していた。
前世の記憶や知識はあるが、この世界のことはさっぱりだ。
言葉や文字は最優先で覚えたい。
それに…人種というか、種族?についても。
俺を世話してくれている女性の額には角が生えているが、それを一度触らせてもらったことがあり、どうにもこうにも抜けず、これは偽物ではないと確信した。
そして、どうやら、この女性だけではなく、自分にも角のようなものが生えているらしいことが分かった。
まだ立派なものではなく、突起のような生えかけのものだ。
鬼というか、悪魔というか、そういった類の種族に生まれてしまったのだろうか。
まあ別にいいけど…。
鏡で見てみると、前世に比べたら男前のような気もするし。
女性に話しかけてみようとしても、喉が発達していないせいか、言葉を発することができなかったので、絵本をとにかく読んでみることにした。
絵本を指さすと、彼女はいくらでも読み聞かせてくれた。
とにかくやることがなく退屈だったので、絵本を読む以外はミルクを飲むか寝るだけだった。
赤ん坊の体のおかげか、何時間でも寝れた。
前世の不規則な生活が嘘のようだ。
体が若いのもあってか、何かを学ぼうとすると、吸収もあっという間で、半年を過ぎるころには絵本の話の内容や言葉の意味もだんだんと分かってくるようになっていた。
時が経つにつれて、体も成長したのか、発音できる言葉もかなり多くなっていた。
俺が女性を真似て言葉を発すると、彼女は嬉しそうに言葉を反復する。
それを繰り返しながら、1年。
いつしか俺は会話ができるようにまでなっていた。
「おっぱい!おっぱい!」
「こら、そんな言葉言わないの」
体が赤ん坊なのをいいことに、彼女の胸を揉みしだいたのは内緒だ。
前世では童貞だったから、これぐらいいいだろう。
世話係かと思っていたが、彼女は俺の母親だそうだった。
部屋の造りからして豪勢な邸宅なので、いいとこの坊ちゃんに生まれたかと思っていたが、どうなのだろう。
「ハリー、ミルクを飲みましょう」
「うん」
俺の名はハリーというらしい。
どこかの魔法使いみたいだな。
しかしミルクがまずい。
コーラが飲みたい。
「げぇっぷ」
「ゲップでまちたね~。いい子ねぇ」
くそ、早く大人になってやるぞ。