2話
再び意識が覚醒した時、俺は驚いた。
見覚えのない天井だったからだ。
あたりを見回すと、見覚えのない部屋に寝かされているようだった。
轢かれたあたりの記憶はあるのだが、衝撃のせいか、思い出そうとすると、頭が痛む。
そもそも俺はなぜ生きているのか?
走馬灯を見る間もなく意識が途切れてしまったが…。
四肢を確認しようと体を起こそうとするが、中々力が入らない。
後遺症だろうか。
両腕を持ち上げてみると、赤ん坊のように小さい両手が見えた。
「…?」
両手がやけに小さく見えるのはなぜだろう。
目に異変でもあるのだろうか。
足を上げてみた。
やはり小さい。
まるで赤ん坊のようだ。
「あうあうあうあうあ…(一体どうなってるんだ…)」
「………!」
言葉が…出ない。
まるで赤ん坊に戻ってしまったようではないか。
状況が飲み込めずに困惑していると、ふと誰かが部屋の外から入ってきたようだった。
視界に入ったのは女性。
だが、角が額から生えていた。
今日はハロウィンだったか?
「###########?」
彼女は聞いたことのない言語で俺に何かを問いかけながら、よっこいしょと俺を持ち上げた。
「あうあ!(なんと!)」
100キロに達しようかという俺の体重を、いとも簡単に持ち上げるとはこれ如何に。
更に彼女は、俺をあろうことか高い高いまでしてみせた。
高い高いされる意味はわからないが、若い女性に抱かれるのは悪い気はしない。
視点が高くなり、部屋を見回してみると、俺はベビーベッドのようなものに寝かされていたようだった。
ここは病院じゃないのか…?
確かに、病院とは思えない造りと内装だが…。
ふと視界に立ち鏡が目に入った。
女性と、抱っこされている赤ん坊が写っている。
赤ん坊っ…!?
試しに左手を上げてみると、鏡に映った赤ん坊は右手を上げる。
口をパクパクさせると、鏡の赤ん坊も口をパクパクさせていた。
これは…俺なのか………っ?
「あうあ…」
「######」
俺を抱いている若い女性がなんか言っている。
しばらく頭が真っ白になり、何も考えられなかった。
彼女はしばらくを俺を抱っこした後、ベビーベッドに俺を寝かせた。
夢じゃない…。
感覚はリアルだし、体も自由に動かせるし…。
一体どうなってんだ…。
赤ん坊の体のせいなのか、それとも考えすぎて頭を使いすぎたせいなのか、すっかりその日は疲れてしまい、泥のように寝てしまった。




