第四話 いきかえり
「よっしゃあ――」
銀玉は興奮の坩堝と化しながら、台の内部の玉排出装置にてウイニングランを開始していた。
「パチン!」
そんな時、銀次の耳にエンマ様の指パッチン音が入ってきた。すると、銀次はいつの間にか人の姿に戻り、元の証言台の前に立っていた。その突然ぶりに驚きつつも、銀次はパチンコ台へと視線を向けた。
前方のパチンコ台の液晶は、レインボー柄のプレミアム演出が発生していた。
つまり、大当たり確定。
どうやら、無事助かったと銀次はほっと一息をついた。
「パチ、パチ、パチーー」
エンマ様は銀次に拍手を送った。コングラチュレーションズ、と奮闘した銀次に敬意を払うが如く。
「いやあ、それほどでも……」
「照れなくてもいいぞ、大したものだ。しかも、見事に確変大当たりを引いたな」
エンマ様の言葉を聞き、銀次はパチンコ台を見やった。台の液晶では、確かに七図柄が揃っていた。
「サービス、サービス! ……というわけで、特別に願いを一つ叶えてやる」
「マジで⁉ じゃあ、俺を生き返らせてくれ。まだ、やりたいことが山ほどあるんだ。元気だった頃に戻してくれ。頼むよ」
銀次は両手を合わせ、ヘラヘラ笑顔でエンマ様に軽く会釈をした。やりたいことなんて低俗なものだと、誰でも容易く分かる有り様だった。
「元気だった頃に戻せばいいんだな?」
「ああ」
「分かった……。ただし、ここでの記憶は現世に持ち込み禁止だから、完全に消させてもらうぞ。では、達者で」
エンマ様は力強い指パッチンをならした。すると、銀次の体は一瞬で消えていった。銀次の魂は、現世の銀次の体へと戻っていったのだ。
「ファアア……」
現世に戻った銀次が目を覚ました。周りの景色で、すぐに今が深夜だと認識した。
「酔いが足りなかったのかも」
眠気が覚め切ったので、銀次は睡眠導入剤の代わりにウイスキーを口に流し込んだ。すると、忽ちのうちに体調が急変した。僅かの間もがき苦しんだ後、銀次は再び意識を失った。
――銀次は再びあの世の裁判所に行き、エンマ様と対峙した。
そして、天国か地獄かの判定は銀次自身を玉にして、大当たり確率一分の一に設定された巨大パチンコ台のヘソに入賞できるかどうか次第、と銀次はエンマ様に宣告された。
覚悟を決めた銀次は銀玉になり、パチンコ台の中へ。様々な釘と自身の過去を照らし合わせながら奔走し、何とかヘソに再び飛び込むこと……即ち、大当たりの獲得に成功した。
その大当たりは確変だったので、エンマ様が一つ、銀次の願いを聞き入れてくれることに。
「元気だった頃に戻してくれ」
という銀次の願いを、エンマ様は了承し、銀次の魂は再び、現世の彼の肉体へと戻っていった――
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