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「『組織』の予測によるならば」

 毎日声をかけ、そのつど他愛もない会話をし。

 僕と屋敷のメイドたちとの仲は、日に日に改善されていった。

 友達というところまではいかないが、僕単独でもそこそこ長くいられるようになった。


 もっともそれは、僕が例の『笑顔』さえ浮かべなければという条件付きで……。


「こ、こうか? もしくは……こう? うむむむむ……っ」


 今後のことを考えるならば、『笑顔』くらいは作れるようになっておいたほうがいいだろう。

 そうだ。どんなに不器用でも醜くても、努力だけはするべきだ。


 よしとばかりに気合いをいれた僕が、ドレッサーに向かって『笑顔』の練習をしていると、レイミアが焦ったような声を出した。


「も、もういいよお姉さまっ。それぐらいにしておかないと鏡が割れちゃうっ」


「そ、そうか……え? 鏡が割れる……?」


 衝撃的な言葉だったが、たしかによく見ると、鏡の端にヒビのようなものが……?


「バカな……まさか物理現象を引き起こすほどの……っ?」


「いいから、お姉さまっ。今日は別のことしようっ? ねっ? ねっ?」


 落ち込む僕を無理やりドレッサーから引き剥がすと、レイミアは元気づけるように声をかけてきた。


「別のこと……か。たしかにそうだな。腕組みして難しく考えているだけではいけない。ひとつひとつ地道に、成功を積み重ねていくべきだ」


 レイミアの提案はもっともだ。

 悩むだけではダメ。適度な気分転換こそが、物事を成功へと向かわせる第一歩に違いない。


「では『友達』作りに関してはひとまず長期戦略でいくとして……。次にすべきは『ストレイド家の没落を防ぐこと』になるだろうな」


「ぼつらく……?」


 聞き慣れないだろう単語に、レイミアはポカンと口を開けた。


「没落というのは、栄えているものが滅び衰えることだな。『組織』の調査によるならば、遠からずストレイド家はええと……すごく貧乏になってしまうと予測されている。それを防ぐのもまた、僕の『任務』なんだ」


 ゲーム知識や破滅フラグを『組織』の予測、それらを回避することを『任務』として説明すると……。

 

「えええーっ、うちはびんぼーになっちゃうのっ!? みちばたに座ってみんなで食べ物をめぐんでもらうようになっちゃうのっ!?」


「そうだ。メイドもひとり去りふたり去り、屋敷の家財家具のすべてを失い、やがて僕らは人買いに売られるハメになる」


「……けっこーえぐい!?」


 想像よりも過酷な状況に追い込まれることを悟ったのだろう、レイミアは慌てたように足踏みを始めた。


「なんとかしないとなんとかしないと……っ、ねえお姉さまっ、それを防ぐにはどーしたらいいのっ!?」


「安心してくれ。これにはひとつ簡単な解決方法がある」


「それはなにっ!?」


「お父様の浪費癖を止めることだ」


「………………え?」


 思ってもみなかったのだろう僕の返答に、レイミアは数秒間停止した。

おーっほほほほほ! みなさまご機嫌よう!

西園寺・ドンクリスティ・龍子よ!

物理現象を伴うほどの破壊力の笑顔ってどんなものかしら?

かわいそうだけど、ちょっと見てみたくはあるわね。

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