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「医務室前の攻防」

 僕らの狙いを察したのだろう、レイミアのいる医務室へと続く通路には、至る所に敵船員が待ち構えていた。

 サーベルに斧に投げナイフなどの原始的な武器に加え、たまに短銃を撃ってくる奴がいるのは面倒だが、いずれも問題無く対処出来た。


「しかしあんた、全然錆び付いてないわね……え、今銃弾(かわ)さなかった?」


「こちらの文明は向こうと比べれば遅れてるしな。銃弾の速度も遅い。相手の構えと視線さえ見ていれば、余裕で躱せるぞ」


「ええー……」


 僕の代わりに案内役の敵船員を拘束しながら歩いていたジェーンが、呆れたように呻いた。


「というかさ、むしろあんた、以前より強くなってるんじゃない?」


 僕が昏倒こんとうさせた敵船員たちの体を踏まないように気を付けながらジェーン。


「こっちに来てから『掃除』はしてなかったんでしょ? まあ依頼先がないのに、あるわけないんだけどさ……」


「正確には、していないわけじゃない。と言っても殺しでは無く、ぶん殴って排除するといった意味での『掃除』だが」


 それにしたって、街中で因縁をつけてきたチンピラ、法外な価格で偽物の壺を売りつけてきた悪徳商人、友達になる前のレザード、学園で絡んできた生徒たちなど、両手で数えられる程度だ。

 レザードやアレクとの戦闘訓練を含めれば多少は増えるが、向こうの世界での実戦とは密度が違う。


「くそっ……何をべらべら喋ってんだ……余裕かよ!」

「ちくしょう! ちくしょう! もういい加減あとがねえぞ!」

「……なあ、いっそのこと逃げようぜ!? 今なら絶対ばれねえって!」

「逃げるってどこへだよ! 後ろは医務室で、前にはあいつらがいて、曲がり角どころか身を隠す部屋すらねえんだぞ!?」


 焦った敵船員たちは、いよいよ撤退を考えた始めたようだが……。


「何を言ってるんだおまえたちは? それでもギリ=ハン諸国に名高き『カリンガの夜鷲よわし』の一員か、恥を知れ」


 机や椅子で築かれた即席のバリケードの向こうからローブ姿の男が歩み出て来たことで、雰囲気が変わった。


「ク、クローヴィス様だ!」

「やった! クローヴィス様さえいてくれりゃこっちのもんだ!」

「へっへっへ、見てやがれ小娘ども! このクローヴィス様はなあー! ギリ=ハン諸国の魔法大会で三年連続優勝を果たした伝説の大魔法使い、ヴィドアンラック様の弟子なんだぞ!?」


 紺色のローブを身にまとったクローヴィスは、ハゲの大男だ。

 天井につかんばかりのガタイの良さからすると肉弾戦のほうが得意そうに見えるが、手に持っているのは節くれ立った魔法の杖。


「ふっふっふ……」


 クローヴィスは、不敵に笑いながら一歩前に出た。

 杖の先端をまっすぐに僕に向けると、こう言い放った。


「娘、なかなか見事な手並みであったぞ。その若さでこれだけの手勢を打ち倒すとは、正直驚かされた。しかし今回ばかりは相手が悪かったな。何せわしは不世出の天才と呼ばれたヴィドアンラック様の高弟にして、炎神とも称される炎魔法の使い手クローヴィス。この杖を構え一言唱えれば、貴様などは一瞬にして炭の塊に……」


 突然始まった長い口上こうじょう


「ねえねえ、なんか言ってるけど今のうちに攻撃したらいいんじゃないの?」


「わかっている。今ちょっと、距離を測っていたところだ」


「距離? なんの?」


 はてなと首を傾げるジェーン。


「医務室までの距離と敵船員の数。ついでにバリケードと扉の強度。中の人にまで被害が及んではいけないからな」


「……ごめんちょっと何言ってるかわかんない」


「ジェーンはさっき、どうしてこちらの世界に来た僕が、向こうの世界にいた時より強くなったのか聞いただろう? これがその答えだ」


 ──ズガピシャーン!


 僕が右手を振ると、五指の先から黒い雷がほとばしった。

 雷は船の狭い通路の中をバリバリと走り、何かご大層な呪文を唱え始めていたところだったクローヴィスごと残りの敵船員そしてバリケードに直撃、爆発を起こして全てを吹き飛ばした。 


「闇魔法だ。この魔素マナが僕の体の中を血液のように流れていることで肉体が強化され、神経が研ぎ澄まされ、結果的に以前よりも強くなったのだろうと思う。そして、使い方によってはこのように、短距離ならロケット砲ぐらいの威力が出る」


「いや、だからといってこうはならんでしょ……。うっわー……えぐいわねこれは……ひとりぐらい死んでるんじゃない?」


 ジェーンは倒れた敵船員たちの様子をつんつん突いて生存確認している。


「一応手加減はしたつもりだ。それでもダメならただ運が悪いだけ」


 ジェーンとの会話を打ち切ると、僕はもうもうと巻き上がった煙の中に突っ込んだ。

 本来なら煙が晴れるのを待つべきだろうが、今はたとえ一秒でも時間が惜しい。


「では行くぞ……中にいる奴、扉から離れろ!」


 一声かけてから助走をつけると、僕は医務室の扉に蹴りを入れた。

おーっほほほほほ! みなさまご機嫌よう!

西園寺・ドンクリスティ・龍子よ!


いよいよ医務室突入よ。

さて、レイミアは無事なのかしらね。


そんな彼女たちの今後が気になる方は、下の☆☆☆☆☆で応援よろしくお願いしますね!

ブクマや感想もお待ちしておりますわ!

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