「運命」
「ああー……しかしどうしよっかなー」
決闘が終わり、さて練習場の外へ出て結果を報告しようという段階になって、ジェーンが困ったように頭をかいた。
「あんたの勝ちで、わたしの負け。それはいいんだけど……問題はそこから先よね。ごめんなさい、もうしないから許してくださいって言うの、死ぬほど恥ずかしいんだけど……」
「自業自得以外の何ものでもないが」
「あんたね、もうちょっと親身になってくれても良くない!?」
僕の率直な感想を、心外とばかりにジェーンが声を荒げた。
「そりゃあたしかにこういう状況を招いたのはわたしよ!? すべての罪が自分にあることぐらいわかってるわよ!? それでもさすがにプライドぐらいはあるわけよ! この後みんなに後ろ指刺されながら学園生活おくるのは正直キツいなーと思ったりはするわけよ! その辺のあれやこれやをもう少し柔らかくね! したいわけ! 言うなればちょっとビビッてるわけ! 悪い!?」
それも含めてケジメだとは思うが、この調子で騒がれても面倒だな。
うーん……ああ、そうか。
「だったら、僕の派閥に入ればいいんじゃないか? 後ろ指は刺されるだろうし、劇的に立場が向上したりもしないだろうが、それでも少しはマシだろう」
「え? そうゆーのでなんとかなるの? あーでもそうか、ディアナはそっちで上手くやってるんだもんね。あいつもけっこうな自爆をしてたけど……そうか、それはありね! あり寄りの大ありね!」
パチンと指を弾くと、ジェーンはこぼれそうな笑顔を浮かべた。
「となれば話は早いわねっ。これからよろしくお願いしまーすっ。あ、でもいきなり慣れ慣れしいのも変だから、まだアリア様とか言ってたほうがいいわよねっ? 砕けた間柄になるのはそれからってことでっ」
「なんだ、調子のいい奴だな」
揉み手をしながらすり寄って来るジェーンの変わり身の早さにあ然としていると……。
「ま、『管理官』としてはね、小さなことにこだわるべきではないというか、現場の状況によって適切な手を打つべきなのよ。それがあるべき姿というか……ねえ、わかるでしょ? あんただってこれから先、わたしと一緒にいた方が都合がいいはずよ? 特にこのゲームに関してはね、あんたよりわたしの方が、断然知識量が上なんだから。しかもあんたってよりにもよっての悪役令嬢でしょ? すべての破滅フラグを把握してるわけでもないんでしょ?」
「それはまあ……何かあったら武力で解決すればいいと思ってたし……」
「蛮族かっ」
ジェーンはビシリ、鋭いツッコミを入れて来た。
「ってゆーかね、あんたたぶんわかってないでしょ。破滅フラグっていうのは力で解決出来るものだけじゃないの。病気に天災、本人の預かり知らぬところで自分以外に起こるアクシデントだってたくさんあるんだから……って………………………………………………………………………………あ?」
しばらく顔をうつむけ無言になっていたジェーンが、急に顔を上げた。
「あ、あ、あ?」
「……それ、さっき見たな」
ジェーンの正体に気づいた時の僕の真似でもしているのだろうか?
なんでそんな子供みたいなことを……。
「あ、ああ、あああ、あああああああああああああああーっ!?」
「なんだジェーン。いったい何がしたいんだ。僕をからかおうとしているならもっと他の時にしてもらってだな……」
「あんた、あんた、あんたっ。ちょっと落ち着いて聞きなさいよっ?」
「君より遥かに落ち着いているが?」
「レイミアは……あのコは今どこにいるの?」
「レイミア? なんで急に……」
予想外の質問に戸惑う僕。
「いいから、すぐに答えなさい。可及的速やかに」
「なんだなんだ、藪から棒に……」
「いいから!」
腕を掴まれ揺さぶられた僕は、しぶしぶ答えた。
「今どこにいるのかはわからない。観客席で小旗を振って応援していたのを見たのが最後で、それ以降はわからない」
「……っ」
ジェーンの顔がさっと青ざめた。
元から白い顔が、本気で真っ白になった。
「……いい? アリア、落ち着いて聞きなさいよ?」
「なんだよ、わかったからそんなに強く肩を掴むな。さすがに痛い……」
「レイミアはね。レイミア・デア・ストレイドは……」
ジェーンは僕に顔を近づけると、神妙な口調でこう言った。
「7歳の誕生日を迎える前に、死ぬ運命なの」
おーっほほほほほ! みなさまご機嫌よう!
西園寺・ドンクリスティ・龍子よ!
さて、いよいよクライマックスよ。
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